個人タクシーのなり方と条件|結論
この記事の結論
個人タクシーになるには、地方運輸局長の許可(新規許可または譲渡譲受の認可)が必要です。関東運輸局の審査基準(令和8年2月17日一部改正)では、東京・横浜などを含む営業区域の新規許可は申請日現在65歳未満、有効な第二種免許、年齢区分ごとの運転経歴(40歳以上なら過去25年間に運転を職業とした期間10年以上、かつ申請区域で直近3年以内に2年以上タクシー・ハイヤーに乗務)が基本要件です。
このほか関東運輸局の法令試験(40問・36点以上、特定指定地域は45問・41点以上)への合格、設備資金80万円以上・運転資金80万円以上などの所要資金を100%以上自己資金で常時確保、営業区域内の住居を営業所とすること、営業所から2キロ以内の車庫などが求められます。
令和8年4月以降の許可申請は事前試験の合格が前提になり、準特定地域では年度ごとの参入枠(令和8年度は特別区・武三交通圏で576)の範囲で年3回受け付けます。
個人タクシーは、法人タクシーで経験を積んだ運転者が独立して1人1車で営業する事業です。要件は各地方運輸局が公示する審査基準で決まり、地域によって細部が異なります。この記事では、関東運輸局管内(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・群馬県・栃木県・茨城県・山梨県)の公示を原文で確認し、なるための条件と流れを整理します。
根拠は、関東運輸局が公示している「個人タクシー事業の許可及び譲渡譲受認可申請事案の審査基準」「個人タクシー事業の許可等に係る法令の試験の実施について」「準特定地域における個人タクシー事業の参入枠等について」と、全国ハイヤー・タクシー連合会の公表資料です。他の地方運輸局の管内で申請する場合は、その運輸局の公示を必ず確認してください。
個人タクシーとは|法人タクシーとの違い
審査基準は、個人タクシーを「道路運送法第4条に基づく許可を受けた個人のみが自動車を運転することにより事業を行うべき旨の条件の付された一般乗用旅客自動車運送事業」と定義しています。全国ハイヤー・タクシー連合会の「TAXI TODAY in Japan 2026」によると、令和7年3月末現在の個人タクシーの車両数は全国で25,009台、うち東京は9,116台です。
| 項目 | 法人タクシーの乗務員 | 個人タクシー |
|---|---|---|
| 立場 | タクシー会社に雇用される | 自ら許可を受けた事業者 |
| 必要な資格 | 普通二種免許(入社後取得も可) | 二種免許に加え、運転経歴・法令試験などの許可要件 |
| 車両 | 会社の車両 | 自分で使用権原を持つ1両。他人に営業のため運転させてはならない |
| 許可・条件 | なし(会社が許可を受ける) | 許可にはおおむね3年の期限が付き更新が必要。月2日以上の定期休日、運転日報の携行と1年保存、車体両側に「個人」「タクシー」の表示など |
| 年齢 | 会社の定年・再雇用制度による | 65歳到達で高齢者向け適性診断。更新時に75歳以降の期限は付さない(一部地域は80歳) |
| 収入の統計 | 賃金構造基本統計調査の対象 | 同調査の対象外で公的な平均所得の統計はない |
法人タクシー運転者の年収は全タク連の集計で全国平均4,508,200円(令和7年)ですが、個人タクシーの所得は同じ統計に含まれないため、本記事では収入の比較はしていません。法人での年収は都道府県別の年収記事をご覧ください。
新規許可の要件|年齢・運転経歴・法令遵守
人口が概ね30万人以上の都市を含む営業区域(特別区・武三交通圏、京浜交通圏、千葉交通圏など)での新規許可について、審査基準Ⅰの主な要件は次のとおりです。
- 年齢:申請日現在で65歳未満。
- 免許:有効な第二種運転免許(普通・中型・大型に限る)。
- 法令遵守:申請日以前5年間に道路運送法違反による輸送施設の使用停止以上の処分、運転免許の取消し、タクシー業務適正化特別措置法による登録取消しなどを受けていないこと。申請日以前3年間に道路交通法違反がなく免許停止を受けていないこと(申請日の1年前以前の1点の違反か点数の付かない違反は、いずれか1回に限り違反がないものとみなす)。
- 健康と適性:公的医療機関等で胸部疾患・心臓疾患・血圧等の診断を受け、自動車事故対策機構等で運転適性診断を受けて支障がないこと。
- その他:申請日前3年間に個人タクシーを譲渡・廃止し、または期限の更新がなされなかった者でないこと。
運転経歴の要件は年齢で3つに分かれます(審査基準 別表2)。
| 申請時の年齢 | 運転経歴の要件 |
|---|---|
| 35歳未満 | 申請する営業区域で、申請日以前継続して10年以上同一のタクシー・ハイヤー事業者に運転者として雇用されていること。かつ申請日以前10年間無事故無違反であること |
| 35歳以上40歳未満 | 申請する営業区域で自動車の運転を専ら職業とした期間が10年以上(タクシー・バスなど以外の運転は50%に換算)。そのうちタクシー・ハイヤーが5年以上。申請区域でタクシー・ハイヤーの運転を申請日以前継続して3年以上。申請日以前10年間無事故無違反なら40歳以上の要件によることもできる |
| 40歳以上65歳未満 | 申請日以前25年間のうち、自動車の運転を専ら職業とした期間が10年以上(タクシー・バスなど以外の運転は50%に換算)。かつ申請する営業区域で申請日以前3年以内に2年以上タクシー・ハイヤーの運転を職業としていたこと |
細部取扱いでは、35歳以上40歳未満の「継続して3年以上」について、申請日以前3年間の転職に伴う離職期間の合計が30日以内なら雇用が継続しているとみなすとしています。また別表2の適用欄では、タクシー・ハイヤー運転者として雇用された後に引き続き運行管理者や整備管理者に選任された期間も、直近の乗務期間の要件(35歳以上40歳未満の継続3年、40歳以上の直近3年以内に2年)ではタクシー・ハイヤーの運転を職業としていた期間に含めるとしています。
計算例|何年法人で働けば申請できるか
40歳以上の要件で、よくある経歴をあてはめてみます(いずれも申請区域でのタクシー乗務が直近3年以内に2年以上ある前提)。
- 運転の仕事が初めてで、45歳で法人タクシーに入社:運転を職業とした期間10年以上が必要なので、タクシー乗務10年で55歳から申請可能になります。
- トラック運転手を10年経験してから法人タクシーへ:トラックの10年は50%換算で5年。タクシー乗務5年と合わせて10年になるため、タクシー入社から5年で要件を満たします(25年以内の期間に限る)。
- 路線バス運転士からタクシーへ:バスは一般旅客自動車運送事業用自動車のため換算は100%です。バスとタクシーの合計で10年以上、うち直近3年以内に申請区域で2年以上のタクシー・ハイヤー乗務があれば要件を満たします。
いずれの場合も、無事故無違反・法令遵守の要件と、65歳未満という年齢要件を同時に満たす必要があります。法人での働き方は年収を上げる方法、他業種からの転職は他業種からの転職ガイドで解説しています。
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求人一覧を見る法令試験|40問・36点以上、地理は出題範囲にない
関東運輸局の「個人タクシー事業の許可等に係る法令の試験の実施について」(令和8年2月17日一部改正、令和8年4月1日以降の申請から適用)では、試験は許可申請等の前に受ける「事前試験」と、譲渡譲受・相続の認可申請後に受ける「申請後試験」の2種類です。改正前は新規の許可申請者も申請後試験の対象でしたが、改正後の申請後試験の対象は譲受人と相続人に限られました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受験資格(事前試験) | 有効な二種免許、65歳未満(30万人未満の区域は80歳未満)、審査基準の運転経歴に適合(「申請日」を「試験の申込日」と読み替え) |
| 申込と実施時期 | 4月1日〜5月31日申込は7月、8月1日〜9月30日申込は11月、12月1日〜1月31日申込は3月に実施(原則) |
| 設問方式 | ○×方式及び語群選択方式 |
| 出題数・合格基準 | 40問・36点以上・50分。特定指定地域(タクシー業務適正化特別措置法)は5問を加えて45問・41点以上・60分 |
| 出題範囲 | 道路運送法・同施行規則・旅客自動車運送事業運輸規則・標準運送約款・運賃料金制度など、タクシー業務適正化特別措置法関係、道路運送車両法関係(点検整備・保安基準・事故報告など) |
| 合格証の有効期限 | 発行日から2年を経過する日、または65歳(30万人未満の区域は80歳)に達する日の前日のいずれか早い日 |
| 結果の公表 | 試験実施月の翌月に受験者数・合格者数・最高点・最低点・平均点を公表。試験問題は持ち帰り可 |
関東運輸局の現行の公示が定める出題範囲(別表2)は法令に関するものだけで、地理の項目は含まれていません。実施の例として、令和7年9月25日の公示では、11月1日(土)に東京都豊島区の大正大学で、特別区・武三交通圏と京浜交通圏は13時から15時まで、その他の交通圏は13時から14時50分まで試験を行うとしていました。日時と場所は原則として試験の1か月前までに関東運輸局報で公示され、15日前までに受験者に通知されます。
資金・営業所・車庫・車両|開業時に必要なもの
審査基準は、事業を始めるための資金と施設について具体的な基準を置いています。
| 項目 | 審査基準の内容 |
|---|---|
| 所要資金 | 設備資金80万円以上(所要の設備が80万円未満で調達できることが明らかならその額)、運転資金80万円以上、車庫の確保に要する資金、自賠責保険料と任意保険料(年額)の合計 |
| 自己資金 | 所要資金の100%以上の自己名義の預貯金等を、申請日以降常時確保 |
| 営業所 | 申請する営業区域内にあり、住居と営業所が同一。区域内に現に居住している実態があること |
| 車庫 | 営業区域内で営業所から直線2キロメートル以内、車両全体を収容でき、1年以上の使用権原があること。前面道路が車両制限令に抵触しないこと |
| 事業用自動車 | 使用権原があり、電子地図の表示、位置情報の表示、目的地までの経路案内の機能を持つ機器を備えること |
許可の後は、許可の日から4か月以内に事業を開始する条件が付きます。許可期限はおおむね3年で、更新時の取扱いは別の公示(期限の更新申請の審査及び取扱基準)で定められています。
申請の受付時期と参入枠|準特定地域は年3回
令和8年2月17日の改正で、新規許可の申請受付は「毎年9月」から「通年」に改められました(令和8年4月1日以降に受け付ける申請から適用)。ただし、タクシー適正化・活性化特措法の特定地域に指定された地域では新規の受付は行わず、準特定地域では毎年度5月・9月・1月の受付期間に、運輸局が定める参入枠の範囲で受け付けます。令和8年度の参入枠は次のとおりです。
| 都県 | 営業区域 | 令和8年度の参入枠 |
|---|---|---|
| 東京都 | 特別区・武三交通圏 | 576 |
| 東京都 | 北多摩交通圏/南多摩交通圏 | 8/4 |
| 神奈川県 | 京浜交通圏/県央交通圏 | 21/0 |
| 千葉県 | 千葉交通圏/京葉交通圏/東葛交通圏 | 16/4/6 |
| 埼玉県 | 県南中央交通圏/県南西部交通圏/県南東部交通圏 | 1/0/0 |
| 群馬県・埼玉県 | 中・西毛交通圏 | 0 |
| 栃木県 | 宇都宮交通圏 | 4 |
令和8年度の受付期間は、令和8年5月1日〜6月1日、9月1日〜9月30日、令和9年1月1日〜2月1日の3回で、申請時点で参入枠と同数の許可をすでに出した区域は受け付けません。処分はそれぞれ原則8月末、12月末、令和9年4月末までに行うとされています。参入枠を超える申請があった場合のくじ引きの取扱いも別に公示されています。
ほかの入口|30万人未満の地域と譲渡譲受
人口概ね30万人以上の都市を含まない地域(審査基準Ⅱ):関東運輸局は、千葉県長生郡睦沢町・長柄町、埼玉県秩父郡横瀬町、群馬県利根郡川場村・昭和村などを個人タクシーの営業が可能な地域として公示しています(令和6年1月24日)。ここでの許可は、申請日現在80歳未満、申請日以前に1年以上の個人タクシーの経験があること、年齢に応じて地元の法人タクシー事業者による運行管理や個人タクシー団体との連絡体制を整えることなどが要件です。申請日以前1年以内に運転を職業とした期間があれば法令試験は免除されます。国土交通省の交通政策審議会の中間とりまとめ(令和6年5月)は、令和5年5月の改善策で「地方部にUIターンした個人タクシー事業の経験者の活用方策」が打ち出されたと記しています。
譲渡譲受:既存の個人タクシー事業者から事業を譲り受ける方法です。譲渡人は65歳以上80歳未満、または65歳未満で傷病等の正当な理由がある人、65歳未満で20年以上経営している人に限られ、譲受人は新規許可と同じ基準(Ⅰ)を満たす必要があります。譲渡人が75歳以上80歳未満の場合、譲受人は60歳以下でなければなりません。譲受人は認可申請後に法令試験(申請後試験)を受けます。
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出典・一次情報
本記事の記述は、次の公表資料に基づいています(いずれも2026年10月13日閲覧)。
- 関東運輸局「タクシー関係申請手続き」 wwwtb.mlit.go.jp
- 関東運輸局 公示「個人タクシー事業の許可及び譲渡譲受認可申請事案の審査基準について」(R8.2.17改正) wwwtb.mlit.go.jp(PDF)/「許可、譲渡譲受・相続認可申請に係る細部取扱い」(R8.2.17改正) 同(PDF)
- 関東運輸局 公示「個人タクシー事業の許可等に係る法令の試験の実施について」(R8.2.17改正) wwwtb.mlit.go.jp(PDF)/「個人タクシーの法令試験の実施について」(令和7年9月25日) 同(PDF)
- 関東運輸局 公示「準特定地域における個人タクシー事業の参入枠等について」(R8.8.6改正) wwwtb.mlit.go.jp(PDF)/「人口が概ね30万人以上の都市が含まれない営業区域において個人タクシーの営業が可能な地域について」 同(PDF)
- 全国ハイヤー・タクシー連合会「TAXI TODAY in Japan 2026」(厚生労働省ポータルサイト掲載) driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp(PDF)/「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」 taxi-japan.or.jp(PDF)
- 国土交通省 交通政策審議会陸上交通分科会自動車部会「中間とりまとめ」(令和6年5月15日) mlit.go.jp(PDF)
他の地域で申請する場合
個人タクシーの審査基準・法令試験は地方運輸局ごとに公示されており、近畿・九州など他の運輸局では年齢区分や試験の内容が異なる場合があります。本記事は関東運輸局の公示に基づくものです。申請前に、営業区域を管轄する運輸局・運輸支局の最新の公示を確認してください。



