未経験からタクシー運転手になるには|結論

この記事の結論

未経験者は、二種免許の取得費用を会社が負担する「養成制度」のある会社に、普通第一種免許で入社するのが一般的な始め方です。日本交通は「入社される方の約8割は入社後に二種免許を取得」、大和自動車交通は「9割は一種免許で入社」と公式ページに記載しています。
入社後は教習所で二種免許(2025年9月から最低29時限・最短3日、警察庁)を取り、国土交通省の告示で定められた初任運転者への指導(合計6時間以上)と初任診断を受けてから乗務します。研修中の給与は両社とも日給1万円です。
経験年数別の年収(年間推計額)は、経験0年で371万円、1〜4年で418万円と、早い段階で全国平均に近づきます(全国ハイヤー・タクシー連合会集計)。

タクシー運転手は、業界経験がなくても始められる仕事として知られています。日本交通の採用サイトは「弊社では異業界からの転職者が94%に上ります」と書いており、業界の外から入る人が多数派です。ただし、売上に応じて賃金が変わる歩合給が中心で、隔日勤務では1回の勤務が長いなど、他の仕事と違う点もあります。

この記事では、未経験者がデビューするまでの流れと、最初の1年の収入の考え方を、警察庁・国土交通省・東京タクシーセンター・全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)の資料と、各社の公式採用ページの記載だけで説明します。

未経験者向けの支援|公式採用ページで比べる

大手2社の公式採用ページから、未経験者に関係する項目を同じ並びで抜き出しました。条件は営業所や時期で変わることがあるため、応募時には最新の募集要項を確認してください。

項目日本交通大和自動車交通
応募資格19歳以上、普通1種免許取得1年以上(AT限定可)普通自動車第一種免許を取得後3年を経過した21歳以上(AT限定可)
二種免許の取得費用会社が全額負担会社が全額負担
一種免許で入社する人の割合約8割が入社後に二種免許を取得9割が一種免許で入社
研修期間中の給与日給1万円+交通費日給1万円+交通費
給与保証募集要項に「入社3ヶ月40万、その後9ヶ月35万保証」、よくある質問に「入社1年間は、月収30万円が保障」と記載未経験者は乗務開始後12カ月間。特別区・武三交通圏で年収400万円相当、北多摩交通圏340万円相当、昼日勤300万円相当(定員に達し次第終了)
接客の教材独自の接客マニュアル(スタンダードマニュアル)オリジナルマニュアル「おもてなしハンドブック」

日本交通の採用サイトでは、給与保証の記載がページによって異なっていました(閲覧時点)。同じ会社でもページの更新時期がずれることがあるため、保証の金額・期間・対象は面接で確認し、労働条件通知書で書面として受け取ることを勧めます。会社別の求人は日本交通の求人、大和自動車交通の求人で見られます。

未経験からデビューまでのステップ

二種免許を持っていない人が入社してから乗務を始めるまでの手順です。法令で決まっている部分(免許・初任運転者への指導・適性診断・地域によっては登録)と、会社ごとの研修を分けて書きます。

ステップ内容根拠・公表例
1. 二種免許の教習普通二種の最低教習時限は学科17時限・技能12時限の合計29時限、最短教習日数3日(2025年9月1日から。従来は40時限・6日)警察庁
2. 二種免許の試験指定教習所の卒業証明書を持って運転免許試験場で適性試験・学科試験を受ける。東京(警視庁)の手数料は4,150円(受験料1,800円、免許証交付料2,350円)警視庁
3. 初任診断新たに雇い入れた運転者は、選任前に国土交通大臣認定の初任診断を受診国土交通省告示第1676号
4. 初任運転者への特別な指導安全な運転の基本的事項、車両の構造と日常点検、運行・旅客の安全確保、危険の予測と回避、安全装置付き車両の運転方法を合計6時間以上。実車での安全運転の実技も可能な限り実施国土交通省告示第1676号
5. 運転者登録(東京などの指定地域)東京23区・武蔵野市・三鷹市では、法令・安全・接遇の試験(45問中36問以上で合格)と新規講習を経て東京タクシーセンターに登録東京タクシーセンター
6. 営業所配属・同乗指導先輩乗務員が同乗して、運転・接客・営業エリアを指導日本交通は班長の同乗指導2日間

日本交通は未経験者の研修スケジュールとして、契約の教習所での学科・技能教習14日間、二種免許取得1日、新人乗務員講習・営業所内教習・事故対策機構10日間、班長による同乗指導2日間を公表しています。大和自動車交通は研修期間の就業時間を「月〜金 9:00〜17:00(休憩1時間)」としています。なお、初任研修には以前「10日間」という期間の要件がありましたが、国土交通省は必要な研修科目を実施すれば期間を定める必要はないとして、2024年3月の省令改正で撤廃しました。

21歳未満の人や、普通免許の保有期間が3年未満の人は、受験資格特例教習を修了すると19歳以上・保有1年以上で二種免許を受験できます(警察庁)。年齢要件の特例は7時限以上、経験年数要件の特例は29時限以上の教習で、特例で取得した場合は21歳になるまで「若年運転者期間」となり、違反の点数によっては若年運転者講習の受講が必要です。費用と教習所の料金例は二種免許の費用と取り方にまとめています。

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研修で学ぶこと|接客・地理・車両点検

未経験者が不安に感じやすいのは「接客」「地理」「運転」の3つです。各社のよくある質問と、東京タクシーセンターの研修案内から、研修でどう扱われるかを整理しました。

不安な点公式ページでの説明
接客経験がない日本交通は独自の接客マニュアルを使用。大和自動車交通は「おもてなしハンドブック」で研修期間中に繰り返し練習すると説明
地理に詳しくない両社とも全車カーナビ搭載。日本交通は研修期間中に都内のよく使う道を学び、配属後も勉強会がある。大和自動車交通は研修の実務研修で基本的な都心の地理を学ぶ
運転に慣れていない日本交通は乗務前に運転に慣れるカリキュラムを用意し、ペーパードライバーで入社した先輩も多いと説明。大和自動車交通は研修期間中にベテラン指導員がサポート
車両点検乗務員は出庫前の車両点検が義務。大和自動車交通は研修カリキュラムに車両点検を含むと説明。日本交通はオイルの量の確認など簡単なもので、整備は自社工場が担うと説明
デビュー後のフォロー大和自動車交通は「フォローアップ研修」「接客接遇研修」「地理勉強会」を挙げる。日本交通は営業所ごとに時間帯別の需要の多いエリアを集計し、勉強会で共有

東京タクシーセンターも、法人事業者向けに新規講習のほか「新人地理基礎研修」「新人特別接遇研修」「外国人旅客接遇研修」などを実施しています。2024年2月に東京の地理試験は廃止されましたが、売上につながる道やエリアの知識は、デビュー後も研修や勉強会で身につけていく前提になっています。

1年目の収入の考え方|経験年数別の年収

全タク連が令和7年賃金構造基本統計調査から作成した「グラフ3」は、経験年数ごとの年収(年間推計額)と、全職種の中での順位を示しています。

経験年数年間推計額全職種中の順位(145職種)
0年371万円44位
1〜4年418万円54位
5〜9年407万円83位
10〜14年392万円108位
15年以上347万円139位

経験0年の年収は371万円で、145職種中44位と上位3分の1に入ります。1〜4年で418万円と最も高くなり、その後は経験が長いほど低い数字になっています。全タク連は、歩合給制度には経験年数に応じて賃金が段階的に上がる仕組みが一般的にないため、年功賃金の職種と比べると勤続が長くなるほど順位が下がる、と説明しています。入って早い時期から平均に近い収入を得られる一方、続けるだけで自動的に上がるわけではない、という構造です。

年齢別の年収も確認しておきます。全タク連の第2表では、20〜24歳4,833,600円、30〜34歳5,179,200円、40〜44歳4,985,500円、50〜54歳4,943,100円、60〜64歳4,401,300円で、全年齢の平均は4,508,200円です。これらは経験者を含む平均で、未経験者の1年目がこの水準になることを示すものではありません。1年目は研修期間(日給1万円)があり、乗務開始後は会社の給与保証の有無と条件で収入の下支えが変わります。

大和自動車交通の給与保証は、営業区域と勤務形態で金額が分かれています(特別区・武三交通圏で年収400万円相当、北多摩交通圏340万円相当、昼日勤300万円相当)。保証が終わった後は歩合給になるため、保証期間中に売上の作り方を身につけられるかが2年目以降の収入を左右します。都道府県別の年収はタクシー運転手の年収(都道府県別)で確認できます。

未経験者が事前に知っておきたいこと

公式ページと公的資料で確認できる範囲で、入社前に理解しておきたい点を挙げます。

  • 勤務の長さ:大和自動車交通は隔日勤務を「1乗務あたり17時間15分(休憩3時間を含む)と長時間勤務」と説明し、その代わり乗務後の明け休と休日を合わせて月18日以上の休みがあるとしています。改善基準告示では、隔日勤務の拘束時間は1か月262時間、2暦日22時間(2回平均21時間)が上限、勤務後の休息は継続24時間が基本です(詳しくはタクシーの2024年問題)。
  • 最初の壁:大和自動車交通は、乗務を始めたばかりの頃は「接客と地理に苦労したという声を聞きます」と書いています。
  • 勤務形態の選び方:隔日勤務が不安な人向けに、大和自動車交通は月24回乗務の昼間勤務・夜間勤務から始める選択肢を示しています。日勤の求人は日勤のみの求人で探せます。
  • 費用負担の条件:会社負担の二種免許取得費用に、退職時期などの条件が付いていないかを確認します。
  • 安全への備え:日本交通・大和自動車交通とも、全車のドライブレコーダーと緊急通報システムを公式ページで説明しています。

統計で見た仕事の負担はタクシー運転手はきつい?統計で見る実態、転職全体の流れはタクシー運転手への転職ガイド、よくある失敗はタクシードライバー転職の失敗パターンで解説しています。求人は未経験歓迎の求人、二種免許養成制度ありの求人、給与保証ありの求人から探せます。

出典・一次情報

本記事の数字と制度の記述は、次の公表資料に基づいています(いずれも2026年10月13日閲覧)。

  • 一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」【最新版】 taxi-japan.or.jp(PDF):第2表、グラフ3
  • 警察庁「普通第二種免許に係る教習カリキュラムの見直しについて」 npa.go.jp/「第二種免許等の受験資格の見直しについて」 npa.go.jp
  • 国土交通省「旅客自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」(平成13年国土交通省告示第1676号) mlit.go.jp(PDF)/交通政策審議会陸上交通分科会自動車部会「中間とりまとめ」(令和6年5月15日) mlit.go.jp(PDF)
  • 警視庁「大型二種・中型二種・普通二種免許試験(指定教習所を卒業された方)」 keishicho.metro.tokyo.lg.jp
  • 公益財団法人東京タクシーセンター「研修・検定について」 tokyo-tc.or.jp/「輸送の安全及び利用者の利便の確保に関する試験」 tokyo-tc.or.jp
  • 厚生労働省「タクシー・ハイヤー運転者の改善基準告示」リーフレット(2024年12月) mhlw.go.jp(PDF)
  • タクシー会社の公式採用ページ:日本交通 募集要項・研修制度・よくあるご質問/大和自動車交通 未経験者中途採用 募集要項・採用よくあるご質問