タクシー運転手の手取り|結論

この記事の結論

タクシー運転手の手取りは「額面の給与-社会保険料(健康保険・介護保険・子ども子育て支援金・厚生年金・雇用保険)-所得税-住民税」で決まり、計算の仕組みは他の会社員と同じです。
2026年度の主な料率(本人負担)は、協会けんぽ東京支部の健康保険が4.925%、40〜64歳の介護保険を含めると5.735%、子ども・子育て支援金0.115%、厚生年金9.15%、雇用保険0.5%です。
令和7年賃金構造基本統計調査のタクシー運転者の平均月給35万9,200円に、協会けんぽ東京支部・40〜64歳・扶養なしの条件で当てはめると、社会保険料と所得税の合計は月6万3,856円、住民税を除いた差引額は29万5,344円(額面の約82%)になります。
歩合給で月ごとに額面が変わる人は、社会保険料が毎月の給与ではなく原則4〜6月の報酬の平均で決まる「標準報酬月額」で計算される点に注意が必要です。

タクシーの求人では「月収40万円以上可能」「平均月収35万円」のように額面の金額が書かれていますが、実際に口座に振り込まれる手取りはそこから社会保険料や税が引かれた額です。歩合給の仕事は月によって給与が変わるため、手取りの読み方にも少しコツがあります。

この記事では、協会けんぽの保険料額表、厚生労働省の雇用保険料率、国税庁の源泉徴収税額表(令和8年分)、日本年金機構と総務省の制度説明、タクシー会社の公式募集要項という一次情報だけを使い、手取りの計算の仕組みを整理します。特定の人の手取りを示すものではなく、公表された料率を当てはめた計算例として読んでください。

まず額面を知る|公式に公表されている給与の例

手取りの出発点は額面の給与です。タクシー会社が公式の採用ページで公表している給与の例と、統計の平均を並べます(すべて税・社会保険料を引く前の額、2026年10月閲覧)。

出典公表されている額面
賃金構造基本統計調査(令和7年・全国のタクシー運転者)きまって支給する現金給与額 月359,200円、年間賞与197,800円
同(東京都のタクシー運転者)きまって支給する現金給与額 月467,200円、年間賞与97,100円
日本交通(東京)未経験者は入社3か月40万円、その後9か月35万円を保証
国際自動車(東京)研修終了後6か月間、月給30万円(日勤は23万円)を補償
日本交通(大阪)全ドライバーの平均月収370,155円、直近1年目の新人の平均月収367,200円
名鉄タクシーグループ(名古屋)平均33.1万円(令和8年3月の皆勤者実績)
福岡西鉄タクシー隔日勤務の正社員の平均月収は28万円程度(よくある質問)

統計の「きまって支給する現金給与額」には通勤手当や時間外・深夜の手当が含まれます。会社の公表額も、保証額なのか平均なのか、どの勤務形態の誰の平均なのかがそれぞれ違うため、手取りを考えるときは自分が想定する働き方の額面で計算する必要があります。給与保証の読み方はタクシーの給与保証の仕組み、歩合給の計算はタクシーの歩合給の計算と足切りで解説しています。

給与から引かれるもの|2026年度の料率

会社員として雇われるタクシー運転手の給与からは、次のものが差し引かれます。料率は2026年度(令和8年度)の公表値で、本人負担は事業主と折半した後の割合です。

項目料率(全体)本人負担計算のもとになる額
健康保険(協会けんぽ東京支部)9.85%(2026年3月分から)4.925%標準報酬月額
介護保険(40〜64歳のみ、全国一律)1.62%(健康保険と合わせて11.47%)0.81%標準報酬月額
子ども・子育て支援金(全国一律)0.23%(2026年4月分から)0.115%標準報酬月額
厚生年金保険18.3%9.15%標準報酬月額
雇用保険(一般の事業)1,000分の13.51,000分の5その月に支払われた賃金
所得税(源泉徴収)国税庁の源泉徴収税額表(令和8年分)による社会保険料等を引いた後の給与
住民税所得割は原則10%(道府県民税4%・市町村民税6%)前年1年間の所得

協会けんぽの健康保険料率は都道府県の支部ごとに違います。会社が健康保険組合に加入している場合は、組合ごとの料率になります。雇用保険料率は2026年4月から、労働者負担が1,000分の5.5から1,000分の5に下がりました。所得税の源泉徴収税額表は2026年1月から新しい表に変わっています。

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控除額の計算例|統計の平均月給などに料率を当てはめると

公表された料率と税額表を、3つの額面に当てはめた計算例です。前提は、協会けんぽ東京支部、40〜64歳(介護保険あり)、扶養親族なし、通勤手当なし、標準報酬月額は額面と同じ等級(4〜6月も同じ額面だったと仮定)です。協会けんぽの規定に従い、50銭以下の端数は切り捨てています。

項目月30万円(給与保証でよく見られる額)月35万9,200円(全国の平均月給)月46万7,200円(東京都の平均月給)
標準報酬月額300,000円360,000円470,000円
健康保険+介護保険17,205円20,646円26,954円
子ども・子育て支援金345円414円540円
厚生年金保険27,450円32,940円43,005円
雇用保険1,500円1,796円2,336円
社会保険料の合計46,500円55,796円72,835円
所得税(月額表・甲欄・扶養0人)6,220円8,060円15,160円
控除の合計(住民税を除く)52,720円63,856円87,995円
差引額(住民税を除く)247,280円295,344円379,205円
額面に対する差引額の割合約82.4%約82.2%約81.2%

所得税は、社会保険料を引いた後の金額(例:35万9,200円-5万5,796円=30万3,404円)を国税庁の月額表の「302,000円以上305,000円未満・扶養0人」の欄に当てはめたものです。子ども・子育て支援金を社会保険料に含めるかどうかで差し引き後の額は数百円変わりますが、この3つの例ではいずれも税額表の同じ欄に入ります。

実際の手取りは、ここからさらに住民税が引かれます。住民税は前年1年間の所得をもとに計算され、会社員は原則として給与から天引き(特別徴収)されます。転職した年や前年の収入が少なかった年は住民税が少なく、翌年に増える、という動きになる点も覚えておきましょう。39歳以下で介護保険がかからない場合は、上の例より健康保険の本人負担がそれぞれ月2,430円〜3,807円少なくなります。

歩合給の人が知っておきたい「標準報酬月額」の決まり方

健康保険・厚生年金の保険料は、毎月の実際の給与ではなく「標準報酬月額」に料率をかけて計算します。日本年金機構の説明では、標準報酬月額は次のように決まります。

  • 定時決定:毎年7月1日時点で、4月・5月・6月の3か月間に受けた報酬の平均をもとに決め、9月から翌年8月までの各月に使います。
  • 随時改定:昇給・降給などで固定的賃金に変動があり、その後3か月の平均が従来の標準報酬月額と比べて2等級以上変わった場合に改定します。
  • 資格取得時の決定:入社時の報酬から決め、その年の8月(6月1日〜12月31日に入社した人は翌年8月)まで使います。

歩合給は売上によって毎月変わりますが、随時改定のきっかけは「固定的賃金」の変動です。そのため、4〜6月に多く稼いだ年は、その後1年間の保険料が高めに固定され、逆に4〜6月の売上が少なかった年は保険料が低めになります。保険料が高いと手取りは減る一方、厚生年金の将来の年金額や、健康保険の傷病手当金の計算のもとになる額は大きくなります。

日本年金機構は、業務の事情で4〜6月の報酬が年間を通した報酬と大きく違う場合に、事業主の申立てと被保険者の同意により「年間報酬の平均で算定する」手続きも用意しています。歩合給で季節による売上の差が大きい職場では、会社にこの扱いがあるかを確認しておくとよいでしょう。

賞与からも保険料が引かれる

賞与にも健康保険・厚生年金の保険料がかかります。協会けんぽの保険料額表では、賞与の保険料は賞与額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に保険料率をかけて計算します。国土交通省の懇談会資料には、賞与分も含めて毎月の歩合給で支払うB型賃金について「月例賃金が高くなるため標準報酬額(社会保険料負担)が割高となる」という記述もあり、賃金の組み立て方は保険料にも影響します。賞与の実態はタクシーの賞与と退職金で整理しています。

手取りを確認するときのポイント

  1. 額面の中身:求人の金額が保証額か平均か、通勤手当や時間外・深夜手当を含むか。
  2. 加入する健康保険:協会けんぽか健康保険組合か。協会けんぽなら都道府県の支部の料率。
  3. 年齢:40〜64歳は介護保険料がかかる。
  4. 入社時期:入社直後の標準報酬月額は入社時の報酬(保証額など)で決まり、保証期間が終わった後もその年の8月(6月以降の入社は翌年8月)まで続きます。
  5. 住民税:前年の所得で決まるため、転職1年目と2年目で手取りが変わることがあります。
  6. 会社独自の控除:社宅・寮費、制服、共済会費などの控除があるか。給与明細の控除欄を面接で確認しておくと安心です。

統計の平均年収の読み方はタクシー運転手の年収(都道府県別)、地域ごとの年収は東京のタクシー運転手の年収などの記事で整理しています。求人はタクシードライバー求人、給与保証のある求人は給与保証ありの求人から探せます。

出典・一次情報

本記事の料率と制度は、次の公表資料に基づいています(いずれも2026年10月閲覧)。計算例は公表値を当てはめて本記事が計算したものです。

  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)「令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)」 kyoukaikenpo.or.jp(PDF)/「令和8年度の協会けんぽの保険料率」 同
  • 厚生労働省 東京労働局 ハローワーク立川「令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内」 jsite.mhlw.go.jp
  • 国税庁「給与所得の源泉徴収税額表(令和8年分)」月額表 nta.go.jp(PDF)
  • 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」 nenkin.go.jp/「定時決定(算定基礎届)」 同
  • 総務省「個人住民税」 soumu.go.jp
  • 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」一般労働者 職種第1表・都道府県別第3表 e-Stat
  • 国土交通省 タクシー事業における賃金システム等に関する懇談会「これまでの議論の整理(案)」(2010年) mlit.go.jp(PDF)
  • タクシー会社の公式採用ページ:日本交通 募集要項/国際自動車 募集要項/日本交通(大阪) 募集要項/名鉄タクシーホールディングス 募集要項/福岡西鉄タクシー よくある質問

計算例について

計算例は、記載した前提に公表された料率と税額表を当てはめたもので、特定の会社や個人の手取りではありません。標準報酬月額は実際には4〜6月の報酬の平均などで決まるため、その月の額面と等級がずれることがあります。正確な控除額は給与明細と勤務先で確認してください。