名古屋・愛知のタクシー運転手の年収|結論

この記事の結論

愛知県のタクシー運転者の年間推計額は422万5,200円で、月間実労働時間は177時間です(令和7年賃金構造基本統計調査から本記事が計算)。全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)の第4表の年間推計額を本記事で並べ替えると47都道府県の7位です。
同じ愛知県の営業用大型トラック(524万7,500円)、バス(483万8,200円)、営業用中小型トラック(479万500円)より低く、県内の運転の仕事の中ではタクシーの年収が最も低い結果です。一方で労働時間は大型トラック(211時間)より34時間短く、1時間あたりでは約1,989円と大型トラック(約2,072円)に近い水準です。
年収は令和5年358万8,500円、令和6年475万1,100円、令和7年422万5,200円と大きく動いており、標本の入れ替わりの影響が大きい県です。
名古屋地区では2025年10月14日に増収率10.54%の運賃改定が実施されました。

愛知県は、後で見るように営業用大型トラックの運転者がタクシー運転者の9倍以上いる県です。タクシーへの転職を考えるとき、「名古屋のタクシーは稼げるのか」「トラックやバスと比べてどうか」を、同じ統計の同じ物差しで確かめておくことが大切です。

この記事では、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の都道府県別の職種表(令和5〜7年)、中部運輸局の運賃改定の公表資料、名古屋で採用している会社の公式募集要項という一次情報だけで整理します。統計は愛知県単位で、名古屋市単位の年収は公表されていない点に注意してください。主要都市の車両数や試験制度の違いは都市別のタクシーの働き方で扱っています。

県内の運転の仕事と比べる|年収はトラック・バスより低く、時間は短い

令和7年賃金構造基本統計調査「都道府県、職種(特掲)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」(都道府県別第3表)の愛知県の欄から、自動車運転の職種を並べました。年間推計額は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」、1時間あたりは年間推計額を月間実労働時間の12倍で割った本記事の計算値です。

職種(愛知県)平均年齢勤続年数月間実労働時間きまって支給する現金給与額(月)年間賞与年間推計額1時間あたり
タクシー運転者50.8歳5.4年177時間328,500円283,200円4,225,200円約1,989円
バス運転者54.9歳6.7年160時間357,400円549,400円4,838,200円約2,520円
営業用大型貨物自動車運転者49.7歳10.6年211時間406,100円374,300円5,247,500円約2,072円
営業用貨物自動車運転者(大型車を除く)51.8歳10.2年196時間377,100円265,300円4,790,500円約2,037円

愛知県では、タクシーの年間推計額は中小型トラックより56万5,300円、バスより61万3,000円、大型トラックより102万2,300円低い結果です。全国ではタクシー・バス・中小型トラックがほぼ横並びなので(タクシー・バス・トラックの年収比較)、愛知はトラックとバスの水準が全国より高い県だといえます。愛知県の営業用大型トラック運転者の推計労働者数は約5万4,190人で、タクシー運転者(約5,940人)の9倍を超えます。

ただし、愛知県のバス運転者は推計労働者数が約1,840人と少なく、月間実労働時間160時間という数字も標本の影響を受けやすい点に注意が必要です。

全タク連の集計では、愛知県の全産業労働者の年間推計額は570万3,700円で、タクシー運転者との差は147万8,500円です。全国平均の差(94万7,400円)より大きく、県内の他の仕事との比較では不利に見えやすい県です。

給与の中身|賞与は28.3万円で年収の約6.7%

愛知県のタクシー運転者の所定内給与額は28万7,200円、時間外・深夜手当などの超過労働給与額(きまって支給する額との差)は4万1,300円、年間賞与は28万3,200円で年収の約6.7%です。全国のタクシー運転者(約4.4%)や東京都(約1.7%)より賞与の比重が大きいのが特徴です。平均年齢50.8歳は東京都(53.6歳)や全国(56.8歳)より若く、勤続年数5.4年も短めです。歩合給の計算の仕組みはタクシーの歩合給の計算と足切りで解説しています。

3年間の推移|359万円、475万円、423万円と大きく変動

令和5年・6年・7年の同じ表から、愛知県のタクシー運転者の数字を並べます。推計労働者数は表の「労働者数(十人単位)」を10倍した値です。

調査年年間推計額きまって支給する現金給与額(月)年間賞与平均年齢勤続年数月間実労働時間推計労働者数
令和5年3,588,500円291,900円85,700円61.6歳8.0年203時間約6,510人
令和6年4,751,100円365,300円367,500円55.1歳6.8年210時間約1万3,660人
令和7年4,225,200円328,500円283,200円50.8歳5.4年177時間約5,940人

令和6年から7年にかけて年間推計額は52万5,900円減り、月間実労働時間も210時間から177時間に短くなっています。推計労働者数が約1万3,660人から約5,940人へと半分以下になっていることから、調査対象の事業所の入れ替わりの影響が大きいと考えられます。愛知県のタクシー運転者の年収は、単年ではなく3年の幅(約359万〜475万円)で捉えるのが現実的です。

注意したいのは、全タク連の資料の第4表にある「対前年増減」の列です。愛知県の欄は+74万5,300円ですが、これは年収の増加ではなく、全産業との格差が令和6年の73万3,200円から147万8,500円に広がったことを示す数字です。年収そのものは上の表のとおり令和6年より下がっています。

2025年10月の運賃改定|加算90円が100円に、増収率10.54%

中部運輸局は2025年9月11日、名古屋地区のタクシー運賃の改定を公示し、10月14日に実施されました。名古屋地区は名古屋市、瀬戸市、津島市、尾張旭市、豊明市、日進市、愛西市、清須市、北名古屋市、弥富市、あま市、長久手市、東郷町、豊山町、大治町、蟹江町、飛島村の12市4町1村です。

項目(普通車・上限運賃)改定前改定後(2025年10月14日〜)
初乗り1.011km 500円0.91km 500円
加算運賃232mごとに90円232mごとに100円
時間距離併用制1分25秒ごとに90円1分25秒ごとに100円
増収率10.54%

申請は名古屋地区の法人事業者63者のうち47者、車両数では4,712両のうち4,253両(申請率90.26%)から出されました。中部運輸局は「査定の考え方」として、運転者の労働条件の改善が改定要請の主要な理由のひとつであることを踏まえ、「実績における運送収入に対する運転者人件費の割合を維持した上で、健全な経営が成立する水準の運賃を設定する」という考え方で査定したと説明しています。あわせて名古屋タクシー協会に対し、労働条件の改善措置と、その改善状況の自主的な公表を指導するとしています。

公表された収支表(原価計算の対象15社)では、運転者人件費は運賃改定前の査定で111億5,859万6,000円、改定後の推定で121億4,563万6,000円とされ、改定によって運転者人件費が約9.9億円多く見込まれています。実際の配分は各社の賃金規定で決まり、統計上の効果は改定後の調査で確認する必要があります。運賃と収入の関係はタクシーの運賃改定と収入で整理しています。

なお、国土交通省が公表している準特定地域の日車営収(1日1車あたりの営業収入)の一覧には名古屋地区が含まれておらず、名古屋の日車営収は本記事では公表資料を確認できませんでした。

名古屋で採用している会社の公表条件|名鉄タクシーの例

名鉄タクシーホールディングスは、名古屋市内のグループ会社(名鉄交通第一〜第五、愛電交通、名鉄名古屋タクシー)のタクシー乗務員の募集要項を採用サイトで公表しています(2026年10月閲覧)。

項目公表されている内容
給与固定給+手当+歩合。平均33.1万円〜最高83.45万円(令和8年3月の皆勤者実績)
未経験者の保障最低保障として最大30万円を最長6か月間(勤務による)
賞与年3回(夏・冬・春)
手当役職手当、家族手当、無事故手当、深夜手当、皆勤手当など
平均年収468万円(採用サイト「数字で見る名鉄タクシー」)
勤務隔日勤務(6:00〜翌2:00、7:00〜翌3:00、9:00〜翌4:00)、夜勤務(18日制 17:00〜翌7:00、22日制 17:00〜翌5:00)、昼日勤(18日制 8:00〜22:00、22日制 6:00〜16:00)
定年65歳(再雇用制度で75歳まで勤務可能)

同社は採用サイトで、入社する人の85%が未経験で、20代・30代の入社が計27.1%あると公表しています。公表されている平均年収468万円は、統計上の愛知県のタクシー運転者の年間推計額(422万5,200円)より高い数字です。会社の公表値は集計の範囲や対象者が統計と異なるため、面接で「平均」の対象(全乗務員か、皆勤者か、勤務形態別か)を確認すると比べやすくなります。

愛知県の求人は愛知県のタクシー求人、名鉄タクシーグループの求人は名鉄交通のページで確認できます。

名古屋でタクシーの求人を比べるときの確認項目

  1. トラック・バスとの比較の仕方:愛知県ではタクシーの年収が他の運転の仕事より低めですが、労働時間も短い仕事です。年収だけでなく、月の労働時間と休日数を並べて比べてください。
  2. 運賃改定後の賃金規定:2025年10月の改定の後、歩合率や手当が変わったかどうか。
  3. 賞与の回数と算定方法:愛知県は統計上、賞与の比重が全国より大きい県です。回数だけでなく、売上に連動するかどうかを確認します。
  4. 保障の期間:未経験者向けの保障が何か月続くか。読み方はタクシーの給与保証の仕組みを参照してください。
  5. 勤務形態:隔日勤務・夜勤・昼日勤のどれを選べるか。隔日勤務のルールはタクシーの隔日勤務とはで解説しています。

未経験から始める場合は未経験からタクシードライバーになるには、トラックなど他の運転の仕事からの転職は異業種からタクシードライバーへの転職も参考にしてください。

出典・一次情報

本記事の数字は、次の公表資料に基づいています(いずれも2026年10月閲覧)。年間推計額・1時間あたり・差額・割合は、公表値から本記事が計算したものです。

  • 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和5年・6年・7年)一般労働者 都道府県別第3表(都道府県、職種(特掲)、性別) e-Stat(令和7年)
  • 一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」(令和8年5月、2026年10月6日付の【最新版】) taxi-japan.or.jp(PDF)
  • 中部運輸局「名古屋地区タクシーの運賃改定について」(2025年9月11日、別添1 運賃の新旧対照表・別添2 収支実績及び推定収支) wwwtb.mlit.go.jp(PDF)
  • 国土交通省「タクシー事業の準特定地域における輸送実績(速報値)の公表について」(2024年7月31日) mlit.go.jp
  • 名鉄タクシーホールディングス 採用サイト「タクシードライバー募集要項」 meitakuhd.com/「数字で見る名鉄タクシー」 同

数字の範囲について

賃金構造基本統計調査の愛知県の数字は県全体の値で、名古屋市単位の年収は公表されていません。対象は企業規模10人以上の企業で働く一般労働者で、個人タクシーは含みません。額は税・社会保険料を引く前の額面です。愛知県のタクシー運転者は標本が比較的少なく、年ごとの変動が大きい点に注意してください。