タクシーとバス運転手どっち?|結論
この記事の結論
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では、年収(推計)はタクシー運転者が約451万円、バス運転者が約453万円で、平均はほぼ同じです。
違うのは受け取り方です。バスは賞与が年59万100円で年収の13.0%を占め、所定内給与の個人差が小さい(十分位分散係数0.26)のに対し、タクシーは賞与が年19万7,800円(4.4%)で、個人差が大きい(0.51)のが特徴です。
経験0年の所定内給与はタクシー30万7,000円、バス24万9,100円とタクシーが高く、バスは15年以上で27万9,000円に上がります。60歳以降の年収(推計)はどの年齢階級でもタクシーが上回ります。
改善基準告示の1か月の拘束時間の上限は、バス281時間、タクシーの日勤288時間・隔日勤務262時間です。必要な免許は、路線バスなど定員30人以上の大型バスが大型二種、タクシーは普通二種です。
同じ「人を乗せる」二種免許の仕事でも、決まった路線と時刻表で走るバスと、お客様の行き先に合わせて走るタクシーでは、給与の決まり方も勤務のルールも違います。転職先としてどちらにするか迷う人も多い組み合わせです。
この記事では、厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和7年)の職種別の表、厚生労働省の改善基準告示、警察の運転免許の案内という一次情報だけを使って、タクシー運転手とバス運転手の違いを比べます。口コミや出どころの分からない「平均〇〇万円」は使っていません。
賃金と労働時間の比較|年収はほぼ同じ
令和7年賃金構造基本統計調査(一般労働者・企業規模10人以上・男女計)の「バス運転者」と「タクシー運転者」を並べます。年収(推計)は、全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)の集計と同じく「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で計算しています。統計上の「バス運転者」には路線バス・高速バス・貸切バスなどの運転者が含まれ、種類別の数字はありません。
| 項目 | タクシー運転者 | バス運転者 |
|---|---|---|
| 平均年齢 | 56.8歳 | 56.0歳 |
| 平均勤続年数 | 8.3年 | 12.3年 |
| 月の労働時間(所定内+超過) | 192時間(169+23) | 198時間(168+30) |
| きまって支給する現金給与額(月) | 35万9,200円 | 32万8,400円 |
| うち所定内給与額 | 30万6,400円 | 26万2,800円 |
| 年間賞与その他特別給与額 | 19万7,800円 | 59万100円 |
| 年収(推計) | 約450万8,200円 | 約453万900円 |
| 年収に占める賞与の割合(編集部計算) | 4.4% | 13.0% |
| 1時間あたり(月給÷労働時間・編集部計算) | 約1,871円 | 約1,659円 |
| 女性の割合(労働者数) | 6.0% | 3.9% |
| 労働者数(推計) | 約17万210人 | 約9万6,280人 |
年収(推計)の差は2万2,700円で、平均ではほとんど変わりません。ただし、タクシーは月々の給与が多く賞与が少ない、バスは月々の給与が少なめで賞与が多いという逆の形になっています。月の超過労働時間はバスが7時間長く、月給を労働時間で割った金額はタクシーのほうが高くなります。勤続年数はバスが4年長く、同じ会社で長く働く人が多い職種です。
タクシー運転者の年収は全タク連の資料で前年比8.7%増と大きく伸びており、全タク連はその背景に最低保証額の上昇・ベースアップに加え、令和4年以降の運賃改定やアプリ配車の利用増による売上の増加を挙げています。地域ごとの数字はタクシー運転手の年収(都道府県別)にまとめています。
会社の規模別の年収(推計)
同じ表を企業規模別に分けて年収(推計)を計算すると、次のとおりです。
| 企業規模 | タクシー運転者 | バス運転者 |
|---|---|---|
| 1,000人以上 | 約505万8,700円 | 約514万600円 |
| 100〜999人 | 約489万3,600円 | 約457万5,800円 |
| 10〜99人 | 約372万8,800円 | 約399万6,400円 |
どちらも大きな会社ほど年収(推計)が高い傾向です。1,000人以上の会社ではバスの賞与が年81万1,000円と大きく、10〜99人の会社ではタクシーの年収(推計)が最も低くなります。なお、1,000人以上のタクシー運転者は推計で約6,870人と人数が少ない区分です。
給与の散らばりと経験年数|バスは「そろっていて、長く勤めて上がる」
賃金構造基本統計調査の「所定内給与額の分布特性値」で、下から10%・25%・50%(中位数)・75%・90%の位置にいる人の所定内給与額(月)を比べます。所定内給与額には、タクシーの歩合給も含まれます(残業代などの超過労働給与は含まない)。
| 所定内給与額(月) | タクシー運転者 | バス運転者 |
|---|---|---|
| 第1・十分位数(下から10%) | 17万4,700円 | 20万200円 |
| 第1・四分位数(下から25%) | 21万2,200円 | 22万4,500円 |
| 中位数(真ん中) | 28万6,300円 | 25万7,900円 |
| 第3・四分位数(上から25%) | 37万1,400円 | 29万4,000円 |
| 第9・十分位数(上から10%) | 46万6,000円 | 33万3,800円 |
| 十分位分散係数(大きいほど開きが大きい) | 0.51 | 0.26 |
バスは下から10%と上から10%の差が13万3,600円にとどまるのに対し、タクシーは29万1,300円あります。真ん中の人どうしではタクシーが2万8,400円高く、下から10%の位置ではバスが2万5,500円高い、という関係です。全タク連は、歩合給制度では最低賃金は保障として働くにとどまり、売上水準に応じて賃金が変わるため、年功賃金制の職種と平均賃金だけで単純比較することには注意が必要だと説明しています。
経験年数別の所定内給与額と賞与
同じ調査の「職種(小分類)、性、経験年数階級別」の表(男女計)から、今の職種での経験年数ごとの所定内給与額(月)と年間賞与を並べます。
| 経験年数 | タクシー運転者 | バス運転者 |
|---|---|---|
| 0年 | 30万7,000円(賞与2万1,900円) | 24万9,100円(賞与5万9,500円) |
| 1〜4年 | 33万円(賞与21万6,900円) | 24万4,400円(賞与42万9,300円) |
| 5〜9年 | 31万5,300円(賞与28万7,700円) | 25万3,800円(賞与59万4,900円) |
| 10〜14年 | 31万300円(賞与19万3,600円) | 25万5,100円(賞与58万2,600円) |
| 15年以上 | 27万3,600円(賞与18万6,100円) | 27万9,000円(賞与71万9,800円) |
タクシーは経験1〜4年が最も高く、15年以上では下がります。バスは所定内給与が少しずつ上がり、賞与も経験とともに増えて15年以上で71万9,800円になります。全タク連は、歩合給制度では経験年数に応じて段階的に賃金が上がる仕組みが一般的でないため、勤続が長くなるほど他の職種と比べた順位が下がる傾向があると分析しています。タクシーの入社直後の給与保証についてはタクシーの給与保証の仕組みで解説しています。
タクシー運転手の求人をチェック
求人一覧を見る年齢別の年収(推計)|20代と60代以降で差が出る
年齢階級別の表から年収(推計)を計算すると、平均ではほぼ同じ2つの職種でも、年齢によって差が出ます。
| 年齢 | タクシー運転者 | バス運転者 |
|---|---|---|
| 20〜24歳 | 約483万3,600円 | 約393万1,000円 |
| 60〜64歳 | 約440万1,300円 | 約433万400円 |
| 65〜69歳 | 約379万500円 | 約346万400円 |
| 70歳以上 | 約347万5,900円 | 約295万8,900円 |
| 65歳以上が占める割合(労働者数) | 26.3% | 15.9% |
20代前半ではタクシーが約90万円高く出ています(ただしタクシーの20〜24歳は推計約2,080人と少ない区分です)。60歳以降はどの年齢階級でもタクシーが上回り、65歳以上で働く人の割合もタクシーのほうが大きくなっています。60代からの働き方は60代からのタクシードライバーを参考にしてください。
労働時間のルールの違い|改善基準告示はバスとタクシーで別
バスとタクシーの運転者には、厚生労働大臣の告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)で拘束時間(労働時間+休憩時間)や休息期間の上限が決められています。2024年4月1日から改正後の基準が適用され、あわせて時間外労働の上限(臨時的な特別の事情がある場合でも年960時間)も自動車運転の業務にかかるようになりました。
| 項目 | バス | タクシー(日勤) | タクシー(隔日勤務) |
|---|---|---|---|
| 1年・52週の拘束時間 | 3,300時間以内(貸切バス等は労使協定で3,400時間まで) | 定めなし(1か月で管理) | 定めなし(1か月で管理) |
| 1か月(または4週平均1週)の拘束時間 | 1か月281時間以内(貸切バス等は労使協定で年6か月まで294時間)、または4週平均1週65時間以内(同じく52週のうち24週まで68時間) | 288時間以内 | 262時間以内(労使協定で年6か月まで270時間) |
| 1日(1回)の拘束時間 | 13時間以内(上限15時間、14時間超は週3回までが目安) | 13時間以内(上限15時間、14時間超は週3回までが目安) | 2暦日22時間以内、かつ2回平均21時間以内 |
| 休息期間 | 継続11時間を基本、9時間を下回らない | 継続11時間を基本、9時間を下回らない | 継続24時間を基本、22時間を下回らない |
| 運転時間 | 2日平均で1日9時間、4週平均で1週40時間まで(貸切バス等は労使協定で44時間まで)。連続運転は4時間まで | - | - |
バスには運転時間・連続運転時間の上限があり、高速バスや貸切バスの高速道路の区間では連続運転をおおむね2時間までとするよう努めることとされています。タクシーには隔日勤務という働き方があり、1回の勤務が長い代わりに出勤が月11〜13回程度になります(タクシーの隔日勤務とは)。なお、バスの改善基準告示にも隔日勤務の特例(2暦日21時間以内・勤務後に継続20時間以上の休息など)がありますが、タクシーとは数字が異なります。
バスは路線と時刻表に沿って走るため、勤務は会社が組むダイヤ(行路)で決まります。タクシーは、流し営業などでどこを走りどのお客様を乗せるかを運転者が判断する場面があり、売上が歩合給に反映されます。統計で見た給与の散らばりの違いは、この働き方の違いとつながっています。
必要な免許の違い|大型二種と普通二種
どちらも旅客を運ぶため第二種免許が必要ですが、運転する車の大きさが違うため、必要な免許の種類が変わります。
| 項目 | タクシー | バス |
|---|---|---|
| 必要な免許 | 普通第二種免許(乗車定員10人以下の普通自動車) | 大型第二種免許(乗車定員30人以上の大型自動車)。定員29人以下のマイクロバスなどは中型第二種免許 |
| 受験資格(原則) | 21歳以上、かつ大型・中型・準中型・普通・大型特殊免許のいずれかの経歴が通算3年以上(または他の二種免許を持っている) | |
| 受験資格の特例 | 受験資格特例教習を修了すれば、19歳以上・経歴1年以上で受験可(2022年5月13日から) | |
受験資格の年齢と経歴は同じですが、大型二種は大型自動車を運転する技能が求められます。タクシーは普通二種で始められ、入社後に会社の費用で二種免許を取る養成制度を募集要項に掲げる会社があります。詳しくはタクシー会社の二種免許養成制度、二種免許の費用と取り方、19歳からの特例は受験資格特例教習をご覧ください。
どっちが向いているか|統計と制度から言えること
一次情報から読み取れる違いを、判断の材料として整理します。どちらが「楽」「稼げる」と断定できるものではありません。
| 重視すること | タクシーが合いやすい理由 | バスが合いやすい理由 |
|---|---|---|
| 収入の安定・予測しやすさ | - | 給与の個人差が小さく(十分位分散係数0.26)、賞与が年収の13.0% |
| 工夫で収入を上げたい | 上位10%の所定内給与は46万6,000円 | - |
| 未経験からの最初の給与 | 経験0年の所定内給与30万7,000円 | -(0年は24万9,100円) |
| 同じ会社で長く勤める | - | 平均勤続12.3年。経験15年以上で賞与71万9,800円 |
| 60代以降も働く | 60歳以降の年収(推計)が各年齢階級で上回り、65歳以上が26.3% | - |
| 出勤日数・時間帯 | 隔日勤務なら月11〜13回程度の出勤。日勤・夜日勤も選べる会社がある | ダイヤに沿った勤務。運転時間の上限が決まっている |
| 免許 | 普通二種で始められる | 大型二種が必要(マイクロバスは中型二種) |
求人を比べるときは、「固定給と歩合・手当の内訳」「賞与の有無と算定方法」「勤務形態ごとの拘束時間と月の出勤回数」「二種免許の取得費用の負担」を確かめると、統計の平均と自分の条件のずれを小さくできます。会社の比べ方はタクシー会社の選び方、勤務形態の違いはタクシーの夜勤と日勤の違いにまとめています。
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出典・一次情報
本記事の数字と制度は、次の公表資料に基づいています(いずれも2026年10月14日閲覧)。年収(推計)・割合・1時間あたりの金額は、各表の数字から編集部が計算したものです。
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」一般労働者・職種(職種(小分類)別 第1表、第5表、第14表、第17表)(2026年3月24日公表) e-stat.go.jp
- 一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」(令和8年5月、2026年10月6日付の訂正版【最新版】) taxi-japan.or.jp(PDF)
- 厚生労働省 自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト「バス運転者の改善基準告示」 driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/「ハイヤー・タクシー運転者の改善基準告示」 同
- 厚生労働省「タクシー・ハイヤー運転者の労働時間等の改善基準のポイント」パンフレット mhlw.go.jp(PDF)
- 警視庁「大型二種・中型二種・普通二種免許試験」 keishicho.metro.tokyo.lg.jp/警察庁「第二種免許等の受験資格の見直しについて」 npa.go.jp
- 鳥取県警察「運転免許の種類と運転できる自動車の種類」(乗車定員の区分) pref.tottori.lg.jp
数字の読み方について
賃金構造基本統計調査は毎年6月分の給与と前年1年間の賞与を調べた統計で、雇用されている労働者が対象です。職種別の数字は全国の平均で、路線バス・高速バス・貸切バスの区別や、タクシーの勤務形態の区別はありません。地域・会社・勤務形態によって実際の給与は大きく異なります。



