個人タクシーの年収|結論

この記事の結論

個人タクシーの年収(所得)の公的な平均は公表されておらず、公表値で分かるのは売上にあたる運送収入で、東京都は令和6年度に1事業者あたり約551万円でした。この額は関東運輸局が公表する個人タクシーの都県別実績(事業者数9,116、運送収入502億4,500万円)を本記事で割ったもので、燃料費や車両費などの経費を差し引く前の金額です。
同じ計算で、神奈川県は約471万円、埼玉県は約517万円、千葉県は約398万円、北陸信越4県の合計は約374万円です(いずれも令和6年度)。
タクシー運転者の年収として広く使われる厚生労働省「賃金構造基本統計調査」は、常用労働者を雇う事業所で働く人の賃金を調べる統計で、自分で事業を営む個人タクシーは含まれません。法人の運転者の年収(東京都570万3,500円など)と個人タクシーの売上は、性質の違う数字として分けて見る必要があります。

「個人タクシーになると年収はいくらになるのか」は、法人で経験を積んだ人がいちばん気にする点です。ところが、ネット上でよく見る「個人タクシーの平均年収」には、出どころが書かれていないものが少なくありません。

この記事では、国の統計と運輸局の公表資料という一次情報だけで、個人タクシーの収入について分かることと分からないことを分けて整理します。個人タクシーになるための年齢・運転経歴・法令試験・資金の条件は個人タクシーのなり方と条件で解説しているので、ここでは収入に絞ります。

なぜ「平均年収」が出ないのか|賃金の統計の対象外

タクシー運転者の年収として各所で引用される数字の多くは、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」がもとになっています。この調査の対象は、5人以上の常用労働者を雇用する民営事業所(と10人以上の公営事業所)から無作為に選んだ事業所と、そこで雇われている労働者です(令和7年調査の「調査の概要」)。

個人タクシーは、道路運送法の許可を受けた個人が1両の車を自分で運転して営む事業です。関東運輸局の審査基準は、許可の条件として「使用する事業用自動車は1両であり、他人に当該事業用自動車を営業のために運転させてはならない」と定めています。雇われて給与を受け取る立場ではないため、賃金の統計には入りません。

項目法人タクシーの運転者個人タクシー
立場タクシー会社に雇われる労働者許可を受けて事業を営む個人事業主
収入の形給与(歩合給・固定給・賞与)運賃収入(売上)から経費を差し引いたものが事業所得
年収の公的統計賃金構造基本統計調査(都道府県別もあり)同調査の対象外。所得の平均を示す公的統計は公表なし
公表されている収入の数字年間推計額(例:東京都570万3,500円、令和7年)一部の運輸局が公表する運送収入(売上)の合計と事業者数

全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)がまとめる「タクシー運転者の現況」も、この賃金構造基本統計調査を集計したものなので、個人タクシーの収入は含みません。法人の運転者の都道府県別の年収はタクシー運転手の年収 都道府県別で整理しています。

関東の個人タクシー|1事業者あたりの年間運送収入

関東運輸局は統計資料「一般乗用旅客自動車運送事業の都県別、年度別実績推移」を、法人と個人に分けて公表しています。個人の表には、都県ごとの事業者数・車両数・総走行キロ・輸送人員・運送収入が年度別に載っています。個人タクシーは1人1両なので、運送収入を事業者数で割ると、1事業者(=1人)あたりの年間の売上の目安になります。

都県(令和6年度)事業者数運送収入(百万円)1事業者あたり運送収入(参考)令和5年度
東京都9,11650,245約551.2万円約559.3万円
神奈川県1,9499,185約471.3万円約470.5万円
埼玉県161833約517.4万円約540.0万円
千葉県4641,845約397.6万円約374.6万円
栃木県44204約463.6万円約464.4万円
関東運輸局 合計11,73462,312約531.0万円約536.7万円

(関東運輸局調。1事業者あたりは本記事の計算値。群馬県は令和4〜6年度とも事業者数0で、表に茨城県・山梨県の欄はありません)

東京都の個人タクシーは9,116事業者で、全タク連「TAXI TODAY in Japan 2026」が示す全国の個人タクシー車両数2万5,009台(令和7年3月末)の約36%を占めます。同じ関東でも、東京都と千葉県では1事業者あたりの運送収入に約150万円の差があります。

東京都の推移|コロナ禍で約284万円まで下がり、令和5年度に過去の水準を超えた

同じ表から、東京都の個人タクシーの数字を年度別に並べます。1事業者あたりの値と1キロあたりの運送収入は本記事の計算値です。

年度事業者数運送収入(百万円)1事業者あたり運送収入1事業者あたり走行キロ1事業者あたり輸送人員走行1キロあたり運送収入
平成16年度18,91991,401約483.1万円約3万1,409km約2,157人約154円
令和元年度11,81062,238約527.0万円約3万519km約2,620人約173円
令和2年度11,08431,461約283.8万円約1万8,036km約1,629人約157円
令和3年度10,52629,921約284.3万円約1万7,559km約1,690人約162円
令和4年度9,85342,575約432.1万円約2万3,556km約2,330人約183円
令和5年度9,38252,476約559.3万円約2万7,771km約2,724人約201円
令和6年度9,11650,245約551.2万円約2万7,720km約2,627人約199円

読み取れることは3つです。1つ目に、事業者数は平成16年度の1万8,919から令和6年度の9,116へと半分以下に減っています。2つ目に、1事業者あたりの運送収入は令和2・3年度に約284万円まで落ち込みましたが、令和5年度には約559万円と令和元年度を上回りました。3つ目に、1事業者あたりの走行キロは令和元年度より約1割少ないのに、走行1キロあたりの運送収入が約173円から約199円に上がっています。東京の特別区・武三地区では2022年11月に運賃改定(改定率14.24%)が実施されており、単価の上昇が売上を支えている形です。2026年4月20日の改定(改定率10.14%)の効果は、この表にはまだ含まれていません。

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地方の例|北陸信越4県は1事業者あたり約374万円

北陸信越運輸局も「ハイヤー・タクシー事業(個人)輸送実績」として、新潟・長野・富山・石川の4県の事業者数・車両数・輸送人員・走行キロ・営業収入を年度別に公表しています。同じように1事業者あたりの営業収入を計算しました。

県(令和6年度)事業者数営業収入(万円)1事業者あたり営業収入(参考)令和5年度
新潟県27679,958約289.7万円約299.3万円
長野県7734,459約447.5万円約414.1万円
富山県7334,658約474.8万円約657.3万円
石川県18479,009約429.4万円約467.6万円
4県合計610228,084約373.9万円約406.2万円

(北陸信越運輸局自動車交通部調。1事業者あたりは本記事の計算値)

4県の合計では、1事業者あたり約374万円と東京都の約7割の水準です。事業者数が100に満たない県は、数人の動きで平均が大きく変わります。たとえば富山県は令和5年度の約657万円から令和6年度は約475万円になっており、単年の値で県どうしを比べるのは向きません。

近畿運輸局の統計資料(運輸要覧の「6-11 一般乗用旅客自動車運送事業の事業者数及び車両数の推移」)は、個人タクシーの事業者数(令和6年度末で大阪府2,217、京都府1,688、兵庫県866など)は載せていますが、輸送実績の表は法人タクシーだけで、個人タクシーの運送収入は掲載されていません。本記事で確認できた範囲では、個人タクシーの売上を県別に公表しているのは関東運輸局と北陸信越運輸局でした。

法人の運転者の年収と並べるときの注意|売上と給与は別物

関東の都県について、個人タクシーの1事業者あたり運送収入と、法人タクシー運転者の年間推計額(賃金構造基本統計調査)を並べると次のとおりです。ただし2つは性質の違う数字なので、差額をそのまま「独立するといくら増える」と読むことはできません。

都県個人タクシー 1事業者あたり運送収入(令和6年度・売上)法人タクシー運転者 年間推計額(令和7年調査・給与)
東京都約551.2万円570万3,500円
神奈川県約471.3万円448万9,400円
埼玉県約517.4万円413万400円
千葉県約397.6万円448万8,000円
栃木県約463.6万円461万3,100円

(法人の年間推計額は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で、全タク連の第4表と同じ値です)

違いは主に次の3点です。

  1. 経費を引く前か後か:個人タクシーの運送収入は売上で、ここから燃料費、車両の購入費(減価償却費)や修理費、保険料、無線・配車の費用などを自分で負担します。法人の年間推計額は、会社がこれらの費用を負担したあとの給与です。
  2. 社会保険と税の扱い:法人の運転者は会社が社会保険料の一部を負担します。個人事業主は、売上から必要経費を引いた事業所得(国税庁の説明では「総収入金額-必要経費=事業所得の金額」)をもとに、自分で税と保険料を納めます。
  3. 期間と対象:運送収入は年度(4月〜翌3月)の合計、法人の年間推計額は6月分の給与を12倍して前年の賞与を足した推計です。法人の数字は企業規模10人以上の企業で働く人に限られます。

個人タクシーの経費が売上の何割になるかを示す公的な統計は、公表されていません。燃料の種類、車両を新車で買うか、無線組合に入るかなどで大きく変わるため、開業を考える人は、所属を考えている個人タクシーの団体や先輩事業者に実際の費用を確認するのが確実です。

売上を左右する許可の条件|1人1両、月2日以上の休日、年齢の上限

個人タクシーの売上は、法人のように会社の賃金規定ではなく、自分がどれだけ乗るかで決まります。関東運輸局の審査基準は、許可に次のような条件を付けると定めています(令和8年2月17日改正の公示)。

  • 使用する事業用自動車は1両で、他人に営業のために運転させてはならない。体調不良や休みの日は、その分の売上がゼロになります。
  • 月に2日以上の定期休日を定める。
  • 許可には概ね3年の期限が付き、更新時に満75歳(一部の許可は満80歳)に達する日以降の期限は付けない。
  • 満65歳に達したら高齢者向けの適性診断を受ける。

開業時には、設備資金80万円以上・運転資金80万円以上(審査基準の目安)などの所要資金を自己資金で確保している必要があり、車両の購入や車庫の確保にも費用がかかります。こうした初期費用も、売上と所得の差を考えるうえで欠かせない要素です。条件の詳しい内容は個人タクシーのなり方と条件を参照してください。

公表されていないこと|「平均年収〇〇万円」を見たら確かめたい点

本記事で調べた国・運輸局・業界団体の公表資料には、次の情報は見当たりませんでした(2026年10月閲覧時点)。

  • 個人タクシー事業者の所得(経費を引いた後の金額)の平均:公表なし。
  • 経費の内訳や、売上に対する経費の割合:公表なし。
  • 1事業者あたりの年間の稼働日数や1日あたりの売上:公表なし(運送収入の合計と事業者数は分かりますが、稼働日数が分からないため1日あたりには直せません)。
  • 全国の個人タクシーの運送収入の合計と、近畿・中部・九州などの府県別の運送収入:本記事では公表を確認できませんでした。
  • 年齢別・経験年数別の収入:公表なし。

「個人タクシーの平均年収は〇〇万円」という記述を見たときは、それが売上なのか所得なのか、どの地域・どの年の、どの資料の数字なのかを確かめてください。出典が示されていない数字は、本記事では使っていません。

個人タクシーを目指す人が法人時代に確認しておきたいこと

個人タクシーの新規許可には、年齢区分に応じたタクシー・ハイヤーの運転経歴が求められます。法人で働く期間の収入と、その後の独立の見通しを合わせて考えるために、次の点を確認しておくと役立ちます。

  1. 営業区域の売上水準:同じ関東でも東京都と千葉県では1事業者あたり運送収入に約150万円の差があります。法人の1日1車あたりの売上も地域で大きく違います(タクシー運転手の1日の売上)。
  2. 法令遵守の記録:審査基準は、申請日以前の一定期間に行政処分や道路交通法の違反がないことを求めています。
  3. 自己資金の積み立て:所要資金は自己名義の預貯金等で常時確保していることが求められます。
  4. 運賃改定の動き:個人タクシーの売上も運賃の水準に左右されます。改定と収入の関係はタクシーの運賃改定と収入で整理しています。

法人タクシーでの働き方と年収は、東京のタクシー運転手の年収やタクシー運転手の年収の上げ方で詳しく解説しています。法人タクシーの求人は求人一覧、個人タクシーに関する求人・情報は個人タクシーのページから探せます。

出典・一次情報

本記事の数字は、次の公表資料に基づいています(いずれも2026年10月閲覧)。1事業者あたりの運送収入・走行キロ・輸送人員、1キロあたりの運送収入、割合と差額は、公表値から本記事が計算したものです。

  • 国土交通省関東運輸局「統計資料(令和6年度実績)」一般乗用旅客自動車運送事業の都県別、年度別実績推移(個人) wwwtb.mlit.go.jp(PDF)/統計資料の一覧 wwwtb.mlit.go.jp
  • 国土交通省北陸信越運輸局「ハイヤー・タクシー事業(個人)輸送実績」(令和6年度まで掲載) wwwtb.mlit.go.jp(PDF)
  • 国土交通省近畿運輸局 運輸要覧 6-11 一般乗用旅客自動車運送事業の事業者数及び車両数の推移 wwwtb.mlit.go.jp(PDF)/6-14 法人タクシーの輸送実績の推移 wwwtb.mlit.go.jp(PDF)
  • 関東運輸局 公示「個人タクシー事業の許可及び譲渡譲受認可申請事案の審査基準について」(令和8年2月17日改正) wwwtb.mlit.go.jp(PDF)
  • 関東運輸局プレスリリース「令和8年4月20日より東京都特別区・武三地区のタクシー運賃が変わります。」(2026年3月19日) wwwtb.mlit.go.jp(PDF)
  • 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」調査の概要 mhlw.go.jp/一般労働者 都道府県別第3表(令和7年) e-Stat
  • 一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」(令和8年5月、2026年10月6日付の【最新版】)第4表 taxi-japan.or.jp(PDF)/「TAXI TODAY in Japan 2026」 driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp(PDF)
  • 国税庁 タックスアンサー No.1350「事業所得の課税のしくみ(事業所得)」 nta.go.jp

数字の範囲について

関東運輸局の表の単位は運送収入が百万円、北陸信越運輸局の表は営業収入が万円です。1事業者あたりの値は、その年度の事業者数(年度末の数と考えられます)で割った平均で、年度の途中で開業・廃業した人や、病気などで稼働が少なかった人も含みます。消費税の扱いは資料に記載がありません。法人の年間推計額は税・社会保険料を引く前の額面です。