タクシー運賃の仕組み|結論
この記事の結論
タクシー運賃は、国が地域ごとに決めた「上限〜下限の幅」の中から各社が選んで認可・届出する仕組みで、初乗運賃と距離・時間の加算で計算されます。
道路運送法第9条の3により、運賃と料金は国土交通大臣の認可が必要です。特定地域・準特定地域では国が指定した「公定幅運賃」の範囲で届け出ます。
距離制運賃は「初乗運賃+加算運賃」で、時速10km以下で走った時間も距離に換算する「時間距離併用制」が使われます。深夜早朝割増は原則22時から5時まで2割、障害者手帳などの公共的割引は1割です。
東京23区・武蔵野市・三鷹市の普通車の上限運賃は、2026年4月20日から初乗1.0km 500円、加算232mごと100円になりました。運賃は会社の売上を通じて、歩合給を中心とする乗務員の賃金にもつながります。
メーターの数字の決まり方は、タクシーで働く人にとっても大事な知識です。お客様から迎車料金や割増について聞かれることがあり、運賃は売上、つまり歩合給の土台になります。
この記事では、国土交通省の通達「一般乗用旅客自動車運送事業の運賃及び料金に関する制度について」と「事前確定運賃に関する認可申請の取扱いについて」、関東運輸局・中部運輸局・近畿運輸局の運賃改定の公表資料、e-Gov法令検索の条文という一次情報だけを使って、運賃の仕組みを順に整理します。
運賃の決まり方|認可制と「上限・下限」の幅
道路運送法第9条の3は、タクシー(一般乗用旅客自動車運送事業)の事業者は運賃と料金を定めて国土交通大臣の認可を受けなければならないとし、認可の基準として「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであること」「特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものでないこと」などを挙げています。
実際の運用では、国(地方運輸局)が地域ごとに上限と下限の幅を示し、その中から事業者が運賃を選びます。国土交通省の資料「タクシーの運賃制度について」は、仕組みを次の2つに分けて説明しています。
| 項目 | 自動認可運賃制度 | 公定幅運賃制度 |
|---|---|---|
| 適用される地域 | 特定地域・準特定地域以外 | 特定地域・準特定地域 |
| 根拠 | 道路運送法第9条の3(認可) | タクシー特措法第16条・第16条の4(国が範囲を指定し、事業者が届出) |
| 仕組み | 運賃ブロックごとに上限と下限の幅を設定。幅の中の申請は個別審査をせずに認可 | 国土交通大臣が指定した運賃の範囲の中で事業者が運賃を選び、届け出る |
| 幅を外れた運賃 | 下限を下回る運賃は個別に厳格な審査 | 範囲外の届出は変更命令の対象(特措法第16条の4第3項) |
上限と下限の考え方について、国土交通省の資料「タクシーの運賃・料金について」は、上限運賃は運賃ブロックごとに標準的な経営状況にある事業者(原価計算事業者、10〜30者程度)の原価から平均原価を出して設定し、下限運賃は「特に効率的な経営」を行った場合にも収支が償う水準として設定すると説明しています。人件費・燃料費などの営業費に適正な利潤を加えた総括原価と総収入が等しくなるように運賃水準を決める「総括原価方式」です。
タクシー特措法(特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法)は、供給過剰またはそのおそれがある地域を国が「特定地域」「準特定地域」に指定する法律です。東京23区・武蔵野市・三鷹市の運賃について、東京ハイヤー・タクシー協会は2026年3月19日付けで国土交通省から「新たな公定幅運賃が公示」されたと案内しています。地域の指定と営業区域の関係はタクシーの営業区域で解説しています。
運賃は「運賃適用地域」ごとに違う
運賃の幅は、いくつかの営業区域(交通圏)をまとめた運賃適用地域ごとに決められています。関東運輸局の2026年2月13日の発表では、例えば「多摩地区」には北多摩・南多摩・西多摩の3つの交通圏が、「埼玉南部地区」には県南中央・県南東部・県南西部の3つの交通圏が含まれています。同じ都県の中でも、地区が違えば初乗距離や加算距離が違います。
距離制運賃の仕組み|初乗り・加算・時間距離併用制
国土交通省の通達は、運賃の種類を距離制運賃(時間距離併用制運賃を含む)、時間制運賃、定額運賃、事前確定運賃に分け、適用は原則として距離制運賃としています。距離制運賃は「初乗運賃と加算運賃を定め、旅客の乗車地点から降車地点までの実車走行距離に応じた運賃」です。
- 初乗運賃:初乗距離までの運賃。初乗距離は運賃適用地域ごとに地方運輸局長が定めます。
- 加算運賃:初乗距離を超えた後、一定の距離(加算距離)ごとに加わる運賃。加算距離は1メートル単位で定められます。
- 時間距離併用制:一定速度(限界速度。時速10kmを超えない値)以下で走った時間を加算距離に換算し、距離制メーターに足し合わせる仕組み。渋滞や信号待ちで進まない時間も運賃に反映されます。
- 運賃の収受:降車地点に停車したら直ちにメーターを「支払」に操作し、その表示額を受け取ります。
東京ハイヤー・タクシー協会の案内では、東京23区・武蔵野市・三鷹市の普通車(上限運賃を選んだ場合)は、2026年4月20日から「初乗1.0km 500円、加算232mごと100円、時間距離併用運賃は時速10km以下で走行した場合1分25秒ごと100円」です。改定前は1.096km 500円、255mごと100円、1分35秒ごと100円でした。
初乗距離は2種類まで設定できる
通達では、現行の初乗距離を基本にしつつ、事業者の意向で加算距離1回分(地域の実情で複数回分も可)を差し引いた短い初乗距離をもう1種類設定でき、その初乗運賃は差し引いた距離に相当する加算運賃額を引いた額にするとされています。近畿運輸局が2025年10月6日に公示した大阪地区(大阪市域交通圏・北摂交通圏)の普通車上限運賃は、初乗1.2km 600円に加えて「初乗距離を短縮する場合」の0.969km 500円が並んでいます。どちらの初乗りを使うかは会社によって違います。
時間制運賃と定額運賃
時間制運賃は「旅客の指定した場所に到着した時から旅客の運送を終了するまでの実拘束時間に応じた運賃」で、営業所や無線基地局での事前の特約がある場合に使われ、メーターにカバーをして「貸切」と表示します。東京23区・武蔵野市・三鷹市の普通車の上限は1時間5,900円、以後30分ごと2,700円です(関東運輸局 2026年3月19日発表)。ハイヤーの時間制運賃との違いはハイヤーとタクシーの違いにまとめています。空港と特定エリアの間などに事前に額を決める定額運賃もあり、通達では3,000円、5,000円等を目安に地方運輸局長が定める額に相当する距離を超える運送で設定できるとされています。
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求人一覧を見る地域別の初乗り・加算|運輸局の公示例
各地方運輸局が2025年から2026年に公表した運賃改定資料から、普通車の距離制運賃の上限と下限を並べます。実際に各社が選んでいる運賃は、この幅の中のいずれかです。
| 運賃適用地域 | 上限運賃(初乗・加算) | 下限運賃(初乗・加算) | 時間距離併用制(上限) | 実施日 |
|---|---|---|---|---|
| 東京都 特別区・武三地区 | 1.0km 500円・232mごと100円 | 1.0km 480円・242mごと100円 | 1分25秒ごと100円 | 2026年4月20日 |
| 東京都 多摩地区 | 1.0km 500円・211mごと100円 | 1.0km 480円・220mごと100円 | 1分20秒ごと100円 | 2026年3月16日 |
| 神奈川県 京浜地区 | 1.0km 500円・214mごと100円 | 1.0km 470円・228mごと100円 | 1分20秒ごと100円 | 2026年3月16日 |
| 埼玉南部地区 | 1.027km 500円・213mごと100円 | 1.027km 470円・227mごと100円 | 1分20秒ごと100円 | 2026年3月16日 |
| 千葉地区 | 1.06km 500円・221mごと100円 | 1.06km 470円・235mごと100円 | 1分20秒ごと100円 | 2026年3月16日 |
| 群馬地区(旧群馬県A地区) | 1.237km 600円・239mごと100円 | 1.237km 570円・252mごと100円 | 1分30秒ごと100円 | 2026年3月16日 |
| 名古屋地区 | 0.91km 500円・232mごと100円 | 0.91km 470円・247mごと100円 | 1分25秒ごと100円 | 2025年10月14日 |
| 大阪地区(大阪市域・北摂交通圏) | 1.2km 600円・231mごと100円 | 1.2km 560円・248mごと100円 | 1分25秒ごと100円 | 2025年11月5日 |
初乗りを500円前後にそろえながら、初乗距離と加算距離で水準を調整しているのが分かります。加算距離が短いほど、同じ距離を走ったときの運賃は高くなります。名古屋地区は改定前の上限が初乗1.011km 500円・232mごと90円で、改定で初乗距離を短くし加算額を100円に上げました(中部運輸局 2025年9月11日発表)。大阪地区の改定前の上限は1.3km 600円・260mごと100円でした(近畿運輸局 2025年10月6日発表)。
大型車・特定大型車には別の運賃があり、上限と下限の間にも「B運賃」などの段階が定められています。
割増・割引・料金|深夜早朝2割、迎車料金と変動迎車料金
国土交通省の通達が定める割増・割引・料金の主なルールは次のとおりです。
| 種類 | 通達の定め |
|---|---|
| 深夜早朝割増 | 原則22時以降5時までの運送に適用、割増率2割。距離を短く刻む「距離短縮方式」 |
| 冬期割増 | 地方運輸局長が指定する期間・地域で2割以内 |
| 大型車・特定大型車割増 | 地域の実情にあわせて定める。普通車の運賃額に割増相当額を加算 |
| 公共的割引 | 身体障害者手帳・療育手帳を持つ人は1割。精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳・戦傷病者手帳は事業者の申請に基づき1割 |
| 遠距離割引 | 基準額を超える部分に一定割合を掛けて割引。区切りは原則1,000円単位、割引率は1割単位 |
| 営業的割引 | クーポン券割引、利用回数・金額割引など需要喚起が目的の割引 |
| 待料金 | 旅客の都合で待機した場合。額は加算運賃額 |
| 迎車回送料金 | 1車両1回ごとの定額、または発車地点から「迎車」でメーターを入れる実車扱い(初乗運賃額が限度) |
| サービス指定予約料金 | 時間指定配車料金・車両指定配車料金。1車両1回ごとの定額 |
大型車割増などを除く割増は、2つ以上の条件に当てはまっても重ねられず、高い率だけを使います。深夜早朝割増は、同じ距離を走っても売上が2割多くなる時間帯がある、ということです。夜の勤務の売上の出方はタクシーの夜勤と日勤の違いで触れています。
変動迎車料金|需要に応じて迎車料金を変える仕組み
現行の通達(2023年6月27日改正まで)では、定額の迎車回送料金に「需要に応じて料金を設定するもの」も含まれています。1回ごとの上限は「初乗運賃額又は認可済みの定額の迎車回送料金のうちいずれか低額な方(基準料金額)にその3倍増の額を加えた額まで」とされ、一定期間の平均の迎車回送料金が基準料金額と一致するように変動させ、定期的に地方運輸局長へ報告することが求められています。変動の仕組み(平日の何時から何時はいくら、など)は、営業所・ホームページ・車内・配車アプリで利用者に分かりやすく周知しなければなりません。
事前確定運賃|アプリで乗る前に運賃が決まる仕組み
事前確定運賃は、2019年(平成31年)4月26日付けの国土交通省の通達で認可申請の取扱いが定められた運賃です。配車アプリなどの電子地図で、旅客が入力した乗車地点と降車地点の間の推計走行距離から距離制運賃(時間距離併用制を除く)を計算し、地方運輸局長等が定めた係数(平準化係数)を掛けて1円単位を四捨五入して乗車前に金額を確定します。国土交通省の資料「タクシーの運賃・料金について」は、東京の係数を1.21と例示しています。
乗務員の側から見た主なルールは次のとおりです。
- 旅客に示した走行予定ルート(または主要経由地点)を原則として外れずに運送する。
- 旅客の都合でルートを変える場合は、その時点で事前確定運賃の運送を終え、そこから新たに距離制運賃か事前確定運賃で運送を始める。
- 運転者が交通規制などでルートを変えるときは旅客の同意を得て、運賃は事前確定運賃額のまま。
- 割増と各種割引は事前確定運賃にも適用し、料金は運賃と区分して受け取る。
- メーターを使う場合は乗車地点で「実車」にしてカバー等で覆う。荒天や大規模な交通規制で実施が難しいときは適用しない。
需給に応じて金額を変える「事前確定型変動運賃」もあり、通達では事前確定運賃の5割増から5割引の範囲内で10円単位で設定し、変動させた運賃の平均額が運賃幅に収まるようにすることとされています。導入した事業者は事前確定運賃をすべて変動運賃にし、両方を併用することはできません。国土交通省の資料では、制度導入後のモニタリング期間中は、運賃幅に収まっているかを確認するため3か月ごとに実績を求めるとしています。
運賃改定と乗務員の収入|東京は2022年と2026年に改定
運賃の改定は、地域の事業者から改定の申請(要請)が出され、地方運輸局が原価を査定して新しい運賃を公示する流れで行われます。関東運輸局の発表によると、東京都特別区・武三地区では次の改定がありました。
| 公示日 | 実施日 | 改定率 | 普通車上限運賃(初乗・加算) |
|---|---|---|---|
| 2022年10月11日 | 2022年11月14日 | 14.24% | 1.096km 500円・255mごと100円(2026年4月改定前の運賃) |
| 2026年3月19日 | 2026年4月20日 | 10.14% | 1.0km 500円・232mごと100円 |
2026年の改定について関東運輸局は、2025年7月から改定要請が行われていたこと、改定で「物価高騰に対応するとともに、タクシー運転者の労働環境の改善・人材確保を図ること」を目的としていることを示しています。全国の改定の状況(改定したブロック数など)はタクシー不足の現状にまとめています。
運賃は売上を通じて歩合給につながる
運賃改定の査定資料を見ると、運賃と乗務員の賃金の結びつきが分かります。関東運輸局が公表した特別区・武三地区の算定根拠(原価計算対象事業者30社)では、改定後の平年度の運送原価のうち運転者人件費が70.8%を占めています。中部運輸局(名古屋地区)と近畿運輸局(大阪地区)は査定の考え方として、改定要請の主な理由の一つが運転者の労働条件の改善であることを踏まえ、「実績における運送収入に対する運転者人件費の割合を維持した上で、健全な経営が成立する水準の運賃を設定する」としたうえで、各地のタクシー協会に運転者の労働条件の改善措置を講じるよう指導するとしています。
多くの会社で乗務員の賃金は固定給と歩合給の組み合わせで、歩合給は売上(運送収入)をもとに計算されます。ただし歩合率や配分の方法は会社の賃金規程で決まり、運賃が上がった分がそのまま賃金に上乗せされるとは限りません。歩合給の仕組みと年収の上げ方はタクシー運転手の年収を上げる方法、入社直後の収入を支える制度はタクシーの給与保証の仕組みで解説しています。
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出典・一次情報
本記事の制度と数字は、次の公表資料に基づいています(いずれも2026年10月閲覧)。
- e-Gov法令検索「道路運送法」第9条の3 laws.e-gov.go.jp/「特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法」第16条・第16条の3・第16条の4 laws.e-gov.go.jp
- 国土交通省自動車局長通達「一般乗用旅客自動車運送事業の運賃及び料金に関する制度について」(平成13年10月26日 国自旅第100号、令和5年6月27日改正まで) mlit.go.jp(PDF)
- 国土交通省自動車局長通達「一般乗用旅客自動車運送事業の事前確定運賃に関する認可申請の取扱いについて」(平成31年4月26日 国自旅第31号、令和5年6月27日改正まで) mlit.go.jp(PDF)
- 国土交通省「タクシーの運賃・料金について」(検討会参考資料1、公表年月の記載なし) mlit.go.jp(PDF)/「タクシーの運賃制度について」(資料2) mlit.go.jp(PDF)
- 関東運輸局 プレスリリース「令和8年4月20日より東京都特別区・武三地区のタクシー運賃が変わります。」(2026年3月19日) wwwtb.mlit.go.jp(PDF)/「令和8年3月16日より東京都多摩地区、神奈川県京浜地区及び相模・鎌倉地区、埼玉県、千葉県、群馬県のタクシー運賃が変わります。」(2026年2月13日) wwwtb.mlit.go.jp(PDF)
- 中部運輸局「名古屋地区タクシーの運賃改定について」(2025年9月11日) wwwtb.mlit.go.jp(PDF)/近畿運輸局「大阪地区のタクシー運賃改定について」(2025年10月6日) wwwtb.mlit.go.jp(PDF)
- 東京タクシーセンター掲載「タクシー運賃の改定について(東京都23区・武蔵野市・三鷹市)」(東京ハイヤー・タクシー協会、2026年4月) tokyo-tc.or.jp(PDF)
運賃の変更について
運賃は地域・車種・事業者によって異なり、改定されることがあります。表の数字は各運輸局の公表時点の上限・下限運賃で、各社が実際に適用している運賃や迎車料金は、各社の公表と車内表示で確認してください。



