タクシーの夜勤と日勤の違い|結論
この記事の結論
タクシーの勤務形態は、厚生労働省の改善基準告示上は「日勤」と「隔日勤務」の2つです。いわゆる夜勤(夜日勤)は日勤の一種で、昼日勤と同じ基準が適用されます。
日勤は1か月の拘束時間288時間以内・1日13時間以内(上限15時間)・休息期間は継続11時間を基本に9時間以上。隔日勤務は1か月262時間以内・2暦日22時間以内(2回平均21時間以内)・休息期間は継続24時間を基本に22時間以上です(2024年4月1日適用)。
大手各社の採用ページの例では、隔日勤務は月12〜13回乗務で1回の拘束が17時間前後(休憩3時間を含む)、日勤は月24回前後の乗務です。全タク連は「売上が高い隔日勤務や深夜勤務」と記しており、夜の時間帯には労働基準法の深夜割増(2割5分以上)もかかります。
求人票には「隔日勤務」「昼日勤」「夜日勤」「日勤のみ」など様々な表記がありますが、法律上の区分と会社ごとの呼び方は一致していません。この記事では、まず厚生労働省の基準で勤務形態を整理し、次に大手タクシー会社の公式採用ページに載っている具体的な勤務時間の例を並べ、最後に収入の出方と向き不向きを考えます。
根拠は、厚生労働省「タクシー・ハイヤー運転者の改善基準告示」のリーフレットと解説資料、労働基準法、全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)の賃金資料、各社の公式採用ページです。数字は公表資料にあるものだけを使っています。
3つの勤務形態の定義|隔日勤務・昼日勤・夜日勤
厚生労働省のハイヤー・タクシー運転者向け改善基準告示の解説資料では、日勤勤務について「昼日勤・夜日勤の双方が対象」と明記しています。隔日勤務は「始業及び終業の時刻が同一の日に属さない業務」で、「2労働日の勤務を一勤務にまとめて行うものであり、深夜時間帯における公共交通機関としての役割を果たすタクシー業において、都市部を中心に広く採用されている勤務形態」と説明されています。
| 呼び方 | 改善基準告示上の区分 | 働き方のイメージ |
|---|---|---|
| 隔日勤務(隔勤) | 隔日勤務 | 朝から翌日未明まで1回で2日分を働き、翌日は「明け番(明け休)」で勤務なし |
| 昼日勤 | 日勤 | 朝から夕方など、日中を中心に1日単位で働く |
| 夜日勤(いわゆる夜勤) | 日勤 | 夜から翌朝など、夜間を中心に1日単位で働く |
解説資料は、隔日勤務の翌日は明け番となる趣旨について「連勤(明け番に勤務をさせること)を禁止する趣旨」と書いています。また「1人の自動車運転者について、日勤勤務と隔日勤務が頻繁に切り替わるような勤務形態とすることはできません。一定期間ごとに交替させるよう勤務割を作成する必要があります」としており、日によって隔日と日勤を行き来する働き方は認められていません。
拘束時間・休息期間・休日|改善基準告示の数字を比較
2024年(令和6年)4月1日から適用されている改善基準告示の内容を、日勤と隔日勤務で並べます。拘束時間は始業から終業までの時間で、休憩時間(仮眠時間を含む)も含まれます。休息期間は勤務と次の勤務の間の、使用者の拘束を受けない時間です。
| 項目 | 日勤(昼日勤・夜日勤) | 隔日勤務 |
|---|---|---|
| 1か月の拘束時間 | 288時間以内 | 262時間以内(地域的事情等があれば労使協定で270時間まで、年6か月まで) |
| 1回の拘束時間 | 1日13時間以内(延長する場合も上限15時間、14時間超は週3回までが目安) | 2暦日22時間以内、かつ2回の隔日勤務を平均し1回あたり21時間以内 |
| 休息期間 | 継続11時間以上を基本とし、9時間を下回らない | 継続24時間以上を基本とし、22時間を下回らない |
| 休日の扱い | 休息期間+24時間の連続した時間(9時間+24時間=33時間) | 休息期間+24時間の連続した時間(22時間+24時間=46時間) |
| 休日労働 | 2週間に1回が限度 | 2週間に1回が限度 |
| 改正前(2024年3月まで) | 1か月299時間、1日上限16時間、休息継続8時間以上 | 1か月262時間、2暦日21時間、休息継続20時間以上 |
改正で大きく変わったのは日勤の休息期間で、継続8時間から「11時間を基本、9時間以上」に延びました。隔日勤務は2暦日の拘束が21時間から22時間(2回平均21時間)に広がる一方、休息期間は20時間から「24時間を基本、22時間以上」に延びています。このほか時間外労働は、36協定の特別条項でも自動車運転の業務は年960時間以内です。なお人口30万人以上の都市に所在しない営業所などで、流し営業をほとんど行わない「車庫待ち等」の運転者には別の例外基準があります。
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求人一覧を見る大手各社の勤務例|公式採用ページに載っている時間
基準の範囲内で、実際にどのような時間割で働くのかは会社ごとに決まります。東京の大手3社の公式採用ページに載っている例を並べます。いずれも会社が「例」として示しているもので、営業所や時期で変わります。
| 会社 | 隔日勤務の例 | 日勤(昼・夜)の例 |
|---|---|---|
| 日本交通 | 1日の勤務は15.5〜18時間で、その間に3時間ほどの休憩・仮眠。勤務日の翌日は必ず休み | 一日の流れのページは隔日勤務の例のみ掲載 |
| 大和自動車交通 | 月12〜13回乗務、基本7:45〜翌1:00(休憩3時間)。ほかに出勤時間の違いで5種類の勤務体系 | 昼間勤務・夜間勤務は月24回乗務、1乗務7.125時間(例 6:45〜15:52、休憩2時間を含む)。グループの大和自動車交通吉祥寺は夜日勤 月20回、例 21:00〜翌7:00(休憩2時間) |
| 国際自動車(kmタクシー) | 1勤務15.5時間(例 8:00〜2:30、休憩3時間) | 1勤務7.75時間(例 7:00〜15:45、休憩1時間)。月の労働時間は170.5時間(年2回は186時間) |
大和自動車交通の採用FAQは、隔日勤務を「乗務と明け休を2〜3回繰り返したあと、休日を1日取る」スタイルと説明し、休日は月6〜7日、明け休を合わせると「月に18〜19日分を自分の時間に充てることが可能」としています。一方で同社は「1乗務あたり17時間15分(休憩3時間を含む)と長時間勤務」とも書いており、1回の勤務の長さと休みの多さが表裏一体であることがわかります。
収入の出方の違い|深夜割増と売上の立ちやすさ
勤務形態別の平均年収は、公表統計では区分されていません。そのため数字で直接比べることはできませんが、収入の出方を左右する要素は公表資料から確認できます。
- 深夜割増:労働基準法第37条は、午後10時から午前5時までの労働について、通常の労働時間の賃金の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払うよう定めています。夜日勤や隔日勤務は、勤務時間の一部または大部分がこの時間帯にかかります。
- 売上の立ちやすさ:全タク連は令和7年賃金構造基本統計調査の解説で、高齢層の賃金が下がる背景に「勤務形態の変化(売上が高い隔日勤務や深夜勤務から日勤への移行等)」を挙げています。業界団体が隔日勤務と深夜勤務を売上の高い勤務形態と位置づけていることになります。
- 年齢による変化:同資料の年齢別年間推計額は、55〜59歳4,813,500円、60〜64歳4,401,300円、65〜69歳3,790,500円と60歳以降に下がります。全タク連はこの背景に日勤への移行の影響がある可能性を指摘しています。
| 比べる点 | 隔日勤務 | 昼日勤 | 夜日勤 |
|---|---|---|---|
| 月の乗務回数(大手の例) | 12〜13回 | 20〜24回程度 | 20〜24回程度 |
| 深夜割増の対象時間 | 未明までの勤務で発生 | 原則かからない | 勤務の中心が対象時間 |
| 全タク連の記述 | 売上が高い勤務形態 | 高齢層の移行先として言及 | 深夜勤務は売上が高い |
| 休息・休日 | 明け番+休日、休日は46時間 | 毎日の休息11時間基本、休日は33時間 | 同左 |
注意したいのは、どの勤務形態でも賃金は歩合給中心で、売上とともに会社の賃金規程(歩合の配分、深夜手当の計算方法)で支給額が決まる点です。同じ「夜日勤」でも会社によって手取りは変わるため、面接では勤務形態ごとの給与例を出してもらうのが確実です。年収を上げる考え方はタクシー運転手の年収を上げる方法、地域別の水準は都道府県別の年収で整理しています。
夜の勤務で知っておきたいこと|防犯と体調管理
全タク連の広報誌「TAXI TODAY in Japan 2026」は、警察庁調べのタクシー強盗の認知・検挙件数のグラフとともに「タクシーを対象とした強盗事件は夜間帯を中心に発生しています」と記しています。業界では防犯仕切板、防犯カメラ、緊急通報システムの設置や、乗務員への防犯マニュアルの携行、警察の協力による防犯訓練を進めているとしています。会社の例では、大和自動車交通が全車にドライブレコーダーを搭載し、緊急通報システムで無線配車センターに通報が入る仕組みを、日本交通がドライブレコーダーと緊急通報システムの設置を採用ページで説明しています。
体調面では、旅客自動車運送事業運輸規則第24条により、乗務前後の点呼で酒気帯びの有無(アルコール検知器を使用)と、疾病・疲労・睡眠不足など安全に運転できないおそれの有無が確認されます。夜日勤や隔日勤務を選ぶ場合は、明けの日や休日の睡眠の取り方を含めて生活リズムを組み立てることが前提になります。
どの勤務形態が向いているか|選び方の目安
ここまでの公表情報をもとに、選ぶときの目安を整理します。最終的には体力・家庭の事情・収入目標で判断してください。
- 隔日勤務が合いやすい人:1回の勤務が長くても、明け番と休日でまとまった自由時間がほしい人。売上が立ちやすい深夜帯を含めて働きたい人。大和自動車交通の例では月に18〜19日分を自分の時間に充てられるとしています。
- 昼日勤が合いやすい人:家族と生活リズムを合わせたい人、夜間の運転を避けたい人、隔日勤務の長時間に不安がある人。大和自動車交通は「隔日勤務に不安がございましたら、まずは昼間勤務・夜間勤務から」と案内しています。
- 夜日勤が合いやすい人:1回の勤務は短くしたいが、深夜割増のかかる時間帯で働きたい人。昼間に別の予定がある人。
求人は勤務形態で絞り込めます。隔日勤務の求人、日勤のみの求人、夜勤ありの求人から探し、未経験の方は未経験歓迎の求人もあわせて確認してください。1日の具体的な仕事の流れはタクシー運転手の仕事内容と1日の流れで紹介しています。
出典・一次情報
本記事の数字と制度の記述は、次の公表資料に基づいています(いずれも2026年10月13日閲覧)。
- 厚生労働省「タクシー・ハイヤー運転者の改善基準告示」リーフレット(2024年12月) mhlw.go.jp(PDF)
- 厚生労働省 自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト「ハイヤー・タクシー運転者 令和6年4月改正改善基準告示版」解説資料 driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp(PDF)
- e-Gov法令検索「労働基準法」(第37条) laws.e-gov.go.jp/「旅客自動車運送事業運輸規則」(第24条) laws.e-gov.go.jp
- 一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」(令和8年5月、2026年10月訂正版) taxi-japan.or.jp(PDF)/「TAXI TODAY in Japan 2026」 driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp(PDF)
- タクシー会社の公式採用ページ:日本交通 一日の流れ・Q&A/大和自動車交通 採用よくあるご質問・未経験者中途採用 募集要項/国際自動車 kmタクシー採用サイト



