タクシー運転手の年収の中央値|結論

この記事の結論

タクシー運転手の「年収の中央値」は公表されておらず、公表統計から計算することもできません。
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」で中央の値(中位数)が公表されているのは、6月分の所定内給与(月額)だけで、タクシー運転者は286,300円です。平均の306,400円より20,100円低く、少数の高い人が平均を押し上げている分布です。
男性は288,600円、女性は247,300円。企業規模1,000人以上は321,700円、10〜99人は236,800円。前年(令和6年)の262,000円から24,300円上がりました。
所定内給与の中位数を12倍すると343万5,600円ですが、深夜手当などの超過労働給与と賞与を含まないため、年収の中央値ではありません。

「平均年収は高く見えるけれど、実際の真ん中の人はいくらなのか」。タクシー運転手の年収を調べると、この疑問に行き着きます。歩合給が中心のタクシーは、平均と中央値の差が大きくなりやすい職種だからです。

この記事では、e-Stat(政府統計の総合窓口)の賃金構造基本統計調査の表と、全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)の集計を使い、公表統計で中央値として出せる数字と、出せない数字を分けて整理します。

年収の中央値が出せない理由

中央値(中位数)は、全員を金額の低い順に並べたときにちょうど真ん中に来る人の値です。計算するには一人ひとりの金額か、金額ごとの人数の分布が必要です。

賃金構造基本統計調査で金額の分布(階級別の労働者数と、十分位数・四分位数・中位数)が職種別に公表されているのは「所定内給与額」だけです。所定内給与は6月分の「きまって支給する現金給与額」から、時間外・深夜・休日の手当などの超過労働給与を除いたものです。年収を組み立てるのに必要な残りの2つ、超過労働給与と年間賞与は平均値しか公表されていません。

全タク連がよく引用される「年間推計額」(全国平均450万8,200円)も、「月間給与×12+年間賞与」を平均値どうしで計算したものです。平均値は足し算できますが、中央値は足し算できません。所定内給与の中位数に手当や賞与の平均を足しても、年収の中央値にはなりません。このため本記事では、年収の中央値を推計した数字は載せていません。

所定内給与の分布|中位数286,300円、上位10%は466,000円以上

e-Statの令和7年調査(2025年6月分、企業規模10人以上)の「職種(小分類)、所定内給与額階級別労働者数及び所定内給与額の分布特性値」から、タクシー運転者の分布特性値を前年と並べます。

分布特性値令和7年令和6年増減
第1・十分位数(下から10%)174,700円166,500円+8,200円
第1・四分位数(下から25%)212,200円202,200円+10,000円
中位数(真ん中)286,300円262,000円+24,300円
第3・四分位数(上から25%)371,400円353,200円+18,200円
第9・十分位数(上から10%)466,000円431,600円+34,400円
十分位分散係数0.510.51-
推計労働者数170,210人150,510人-

同じ表で所定内給与が月20万円未満の人は推計で約12.3%、40万円以上は約19.1%です。全タク連は、144職種の中でタクシー運転者の第1十分位数は134位(最下位に近い水準)、中位数は79位、第9十分位数は58位(上位4割の水準)と順位づけし、「賃金分布は下方・上方双方に幅広く広がる構造」で、平均値のみで評価するのは適当ではないとしています。

平均と中位数の差は20,100円

令和7年の所定内給与の平均は306,400円、中位数は286,300円です。平均が中位数より高いのは、上の方に金額の大きい人が一定数いて平均を引き上げているためです。e-Statの同じ表では、所定内給与が月80万円以上の人も推計で約1,000人いますが、こうした人は平均には大きく効く一方、中位数にはほとんど影響しません。「平均年収」の数字から自分の収入をイメージする場合は、平均より低いところに真ん中の人がいることを前提にしてください。

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男女別・企業規模別の中位数

e-Statの職種(特掲)・性別の表と、企業規模別の表から、タクシー運転者の所定内給与の中位数を抜き出しました(令和7年)。

区分中位数第9・十分位数推計労働者数
男女計286,300円466,000円170,210人
男性288,600円469,300円159,940人
女性247,300円377,600円10,270人
企業規模1,000人以上321,700円494,500円6,870人
企業規模100〜999人311,600円485,800円106,100人
企業規模10〜99人236,800円377,300円57,240人

企業規模による差が大きく、1,000人以上と10〜99人では中位数に84,900円の開きがあります。女性は推計人数が少なく、標本の誤差が大きくなりやすい点に注意してください。女性の働き方については女性タクシードライバーの記事も参照してください。

他の運転の仕事との比較|タクシーは「ばらつき」が最も大きい

同じ表で、他の運転職の所定内給与の分布特性値と比べます。十分位分散係数は分布の広がりを示す指標で、大きいほど上下の差が大きいことを表します。

職種第1・十分位数中位数第9・十分位数十分位分散係数
タクシー運転者174,700円286,300円466,000円0.51
営業用大型貨物自動車運転者211,400円296,200円409,000円0.33
営業用貨物自動車運転者(大型車を除く)203,600円277,100円384,900円0.33
バス運転者200,200円257,900円333,800円0.26
乗用自動車運転者(タクシー運転者を除く)185,100円236,800円316,100円0.28

中位数ではタクシーはバスより高く、大型トラックより少し低い位置にあります。一方、上位10%の水準(第9十分位数)は5職種で最も高く、下位10%の水準(第1十分位数)は最も低くなっています。歩合給中心の賃金体系がこの広がりを生んでいると、全タク連も説明しています。

参考値の作り方|「所定内給与の中位数×12」は年収の中央値ではない

どうしても年額の目安が欲しい場合に作れるのは、所定内給与の中位数を12倍した値です。令和7年は286,300円×12=343万5,600円になります。ただしこの数字には次のものが入っていません。

  • 深夜・時間外・休日の手当(超過労働給与)。タクシー運転者の平均は月52,800円(月間給与359,200円−所定内給与306,400円)
  • 年間賞与。タクシー運転者の平均は197,800円
  • 6月以外の月の変動。歩合給は月ごとの売上で上下します

このため「年収の中央値は343万円」と書くのは誤りです。正しくは「所定内給与だけを12倍した参考値が343万5,600円で、実際の年収の中央値は公表統計からはわからない」となります。年収の平均や都道府県別の数字はタクシー運転手の年収(都道府県別)、月収の平均はタクシードライバーの平均月収にまとめています。

求人票の「年収例」を読むときのコツ

会社が公表する年収にも、平均・最高額・分布の中心と、いくつかの種類があります。たとえば国際自動車は募集要項で「年収ボリュームゾーン約433万円〜約687万円」と分布の中心を示し、日本交通は「未経験1年目の平均給与:年収580万円(2023年度実績)」と平均を示しています。最高額だけが書かれている場合は、真ん中の人の水準はそれより低いと考えるのが自然です。

求人を比べるときは、(1)平均か中央か最高額か、(2)対象者(全員か、何年目か、勤務形態は何か)、(3)いつの実績か、の3点をそろえてください。会社ごとの条件は大手タクシー会社の採用条件の比較、求人はタクシードライバー求人から探せます。

出典・一次情報

本記事の数字は次の公表資料に基づいています(いずれも2026年10月閲覧)。

  • 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」一般労働者・職種 第1表、第17表「職種(小分類)、所定内給与額階級別労働者数及び所定内給与額の分布特性値(産業計)」、第19表「職種(特掲)、性、所定内給与額階級別労働者数及び所定内給与額の分布特性値(産業計)」(2026年3月24日公開) e-stat.go.jp
  • 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」一般労働者・職種 第17表(2025年3月17日公開) e-stat.go.jp
  • 一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」(令和8年5月、2026年10月6日付の訂正版【最新版】):第1表・グラフ2 taxi-japan.or.jp(PDF)
  • タクシー会社の公式採用ページ:国際自動車 募集要項/日本交通 募集要項

数字の扱いについて

労働者数は標本調査からの推計値(10人単位)で、割合と増減は本記事で計算したものです。分布特性値は6月分の所定内給与で、年収ではありません。