タクシーの給与保証|結論

この記事の結論

給与保証は、歩合給が中心のタクシー会社が、入社直後の一定期間だけ月給(または年収)の下限を会社負担で約束する制度です。法律で義務づけられた「保障給」(労働基準法第27条、改善基準告示の通常の賃金の6割以上)とは別物で、内容は会社ごとに違います。
東京の大手5社の公式募集要項では、保証額は月30万〜40万円、期間は5〜12か月。日の丸交通は配属後12か月・月30万円、国際自動車は研修終了後6か月・月30万円(日勤23万円)、帝都自動車交通は配属後5か月・月38万円、大和自動車交通は乗務開始後12か月・年収400万円相当(特別武三交通圏)です。
比べるときは「いつから数えるか(入社・研修終了・配属・乗務開始)」「月給か年収か」「対象(未経験者限定か)」「定員や適用期限」の4点をそろえて読むことが大切です。

タクシー会社の求人広告には「月収○万円保証」という文言がよく載っています。歩合給の仕事に未経験から入る人にとって、慣れるまでの収入の下支えがあるのは大きな安心材料です。一方で、保証の期間・起算日・条件は会社によってまったく違い、見出しの金額だけでは比較できません。

この記事では、法律上の「保障給」との違いを整理したうえで、日本交通・国際自動車・大和自動車交通・帝都自動車交通・日の丸交通の公式採用ページに書かれている保証の内容を同じ項目で比べます。数字はすべて公式ページと官公庁・全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)の公表資料からの転記で、確認できない条件や口コミは書いていません。

給与保証とは|歩合給と「3つの下支え」の関係

タクシー運転者の賃金は、売上(営業収入)に応じて決まる歩合給が中心です。全タク連の資料はタクシーの賃金制度を「B型賃金における最低保証額」「A型及びAB型賃金におけるベースアップ」と表現しており、固定給と歩合の組み合わせ方が会社ごとに違います。日の丸交通のように採用Q&Aで「給与体系は完全歩合給となっており、基本給はございません。ただし、時間外や深夜の手当などは法定通り別途支給」と明記している会社もあります。

歩合給の運転者の収入を下から支える仕組みは、法律によるものと会社独自のものを合わせて3層あります。

仕組み根拠期間内容
最低賃金最低賃金法常に適用歩合給でも地域別最低賃金を下回ってはならない。全タク連は「歩合給制度では最低賃金は保障として機能するにとどまる」と説明
出来高払制の保障給労働基準法第27条、改善基準告示常に適用労基法は「労働時間に応じ一定額の賃金の保障」を義務づけ、改善基準告示は固定的給与と併せて通常の賃金の6割以上の保障給を定めるよう求める
会社の給与保証各社の賃金規定・募集要項入社後の一定期間(例:5〜12か月)売上にかかわらず月給や年収の下限を会社が約束する。対象・金額・期間は会社ごと

求人広告の「保証」は3つ目の会社独自の制度を指します。上の2つは法律上どの会社でも適用されるもので、会社の給与保証の期間が終わった後もなくなりません。

改善基準告示の保障給|「通常の賃金の6割以上」の計算式

厚生労働省のパンフレット「タクシー・ハイヤー運転者の労働時間等の改善基準のポイント」では、歩合給制度が採用されている場合には「労働時間に応じ、固定的給与と併せて通常の賃金の6割以上の賃金が保障されるよう保障給を定めなくてはなりません」とされています。1時間当たりの保障給の下限は「通常の賃金÷算定期間における通常の労働時間×0.6」で計算します。ここでいう通常の賃金は、各人の標準的な能率で通常の労働時間を満勤した場合に得られると想定される賃金額(臨時の賃金と賞与を除く)です。

累進歩合制度は禁止|「トップ賞」「奨励加給」も対象

同じパンフレットは、長時間労働やスピード違反を極端に誘発するおそれがあるとして累進歩合制度の廃止を求めています。売上に応じて歩合率が段階的に上がる「累進歩合給」のほか、ごく一部しか達成できない売上を達成した人だけに支給する「トップ賞」、売上の区分に達するごとに一定額を加算する「奨励加給」も該当し、認められません。年次有給休暇を取った運転者の賃金を減らすことも禁止されています(労働基準法附則第136条)。

大手5社の給与保証を比較|金額・期間・起算日・対象

東京の大手タクシー会社5社が公式採用ページに載せている給与保証を、同じ項目で並べました(2026年10月閲覧)。

会社保証額期間・起算対象・条件の記載研修中の給与
日本交通月40万円(3か月)、その後月35万円(9か月)入社から計12か月募集要項に記載。ただし採用サイトのトップには「2023年9月入社者までの適用となります」との注記あり配属前の研修期間中は日給1万円+交通費
国際自動車月30万円(日勤は月23万円)研修終了後6か月募集要項に「月給補償制度」と記載基礎研修期間中(第二種免許取得など約1か月)は日給1.2万円+交通費(3万円以内実費)
大和自動車交通年収400万円相当(特別武三交通圏)、340万円相当(北多摩交通圏)、300万円相当(昼日勤)乗務開始後12か月未経験者が対象。「定員に達しましたら終了」と記載研修中は日給1万円(交通費支給)
帝都自動車交通月給38万円配属後5か月未経験者が対象教習期間中も給与を支給(金額の記載なし)
日の丸交通月給30万円営業所配属後12か月募集要項に「賃金保証制度」と記載。給与体系は完全歩合給研修期間中は日給1万円(実働8時間)

保証期間中の保証額を単純に合計すると、日本交通は435万円(40万円×3か月+35万円×9か月)、日の丸交通は360万円(30万円×12か月)、帝都自動車交通は190万円(38万円×5か月)、国際自動車は180万円(30万円×6か月、隔日勤務の場合)です。大和自動車交通は年収表示で、特別武三交通圏の場合は12か月で400万円相当です。期間の長さが違うため、月額だけでなく「何か月分か」で見ると印象が変わります。

各社の求人は日本交通、国際自動車、大和自動車交通、帝都自動車交通、日の丸交通の会社別ページにまとめています。

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給与保証の読み方|比べる前にそろえる4つの項目

上の表のとおり、同じ「保証」でも書き方がばらばらです。比べる前に次の4点をそろえてください。

1. 起算日|入社・研修終了・配属・乗務開始のどこから数えるか

日本交通は「入社3ヶ月」、国際自動車は「研修終了後6ヶ月」、帝都自動車交通と日の丸交通は「配属後」、大和自動車交通は「乗務開始後」と書いています。入社後は二種免許の取得と社内研修の期間があり、国際自動車は基礎研修を約1か月、日の丸交通は約2か月の研修と説明しています。研修期間は日給制(1万〜1.2万円)になる会社が多いため、「入社から」数える保証は研修期間を含み、「配属後」「乗務開始後」の保証は研修期間を含まない、という違いが生まれます。二種免許の取得と研修の流れは二種免許の養成制度で解説しています。

2. 月給か年収か、勤務形態で金額が変わるか

大和自動車交通は「年収400万円相当」と年収で示し、営業区域(特別武三交通圏・北多摩交通圏)と勤務形態(昼日勤)で金額を分けています。国際自動車も隔日勤務30万円・日勤23万円と勤務形態で分けています。隔日勤務の仕組みはタクシーの隔日勤務を参照してください。保証が月給の場合、賞与の扱いがどうなるかは各社の公開ページには書かれていないため、面接で確認が必要です。

3. 対象者と定員・適用期限

大和自動車交通と帝都自動車交通は「未経験者」を対象と明記し、大和自動車交通は「定員に達しましたら終了いたします」としています。日本交通は募集要項に保証を載せる一方、採用サイトのトップに「2023年9月入社者までの適用となります」と注記しており、現在の入社者に同じ条件が適用されるかは公開情報だけでは確認できません。保証は会社の判断で変更・終了できる任意の制度なので、応募時点の条件を書面で確認することが欠かせません。

4. 公開されていない条件|出勤日数・乗務回数・差額の計算

5社とも、公式ページには保証を受けるための出勤日数・乗務回数の条件、欠勤した月の扱い、保証額と実際の歩合給の差額をどう計算するかまでは書いていません。これらは賃金規定で決まるため、面接では「所定の乗務回数を満たさなかった月はどうなるか」「保証額は総支給額か、手当を除いた額か」「保証期間中に歩合給が保証額を超えた月はどうなるか」を具体的に聞いてください。労働基準法第15条により、会社は労働契約の締結時に賃金・労働時間などの労働条件を明示しなければならず、明示された条件が事実と違う場合、労働者は即時に契約を解除できます。

保証が終わった後の収入|統計と各社の公表値で見る

保証期間が終わると、収入は売上と賃金制度で決まります。全タク連が厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」から集計した経験年数別の年間推計額は次のとおりです(全国、法人タクシーの雇用者)。

経験年数年間推計額145職種中の順位
0年371万円44位
1〜4年418万円54位
5〜9年407万円83位
10〜14年392万円108位
15年以上347万円139位

全国平均では、経験0年より1〜4年のほうが年収が高く、保証期間の後に収入が下がるとは限らないことが分かります。全タク連は、歩合給制度には経験年数に応じて段階的に昇給する仕組みが一般的にないため、勤続が長くなるほど年功賃金の職種に相対的に抜かれていくと説明しています。なお、この数字は全国の平均で、東京の年間推計額は570万3,500円(全国450万8,200円)です。都道府県別の数字はタクシー運転手の年収(都道府県別47表)にまとめています。

各社が公式ページに載せている収入の記載

参考までに、各社が採用ページに載せている収入の記載を転記します。会社ごとに集計の定義(対象者・期間・勤務形態)が違い、第三者が検証した数字ではない点に注意してください。

会社公式ページの記載
日本交通未経験1年目の平均給与:年収580万円(2023年度実績)。歩合率62%
国際自動車年収ボリュームゾーン約433万円〜約687万円(2025年度実績・隔日勤務の場合)
大和自動車交通平均年収470万円(採用Q&A)
日の丸交通配属直後の方でも平均月42万円。歩合率61.81%(2025年11月度)

統計の全国平均と各社の記載を見比べると、東京の大手では保証額(月30万〜40万円)を上回る収入例が示されています。ただし全タク連の資料が示すとおり、歩合給の職種は同じ平均でも分布の幅が広く、保証が終わった後の収入は本人の売上で大きく変わります。

応募前に確認したいこと|給与保証のチェックリスト

  1. 保証額と期間:月額か年額か、何か月か。勤務形態(隔日勤務・日勤)や営業区域で金額が変わるか。
  2. 起算日:入社日・研修終了日・配属日・乗務開始日のどれから数えるか。研修期間の給与(日給)はいくらか。
  3. 対象者:未経験者限定か、経験者も対象か。定員や適用期限があるか。
  4. 保証を受ける条件:月の乗務回数・出勤日数の条件、欠勤や有給休暇の月の扱い。
  5. 計算方法:歩合給が保証額に届かない月の差額の払い方、保証額に含まれる手当の範囲、賞与の扱い。
  6. 保証終了後の賃金制度:固定給の有無、歩合率、最低保証の額(B型賃金の場合)。
  7. 書面での確認:労働条件通知書や雇用契約書に保証の内容が書かれているか。

給与保証のある求人は給与保証ありの求人、未経験から始める人は未経験歓迎の求人と二種免許養成制度ありの求人で絞り込めます。タクシー全体の求人はタクシードライバー求人、気になる求人が見つかったら求職者登録から応募できます。

出典・一次情報

本記事の制度・数字は、次の公表資料に基づいています(いずれも2026年10月13日閲覧)。

保証の内容は変わります

給与保証は各社が任意で設ける制度で、金額・期間・対象は予告なく変更・終了されることがあります。本記事の内容は閲覧日時点の公式ページの記載です。応募前に必ず最新の募集要項と労働条件通知書で確認してください。