タクシーと宅配ドライバーどっち?|結論
この記事の結論
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では、タクシー運転者の年収(推計)は約451万円、宅配を含む「営業用貨物自動車運転者(大型車を除く)」は約449万円で、平均はほぼ同じです。
違いは中身にあります。タクシーは賞与が年19万7,800円と少なく月給中心で、所定内給与の上位10%と下位10%の開きが大きい(十分位分散係数0.51)のに対し、貨物は賞与が年38万5,100円あり、開きは0.33にとどまります。
経験年数別では、タクシーは経験0年でも所定内給与30万7,000円と高めで、貨物は0年の25万7,200円から15年以上の30万6,600円へ上がっていく形です。
労働時間のルール(改善基準告示)は、タクシーの日勤が1か月288時間・隔日勤務が262時間、トラックは1か月284時間・1年3,300時間が上限です。始めるのに必要な免許は、タクシーが普通二種、宅配は車の大きさにより普通免許または準中型免許です。
「人を乗せる仕事」と「荷物を運ぶ仕事」は、どちらも運転が中心で未経験歓迎の求人が出ており、転職先として比べられることがよくあります。ただ、求人票の「月収〇〇万円可」だけでは、給与の決まり方や働く時間の上限の違いは見えません。
この記事では、厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和7年)の職種別の表、厚生労働省の改善基準告示、国土交通省の貨物軽自動車運送事業の安全対策、警察の運転免許の案内という一次情報だけで、タクシー運転手と宅配ドライバーの違いを整理します。口コミや「平均〇〇万円と言われています」といった出どころの分からない数字は使っていません。
比べる前に|統計の「宅配ドライバー」はどこに入っているか
賃金構造基本統計調査には「宅配ドライバー」という職種はありません。荷物を運ぶ運転者は次の3つに分かれており、宅配便の集配で使われる2トン車や軽自動車の運転者は、主に「営業用貨物自動車運転者(大型車を除く)」に入ります。この記事では、この職種を宅配ドライバーに最も近い統計として扱います。
| 統計上の職種 | 内容の目安 | 労働者数(推計) |
|---|---|---|
| タクシー運転者 | タクシーで旅客を運ぶ運転者 | 約17万210人 |
| 営業用貨物自動車運転者(大型車を除く) | 運送会社で中型・小型トラックなどを運転する人。宅配の集配もここが中心 | 約45万1,640人 |
| 営業用大型貨物自動車運転者 | 運送会社で大型トラックを運転する人 | 約47万1,570人 |
| 自家用貨物自動車運転者 | 運送会社以外(製造業・小売業など)で自社の荷物を運ぶ人 | 約6万850人 |
注意したいのは、この統計が事業所に雇われている労働者を対象にしている点です。軽貨物の宅配では、運送会社と業務委託契約を結んで個人事業主として働く形もありますが、その人たちの収入はこの数字に含まれていません。以下の比較は「運送会社に正社員などとして雇われて働く場合」と「タクシー会社に雇われて働く場合」の比較です。
なお、宅配の仕事量の背景として、国土交通省の調べでは令和6年度の宅配便の取扱個数は50億3,100万個(前年度比100.5%)で、そのうちトラック運送が49億2,600万個です。
賃金と労働時間の比較|年収はほぼ同じ、中身が違う
令和7年賃金構造基本統計調査(一般労働者・企業規模10人以上・男女計)の数字を並べます。年収(推計)は、全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)の集計と同じく「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で計算しています。
| 項目 | タクシー運転者 | 営業用貨物自動車運転者(大型車を除く) | 営業用大型貨物自動車運転者(参考) |
|---|---|---|---|
| 平均年齢 | 56.8歳 | 50.3歳 | 51.5歳 |
| 平均勤続年数 | 8.3年 | 11.6年 | 13.4年 |
| 月の労働時間(所定内+超過) | 192時間(169+23) | 199時間(173+26) | 208時間(175+33) |
| きまって支給する現金給与額(月) | 35万9,200円 | 34万1,700円 | 38万6,900円 |
| うち所定内給与額 | 30万6,400円 | 28万7,300円 | 30万6,300円 |
| 年間賞与その他特別給与額 | 19万7,800円 | 38万5,100円 | 42万9,600円 |
| 年収(推計) | 約450万8,200円 | 約448万5,500円 | 約507万2,400円 |
| 1時間あたり(月給÷労働時間・編集部計算) | 約1,871円 | 約1,717円 | 約1,860円 |
タクシーと中小型トラックの年収(推計)の差は2万円ほどで、平均で見ればほぼ同じ水準です。違いは次の3点です。
- 賞与の比重:タクシーは年19万7,800円、中小型トラックは年38万5,100円。タクシーは月々の給与(歩合を含む)で受け取る割合が大きい。
- 労働時間:タクシーのほうが月7時間短く、月給を労働時間で割った金額はタクシーのほうが高い。
- 年齢:タクシーは平均56.8歳で、中小型トラックより6.5歳高い。
タクシー運転者の年収は、全タク連の資料でも前年比8.7%増と大きく伸びています。全タク連はその背景として、最低保証額の上昇やベースアップに加え、令和4年以降の運賃改定やアプリ配車の利用増による売上の増加を挙げています。都道府県ごとの数字はタクシー運転手の年収(都道府県別)にまとめています。
タクシー運転手の求人をチェック
求人一覧を見る給与の散らばりと経験年数|タクシーは「最初から高め・個人差が大きい」
平均が同じでも、給与の決まり方が違えば一人ひとりの受け取り方は大きく変わります。賃金構造基本統計調査の「所定内給与額の分布特性値」で、下から10%・25%・50%(中位数)・75%・90%の位置にいる人の所定内給与額を比べます。
| 所定内給与額(月) | タクシー運転者 | 営業用貨物自動車運転者(大型車を除く) |
|---|---|---|
| 第1・十分位数(下から10%) | 17万4,700円 | 20万3,600円 |
| 第1・四分位数(下から25%) | 21万2,200円 | 23万4,400円 |
| 中位数(真ん中) | 28万6,300円 | 27万7,100円 |
| 第3・四分位数(上から25%) | 37万1,400円 | 32万7,400円 |
| 第9・十分位数(上から10%) | 46万6,000円 | 38万4,900円 |
| 十分位分散係数(大きいほど開きが大きい) | 0.51 | 0.33 |
真ん中の人どうしではタクシーが9,200円高い一方、下から10%の位置ではタクシーが2万8,900円低く、上から10%の位置ではタクシーが8万1,100円高くなっています。タクシーは売上に連動する歩合給の比重が大きいため、同じ職種の中での差が大きく出ます。全タク連も、歩合給制度では最低賃金は保障として働くにとどまり、売上に応じて賃金が変わるため、平均賃金だけでの単純比較には注意が必要だと説明しています。
経験年数別の所定内給与額|上がり方が逆になる
同じ調査の「職種(小分類)、性、経験年数階級別」の表から、今の職種での経験年数ごとの所定内給与額(月)と年間賞与を並べます(男女計)。
| 経験年数 | タクシー運転者 | 営業用貨物自動車運転者(大型車を除く) |
|---|---|---|
| 0年 | 30万7,000円(賞与2万1,900円) | 25万7,200円(賞与11万200円) |
| 1〜4年 | 33万円(賞与21万6,900円) | 26万1,700円(賞与24万3,700円) |
| 5〜9年 | 31万5,300円(賞与28万7,700円) | 28万4,100円(賞与36万1,200円) |
| 10〜14年 | 31万300円(賞与19万3,600円) | 28万6,600円(賞与32万9,500円) |
| 15年以上 | 27万3,600円(賞与18万6,100円) | 30万6,600円(賞与53万4,600円) |
タクシーは経験0年から30万円台で、1〜4年が最も高く、15年以上では下がります。中小型トラックは0年が最も低く、経験とともに所定内給与・賞与とも上がっていきます。全タク連は、歩合給制度では経験年数に応じて賃金が段階的に上がる仕組みが一般的でないこと、高齢層の賃金が低下する背景に勤務形態の変化(売上が高い隔日勤務や深夜勤務から日勤への移行等)があることを挙げています。入社直後の給与保証を設けるタクシー会社がある点はタクシーの給与保証の仕組みで解説しています。
60代以降の年収(推計)
年齢階級別の表から、50代後半以降の年収(推計)を計算すると次のとおりです。
| 年齢 | タクシー運転者 | 営業用貨物自動車運転者(大型車を除く) |
|---|---|---|
| 60〜64歳 | 約440万1,300円 | 約390万8,200円 |
| 65〜69歳 | 約379万500円 | 約348万9,200円 |
| 70歳以上 | 約347万5,900円 | 約327万4,800円 |
| 65歳以上が占める割合(労働者数) | 26.3% | 7.2% |
60歳以降はどの年齢階級でもタクシーのほうが年収(推計)が高く、65歳以上で働く人の割合もタクシーが26.3%と大きく上回ります。年齢を重ねてからの転職先としてタクシーが選ばれやすい背景がうかがえます。60代からの働き方は60代からのタクシードライバーにまとめています。
労働時間のルールの違い|改善基準告示はタクシーとトラックで別
トラック・バス・タクシーの運転者には、厚生労働大臣の告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)で拘束時間や休息期間の上限が決められています。2024年4月1日から改正後の基準が適用され、あわせて自動車運転の業務にも時間外労働の上限(臨時的な特別の事情がある場合でも年960時間)がかかるようになりました。
| 項目 | タクシー(日勤) | タクシー(隔日勤務) | トラック |
|---|---|---|---|
| 1年の拘束時間 | 定めなし(1か月で管理) | 定めなし(1か月で管理) | 3,300時間以内(労使協定で3,400時間まで) |
| 1か月の拘束時間 | 288時間以内 | 262時間以内(労使協定で年6か月まで270時間) | 284時間以内(労使協定で年6か月まで310時間。284時間超は連続3か月まで) |
| 1回(1日)の拘束時間 | 13時間以内(上限15時間、14時間超は週3回までが目安) | 2暦日22時間以内、かつ2回平均21時間以内 | 13時間以内(上限15時間、14時間超は週2回までが目安) |
| 休息期間 | 継続11時間を基本、9時間を下回らない | 継続24時間を基本、22時間を下回らない | 継続11時間を基本、9時間を下回らない(長距離運送の特例あり) |
| 運転時間 | - | - | 2日平均で1日9時間、2週平均で1週44時間まで。連続運転は4時間まで |
大きな違いは2つです。1つ目は、タクシーには「隔日勤務」という働き方があることです。1回の勤務が長い代わりに出勤は月11〜13回程度で、勤務明けは休み(明け休)になります。トラックの改善基準告示には隔日勤務の区分がなく、1日単位の勤務が基本です(隔日勤務の詳細はタクシーの隔日勤務とは)。2つ目は、トラックには運転時間と連続運転時間の上限があることです。
軽貨物の個人事業主にも勤務時間の決まりがある
国土交通省は、軽自動車による宅配需要の拡大と、事業用軽自動車の死亡・重傷事故が保有台数1万台当たりで平成28年から令和5年に約4割増えたことを受けて、2025年4月から貨物軽自動車運送事業者の安全対策を強化しました。国交省のリーフレットによると、主な内容は次のとおりで、一人で事業を行っている場合でも自ら実施する必要があるとされています。
- 営業所ごとに「貨物軽自動車安全管理者」を選任し、選任前の講習と2年ごとの定期講習を受ける(バイク便を除く)
- 初任運転者・65歳以上の運転者などへの特別な指導と適性診断
- 業務の記録(1年保存)、事故の記録(3年保存)、死傷事故などの国土交通大臣への報告
- 点呼、年1回の健康診断、運転者への指導監督
- 勤務時間:1年3,300時間・1か月284時間、1日13時間(上限15時間)、休息期間は継続11時間を基本に9時間を下回らない、など。一人で事業を行う場合は自らこの範囲で勤務時間を設定して守る
業務委託の軽貨物で働く場合は、配送の報酬だけでなく、こうした義務を自分で果たす前提で考える必要があります。
必要な免許と始め方の違い
タクシーでお客様を乗せて運賃をいただくには普通第二種免許が必要です。宅配ドライバーは第一種免許で運転できますが、2017年3月12日以降に取った普通免許で運転できるのは車両総重量3.5トン未満の車に限られます。
| 項目 | タクシー運転手 | 宅配ドライバー(雇用) |
|---|---|---|
| 必要な免許 | 普通第二種免許 | 車の大きさによる。軽自動車・車両総重量3.5トン未満は普通免許、3.5トン以上7.5トン未満は準中型免許(2017年3月11日までに取った普通免許は5トン未満まで) |
| 受験・取得の条件 | 原則21歳以上・普通免許等の経歴通算3年以上。受験資格特例教習を修了すれば19歳以上・1年以上 | 普通免許・準中型免許とも18歳以上 |
| 未経験からの入り方 | 入社後に会社負担で二種免許を取る「養成制度」を募集要項に記載する会社がある | 普通免許で運転できる車(軽自動車・3.5トン未満)の求人なら免許を取り直さずに始められる |
| そのほか | 地域によって運転者登録の講習・試験がある | 軽貨物の業務委託では、上記の安全対策を自分で行う |
タクシーは免許の条件が厳しい分、大手を中心に会社が取得費用を負担する養成制度を公表しています。費用の考え方は二種免許の費用と取り方、養成制度の中身はタクシー会社の二種免許養成制度、19歳からの特例は受験資格特例教習で解説しています。
どっちが向いているか|統計と制度から言えること
ここまでの一次情報から言えることを、判断の材料として整理します。どちらが「楽」「稼げる」と断定できるものではなく、自分が何を重視するかで選ぶものです。
| 重視すること | タクシーが合いやすい理由 | 宅配(中小型トラック)が合いやすい理由 |
|---|---|---|
| 収入の安定 | - | 賞与の比重が大きく、給与の散らばりが小さい(十分位分散係数0.33) |
| 工夫で収入を上げたい | 上位10%は所定内給与46万6,000円。歩合の比重が大きい | - |
| 未経験からの最初の給与 | 経験0年の所定内給与30万7,000円 | -(0年は25万7,200円) |
| 長く勤めて上げていく | - | 経験15年以上で所定内給与30万6,600円・賞与53万4,600円 |
| 体への負担・年齢 | 貨物の積み下ろし作業が仕事の中心ではない。65歳以上が26.3% | - |
| 出勤日数を減らしたい | 隔日勤務なら月11〜13回程度の出勤 | - |
| 免許の取りやすさ | - | 普通免許で始められる仕事がある |
どちらを選ぶ場合も、求人票では「月給の内訳(固定給と歩合・手当)」「賞与の有無と算定方法」「勤務形態ごとの拘束時間」「免許取得費用の負担」の4つを確かめると、統計の平均と自分の手取りのずれを小さくできます。異業種からの転職の進め方は異業種からタクシードライバーへの転職、未経験からの始め方は未経験からタクシードライバーになるにはを参考にしてください。
タクシーの求人はタクシードライバー求人から、未経験歓迎は未経験OKの求人、二種免許の取得支援がある求人は二種免許養成ありの求人、日勤だけの働き方は日勤のみの求人で探せます。
出典・一次情報
本記事の数字と制度は、次の公表資料に基づいています(いずれも2026年10月14日閲覧)。年収(推計)・1時間あたりの金額・割合は、各表の数字から編集部が計算したものです。
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」一般労働者・職種(職種(小分類)別 第1表、第5表、第14表、第17表)(2026年3月24日公表) e-stat.go.jp
- 一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」(令和8年5月、2026年10月6日付の訂正版【最新版】) taxi-japan.or.jp(PDF)
- 厚生労働省 自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト「トラック運転者の改善基準告示」 driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/「ハイヤー・タクシー運転者の改善基準告示」 同
- 厚生労働省「タクシー・ハイヤー運転者の労働時間等の改善基準のポイント」パンフレット mhlw.go.jp(PDF)
- 国土交通省「貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化するための制度改正について」 mlit.go.jp/リーフレット「貨物軽自動車運送事業者の安全対策が強化されました」 同(PDF)
- 国土交通省「宅配便等取扱個数の推移」(令和6年度) mlit.go.jp(PDF)
- 警視庁「大型二種・中型二種・普通二種免許試験」 keishicho.metro.tokyo.lg.jp/警察庁「第二種免許等の受験資格の見直しについて」 npa.go.jp
- 秋田県警察「準中型免許の新設」 police.pref.akita.lg.jp(PDF)/鳥取県警察「運転免許の種類と運転できる自動車の種類」 pref.tottori.lg.jp
数字の読み方について
賃金構造基本統計調査は毎年6月分の給与と前年1年間の賞与を調べた統計で、雇用されている労働者が対象です。業務委託で働く個人事業主の収入は含まれません。また、職種別の数字は全国・全年齢の平均で、地域・会社・勤務形態によって実際の給与は大きく異なります。



