60代のタクシー運転手|結論
この記事の結論
60代のタクシー運転者の年収(年間推計額)は、60〜64歳で440万1,300円、65〜69歳で379万500円、70歳以上で347万5,900円です(令和7年賃金構造基本統計調査・全国ハイヤー・タクシー連合会集計)。全産業は60歳を境に大きく下がるのに対し、タクシーは下がり方が緩く、65歳以上では製造業・卸小売業より高くなります。
定年は会社によって異なり、大和自動車交通は「定年60歳、健康状態などに問題がなければ最長75歳まで」、日本交通は募集要項で「65才選択定年制」「定年後も定時制雇用として68才まで雇用可」としています。週40時間未満の定時制乗務員は全国33,237人で、その85.7%が65歳以上です(2023年3月末)。
65歳以上の運転者には会社が適齢診断を受けさせる義務があり(国土交通省告示)、75歳以上は免許更新時に認知機能検査を受けます(警察庁)。
タクシー運転者の平均年齢は56.8歳(令和7年調査)で、60代は職場の中心的な年代のひとつです。日本交通は「65歳以上の乗務員が400名以上も勤務」、大和自動車交通は「65歳以上の元気な乗務員が大勢活躍しています」と採用ページに書いています。
この記事では、60代でタクシー運転手として働く・転職する場合に知っておきたい「年収」「定年と再雇用」「高齢運転者に課される制度」「働き方の選び方」を、全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)、東京タクシーセンター、厚生労働省、国土交通省、警察庁の資料と、各社の公式採用ページの記載だけで整理します。
60代の年収|60〜64歳440万円、65〜69歳379万円
全タク連「第2表」(年齢階級別給与比較)から、50代後半以降の数字を抜き出しました。年間推計額は「月間給与×12+年間賞与」で計算した額面の推計値です。
| 年齢階級 | タクシー運転者 月間給与 | 年間賞与 | タクシー運転者 年間推計額 | 全産業労働者 年間推計額 | 差(タクシー-全産業) |
|---|---|---|---|---|---|
| 55〜59歳 | 382,100円 | 228,300円 | 4,813,500円 | 6,413,500円 | -1,600,000円 |
| 60〜64歳 | 349,700円 | 204,900円 | 4,401,300円 | 5,062,700円 | -661,400円 |
| 65〜69歳 | 301,100円 | 177,300円 | 3,790,500円 | 4,017,200円 | -226,700円 |
| 70歳以上 | 278,800円 | 130,300円 | 3,475,900円 | 3,528,500円 | -52,600円 |
| 全年齢 | 359,200円 | 197,800円 | 4,508,200円 | 5,455,600円 | -947,400円 |
全産業は55〜59歳の6,413,500円から60〜64歳で5,062,700円へ135万円下がります。全タク連はこの急落の主な理由を「定年後の再雇用による賃金低下」と見ています。タクシー運転者は同じ区間で約41万円の低下にとどまり、全産業との差は160万円から66万円、65〜69歳では23万円、70歳以上では5万円まで縮まります。
主要産業と比べた「第3表」では、60歳以上で差がさらにはっきりします。
| 年齢階級 | タクシー運転者 | 製造業 | 建設業 | 卸・小売業 | 宿泊・飲食業 | 社会福祉・介護 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 60〜64歳 | 4,401,300円 | 4,791,100円 | 6,056,900円 | 5,195,500円 | 3,740,300円 | 4,050,000円 |
| 65〜69歳 | 3,790,500円 | 3,684,200円 | 4,726,400円 | 3,609,200円 | 3,057,500円 | 3,585,600円 |
| 70歳以上 | 3,475,900円 | 3,170,300円 | 3,965,300円 | 3,249,900円 | 2,597,400円 | 3,600,200円 |
65〜69歳ではタクシー運転者が製造業・卸小売業・宿泊飲食業・社会福祉介護を上回り、建設業だけが高い水準です。全タク連は「高齢になっても賃金が低下しづらい特徴があり、これは定年後再雇用による賃金低下が一般的な他産業と異なり、年齢による賃金カーブが生じにくい歩合給の構造に起因する」と説明しています。60代での転職先として、前職との収入差が小さくなりやすい職種だといえます。地域別の年収はタクシー運転手の年収(都道府県別)で確認できます。
60代で年収が下がる理由|勤務形態の変化
タクシー運転者の年収も60代では緩やかに下がります。全タク連は第2表の解説で、高齢層の若干の低下の背景に「勤務形態の変化(売上が高い隔日勤務や深夜勤務から日勤への移行等)」が影響している可能性を挙げています。歩合給なので、勤務時間を短くしたり、深夜の需要が多い時間帯を避けたりすれば、その分売上と賃金が下がる仕組みです。逆にいえば、年齢そのものではなく、どの勤務形態でどれだけ働くかで60代の収入が決まります。
定年と再雇用|法律のルールと各社の制度
高年齢者雇用安定法により、事業主には65歳までの雇用機会を確保する義務(65歳までの定年引上げ、継続雇用制度の導入、定年制の廃止のいずれか)があり、2021年4月からは70歳までの就業機会を確保する努力義務も加わりました(厚生労働省)。70歳までの定年引上げを義務づけるものではありません。タクシー会社の公式採用ページでは、定年と再雇用について次のように記載されています。
| 会社 | 定年 | 定年後 | 記載ページ |
|---|---|---|---|
| 大和自動車交通(タクシー乗務員) | 60歳 | 健康状態などに問題がなければ最長75歳まで働ける | 採用よくあるご質問 |
| 大和自動車交通(ハイヤー乗務員) | 60歳 | 健康状態などに問題がなければ最長70歳まで | 採用よくあるご質問 |
| 日本交通(タクシー乗務員) | 募集要項:65才選択定年制/よくある質問:60歳〜65歳のいずれかで本人の選択により設定可能 | 募集要項:定時制雇用として68才まで雇用可(400名以上が活躍)/よくある質問:シルバー人材としてその後も乗務することが選択可能 | 募集要項・よくある質問 |
定年後の再雇用は、期間を定めた有期契約になることがあります。2024年4月からは、有期労働契約の締結・更新時に「更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容」を明示することが義務づけられました(厚生労働省)。何歳まで、どの勤務形態で、どのような賃金で働けるのかを、労働条件通知書で確認しておきましょう。
定時制乗務員|全国33,237人、85.7%が65歳以上
全タク連は、定年退職者の継続雇用や新規採用を中心とする定時制乗務員(週所定労働時間が40時間未満の乗務員)の数を調査しています。2023年3月末の調査(回答事業者4,618社、回答率90.2%)では、全国の定時制乗務員は33,237人で、定時制乗務員を採用している事業者は2,899社(62.8%)でした。
| 区分 | 人数 | 定時制乗務員に占める割合 |
|---|---|---|
| 60〜64歳 | 1,839人 | 5.5% |
| 65〜69歳 | 7,009人 | 21.1% |
| 70〜74歳 | 13,604人 | 40.9% |
| 75歳以上 | 7,876人 | 23.7% |
| 週20時間未満 | 6,871人 | 20.7% |
| 週20時間以上30時間未満 | 15,814人 | 47.6% |
| 週30時間以上40時間未満 | 10,552人 | 31.7% |
定時制乗務員の最多は70〜74歳で、65歳以上が8割を超えます。週20〜30時間の働き方が半数近くを占め、フルタイムより短い時間で乗務を続ける人が多いことがわかります。なお定時制乗務員数は2013年3月の56,034人から減り続けており、2021年3月の41,096人から2023年3月の33,237人へは19.1%減でした。
タクシー運転手の求人をチェック
求人一覧を見る高齢の乗務員はどのくらいいるか
タクシー業界の年齢構成は、公表統計で次のように確認できます。
- 全国の平均年齢:タクシー運転者56.8歳(全産業44.4歳)。前年調査の60.2歳から3.4歳下がりました(令和7年賃金構造基本統計調査、全タク連集計)。
- 東京の登録運転者:東京23区・武蔵野市・三鷹市の法人の登録運転者67,486人の平均年齢は55.5歳、個人タクシーの事業者乗務証交付者8,460人の平均年齢は63.7歳(2026年8月末、東京タクシーセンター)。
- 女性乗務員:全国14,388人のうち65歳以上は2,196人(15.3%)、60〜64歳は1,742人(12.1%)(2026年3月末、全タク連)。
平均年齢は前年より下がったものの、全産業より12歳以上高い職種です。60代で入社しても、同年代の同僚が多い職場になりやすいといえます。
高齢運転者に関する制度|適齢診断と認知機能検査
事業用自動車の運転者には年齢に応じた追加の手続きがあります。国土交通省の「旅客自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」と警察庁の案内から整理しました。
| 年齢・場面 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 65歳に達した日以後1年以内 | 会社が適齢診断(高齢運転者のための適性診断として国土交通大臣が認定したもの)を1回受診させる。65歳以上を新たに運転者として選任した場合は、選任の日から1年以内 | 国土交通省告示第1676号 |
| 65歳から75歳まで | 3年以内ごとに1回、適齢診断を受診させる | 同上 |
| 75歳以上 | 75歳に達した日以後1年以内に1回、その後1年以内ごとに1回、適齢診断を受診させる | 同上 |
| 適齢診断の後 | 診断結果が判明してから1か月以内に、加齢に伴う身体機能の変化の程度に応じた安全な運転方法などを、運転者が自ら考えるよう指導する | 同上 |
| 個人タクシー事業者 | 許可の期限の更新日に65歳以上の場合、更新の申請の前に適齢診断を受診 | 同上 |
| 免許更新(75歳以上) | 更新期間満了日の年齢が75歳以上の人は認知機能検査等を受ける。満了日の6か月前から受検でき、対象者には通知が届く | 警察庁 |
| 一定の違反(75歳以上) | 信号無視などの一定の違反をした場合、臨時に認知機能検査が行われる | 警察庁 |
指針は、適齢診断の結果を踏まえて、運転者が加齢に伴う身体機能の変化を自覚できるよう、プライドを傷つけないよう配慮しながら話し合いをしつつ、きめ細かな指導を行うことを求めています。60代で入社した場合でも、65歳になれば会社の手配で診断を受けることになる、と理解しておけば十分です。
60代の働き方の選び方
60代でタクシー運転手として働く場合、収入と体への負担のバランスをどう取るかが選択のポイントになります。厚生労働省の改善基準告示(2024年4月から)の上限と、公式採用ページの記載をもとに整理します。
| 働き方 | 特徴 | 改善基準告示の上限・公式ページの記載 |
|---|---|---|
| 隔日勤務 | 1回の勤務は長いが、勤務の翌日は明け番。売上を上げやすいとされる | 2暦日22時間以内(2回平均21時間以内)、1か月262時間。大和自動車交通の例は月12〜13回乗務、7:45〜翌1:00(休憩3時間) |
| 日勤・昼間勤務 | 1回の勤務が短く、生活リズムを保ちやすい。全タク連は高齢層で隔日勤務から日勤への移行があり得るとしている | 1日13時間以内(上限15時間)、1か月288時間。大和自動車交通の昼間勤務は月24回乗務 |
| 定時制 | 週40時間未満。継続雇用の人に多く、週20〜30時間が半数近く | 全タク連調査で全国33,237人、採用事業者62.8%(2023年3月末) |
体力面について、日本交通はよくある質問で「タクシー乗務は1回の乗務が比較的長いですが、合間にしっかり休憩を取ることが可能」で、勤務翌日は明番として休める規則正しい仕事だと説明しています。改善基準告示では、日勤と隔日勤務を頻繁に入れ替えることは認められず、併用する場合は一定期間ごとに交替させる勤務割にするよう定められているため、勤務形態を変えたい場合は時期と条件を会社と相談することになります。
全タク連は、高齢者を安定的な人材供給源と位置づけ、高齢のタクシードライバーが長く活躍できるよう方策をまとめたガイドラインを作成したとしています。60代・シニア歓迎の求人は60代・シニア歓迎の求人、短い勤務の求人は日勤のみの求人で探せます。介護の資格や経験がある人は介護タクシー・福祉輸送ドライバー求人も選択肢です。転職の流れはタクシー運転手への転職ガイド、勤務の負担を統計で見た記事はタクシー運転手はきつい?統計で見る実態、二種免許の取り方は二種免許の費用と取り方にまとめています。
出典・一次情報
本記事の数字と制度の記述は、次の公表資料に基づいています(いずれも2026年10月13日閲覧)。
- 一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」【最新版】 taxi-japan.or.jp(PDF):第1表、第2表、第3表
- 一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「定時制乗務員数・新卒者乗務員採用状況」(令和5年3月末現在) taxi-japan.or.jp(PDF)/「令和7年度の女性乗務員数の状況について」 taxi-japan.or.jp(PDF)/「TAXI TODAY in Japan 2026(ドライバー不足の解消に向けて)」 taxi-japan.or.jp(PDF)
- 国土交通省「旅客自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」(平成13年国土交通省告示第1676号) mlit.go.jp(PDF)
- 警察庁「認知機能検査について」 npa.go.jp
- 厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」 mhlw.go.jp/パンフレット(簡易版) mhlw.go.jp(PDF)/「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」 mhlw.go.jp
- 厚生労働省「タクシー・ハイヤー運転者の改善基準告示」リーフレット(2024年12月) mhlw.go.jp(PDF)
- 公益財団法人東京タクシーセンター「センターニュース」2026年10月号 tokyo-tc.or.jp(PDF)
- タクシー会社の公式採用ページ:大和自動車交通 採用よくあるご質問・未経験者中途採用 募集要項/日本交通 募集要項・よくあるご質問



