タクシーの違反歴と採用|結論
この記事の結論
法令がタクシー運転者に求めているのは「二種免許を受けていて、その効力が停止されていないこと」で、違反の回数や点数を理由に一律に運転者になれないとする条文は、本記事で確認した法令にはありません。
ただし違反歴は、いくつかの場面で法令上の影響があります。免許停止中は乗務できず二種免許の受験もできない、免許取消し後は指定された1〜5年(悪質なものは3〜10年)の間は免許を受けられない、タクシー業務適正化特別措置法の運転者登録は40日以上の免許停止や免許取消しで消除される、といった点です。
また国土交通省の指導監督指針は、事業者が運転者を新たに雇い入れるときに、自動車安全運転センターの無事故・無違反証明書や運転記録証明書などで事故歴を把握するよう定めています。
違反歴を会社がどう評価するかは各社の判断で、法令には書かれていません。本記事では推測で書かず、応募先への確認をすすめます。
「過去に免許停止を受けたことがあるが、タクシー運転手になれるのか」「違反歴は採用で調べられるのか」という不安はよく聞かれます。しかし、会社ごとの採用基準を比べた公的なデータはなく、口コミや体験談で答えを決めることはできません。
そこでこの記事では、道路交通法、旅客自動車運送事業の運転者の要件を定めた政令、タクシー業務適正化特別措置法、国土交通省の告示、東京タクシーセンターと自動車安全運転センターの公式案内という一次情報だけを使い、違反歴が法令上どこに影響するかを整理します。
タクシー運転者の法令上の要件|政令の3項目
道路運送法第25条は、一般旅客自動車運送事業者は「年齢、運転の経歴その他政令で定める一定の要件を備える者でなければ、その事業用自動車の運転をさせてはならない」と定めています。この政令が「旅客自動車運送事業用自動車の運転者の要件に関する政令」(昭和31年政令第256号)で、要件は次の3つです。
| 号 | 要件(原文の要約) | 違反歴との関係 |
|---|---|---|
| 第1号 | 21歳以上(特例教習を修了した人は19歳以上) | なし |
| 第2号 | 普通自動車などの運転の経験が通算3年以上(政令で定める経験がある人は2年以上、特例教習を修了した人は1年以上) | 運転の経験は運転免許を受けた日以後に限られる |
| 第3号 | 運転する事業用自動車の種類に係る第二種運転免許を受けており、かつ、その効力が停止されていないこと | 免許停止中は要件を満たさない |
違反歴に直接関わるのは第3号です。免許停止の処分を受けている間は、二種免許を持っていても運転者の要件を満たさないため、タクシーを運転して旅客を運ぶことはできません。逆に言えば、この政令には「過去〇年間に違反がないこと」のような条件は書かれていません。
あわせて旅客自動車運送事業運輸規則第36条第1項は、日々雇い入れられる者、2か月以内の期間を定めて使用される者、試みの使用期間中の者(14日を超えて引き続き使用されるに至った者を除く)、14日未満の期間ごとに賃金の支払いを受ける者を運転者に選任してはならないとしています。これは雇用の形についての制限で、違反歴とは関係ありません。
違反歴が二種免許に与える影響|停止・取消し・受験資格
タクシー運転者になるには二種免許が必要なので、道路交通法上の処分が二種免許の取得・保有にどう影響するかが最も重要です。
| 場面 | 法令上の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 二種免許の受験資格の経歴 | 普通免許などを受けていた期間が通算3年以上必要で、免許の効力が停止されていた期間は除かれる | 道路交通法第96条第5項 |
| 免許停止中の受験 | 効力が停止されている人は「現に受けている者」に含まれず、受験できない | 同第96条第6項 |
| 免許取消し後 | 取消しの際に指定された期間は免許を受けられない。期間は1年以上5年以下、故意による死傷・危険運転致死傷等・酒酔い運転・救護義務違反などによる取消しは3年以上10年以下 | 同第88条第1項第3号・第103条第7項・第8項 |
| 試験に合格したあと | 運転に関する違反行為をした人などは、政令の基準に従い免許を与えない、又は6か月以内で保留することがある | 同第90条第1項第4号 |
| 運転者としての乗務 | 二種免許の効力が停止されている間は運転者の要件を満たさない | 運転者の要件に関する政令第3号 |
二種免許を取る前に免許停止を受けていた場合、その期間の分だけ経歴が短くなり、受験できる時期が後ろにずれます。免許取消しを受けた場合は、指定された期間が過ぎてから普通免許などを取り直し、あらためて受験資格を満たす必要があります。取消し前の期間を経歴として数えられるかどうかは個別の確認が必要なので、自動車安全運転センターの「運転免許経歴証明書」で経歴を確かめたうえで、住所地の試験場に問い合わせてください。受験資格の全体は二種免許の受験資格で解説しています。
19歳・20歳で取った人の「若年運転者期間」
受験資格特例教習(年齢の特例)で二種免許を取った人は、21歳になるまで「若年運転者期間」になります。警察庁の案内では、この期間に違反点数の合計が3点以上になると(1回の違反で3点の場合を除く)若年運転者講習(9時間)の受講が義務づけられ、受講しなかった場合や、受講後に再び合計3点以上になった場合は、特例で取った免許が取り消されます。若い年齢で入社した人にとっては、通常より違反の影響が大きい期間です。詳しくは19歳で二種免許を取る特例教習をご覧ください。
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求人一覧を見るタクシー運転者登録への影響|タクシー業務適正化特別措置法
タクシー業務適正化特別措置法第3条は、タクシー事業者は、営業所のある単位地域の原簿に登録を受けている「登録運転者」以外の者をタクシーの運転者として乗務させてはならないと定めています。東京タクシーセンターは、東京特定指定地域(特別区、武蔵野市及び三鷹市)の法人タクシー運転者は同センターに登録し、運転者証の交付を受けて車内に表示しなければ営業できないと案内しています。
この登録制度には、違反や処分に関わる規定があります。
| 規定 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 登録の拒否 | 道路運送法第25条の政令の要件(二種免許を受けており効力が停止されていないこと等)を備えていない人、所定の講習を修了していない人、指定地域で所定の経歴がなく試験にも合格していない人などは登録を拒否される | 特措法第7条第1項 |
| 登録の取消し | この法律や道路運送法等に違反する行為、国土交通省令で定める重大な事故、運転者の職務に関する著しく不適当な行為などがあったとき(登録前2年以内のものを含む)は、登録を取り消すことができる | 特措法第9条第1項 |
| 取消し後の期間 | 登録を取り消すときは、2年以内の期間を定めて登録を行わない旨を決定する | 特措法第9条第2項 |
| 免許停止が40日未満 | 登録は消除されず、その期間は登録の効力が停止される | 特措法第10条第2項・同法施行規則第9条 |
| 免許停止が40日以上・免許取消し | 登録は消除される(東京タクシーセンターの案内)。再び登録するときは新規登録と同じ手続き | 特措法第10条第1項、東京タクシーセンター「登録の消除について」 |
東京タクシーセンターは、登録が消除される場合として「登録の取消処分を受けたとき」「40日以上の運転免許停止処分及び運転免許の取消処分を受けたとき」「運転者証が返納されてから2年を経過したとき」「登録の消除を申請したとき」「運転免許証を失効したとき」を挙げています。指定地域では、輸送の安全及び利用者の利便の確保に関する試験に合格しているか、その地域で登録申請前2年以内に通算90日以上タクシー・ハイヤーの運転者だった経歴(同法施行規則第4条)があることが登録の条件です。東京タクシーセンターの新規登録では、合格証の写し(合格した日から2年以内)か運転経歴書を添付します。試験の内容はタクシーの地理試験廃止後の試験で解説しています。
事業者が新たに雇うときの事故歴の確認|国交省の指導監督指針
国土交通省の「旅客自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」(平成13年国土交通省告示第1676号)は、事業者が運転者を新たに雇い入れた場合の手順を定めています。
自動車安全運転センター法に規定する自動車安全運転センターが交付する無事故・無違反証明書又は運転記録証明書等により、雇い入れる前の事故歴を把握し、事故惹起運転者に該当するか否かを確認すること。
応募の際に運転記録証明書などの提出を求められることがあるのは、事業者にこの確認が求められているためです。同指針が定める「事故惹起運転者」と、該当した場合に事業者が行うことは次のとおりです。
| 項目 | 指針の内容 |
|---|---|
| 事故惹起運転者の定義 | 死者又は重傷者を生じた交通事故を引き起こした運転者、及び軽傷者を生じた交通事故を引き起こし、かつ、その事故前の3年間に交通事故を引き起こしたことがある運転者 |
| 特別な指導 | 事業用自動車の運行の安全に関する法令、事故事例の分析に基づく再発防止対策、生理的・心理的要因と対処方法、運行の安全のための留意事項、危険の予測及び回避について、貸切バス以外の運転者には合計6時間以上 |
| 適性診断 | 事故の区分に応じて特定診断Ⅰ又は特定診断Ⅱを受診させる |
| 雇い入れ時に該当した場合 | 特別な指導を受けていなければ指導を行い、適性診断を受診していなければ受診させる |
つまり指針が定めているのは「事故歴を確認し、該当すれば指導と診断を行う」ことで、事故惹起運転者を雇ってはならないという定めではありません。なお、事故歴に関係なく、新たに雇い入れた運転者には原則として選任前の指導と適性診断が必要です(旅客自動車運送事業運輸規則第36条第2項。同じ営業区域で雇入れ前2年以内に通算90日以上タクシーの運転者だった人は除く)。研修の中身はタクシーの新人研修、診断の種類はタクシーの適性診断で解説しています。
自分の記録を確かめる|自動車安全運転センターの4種類の証明書
自分の違反歴・処分歴がどう記録されているかは、自動車安全運転センターの証明書で確認できます。同センターは運転者の求めに応じて次の4種類を発行しています。
| 証明書 | 証明する内容(センターの説明) |
|---|---|
| 無事故・無違反証明書 | 無事故・無違反で経過した期間(昭和44年10月1日以後の期間に限る) |
| 運転記録証明書 | 過去5年間、3年間又は1年間の交通違反、交通事故及び運転免許の行政処分の記録 |
| 累積点数等証明書 | 交通違反や交通事故の点数が現在何点になっているか |
| 運転免許経歴証明書 | 過去に失効した免許、取り消された免許、又は現在受けている免許の種類、取得年月日等 |
交付手数料は1通800円(消費税非課税)で、警察署・交番などにある申込用紙でゆうちょ銀行・郵便局から申し込むか、各都道府県のセンター事務所の窓口で申し込みます(窓口でも即時交付は行っていません)。応募前に自分の記録を把握しておくと、面接で正確に説明できます。
違反歴がある人が応募前に確認したいこと
法令上の要件と、会社ごとの採用判断は別物です。違反歴をどの程度考慮するかを公表している会社の基準を本記事では扱っておらず、推測で書くこともしません。応募前には次の点を確かめておくと、手続きの見通しが立ちます。
- 現在の免許の状態:免許停止中ではないか。停止中は二種免許の受験も乗務もできない。
- 二種免許の受験資格:停止期間を除いた経歴が通算3年以上あるか。取消し歴がある場合は欠格期間が過ぎているか。
- 証明書で記録を確認:運転記録証明書(5年・3年・1年)や累積点数等証明書を取り寄せる。
- 応募先への確認:提出を求められる書類と、違反歴・事故歴の扱いを面接で直接確認する。
- 運転者登録の地域:東京など指定地域では登録が必要。過去に登録を取り消されている場合は、登録しない期間(2年以内)が過ぎているか。
二種免許の取得費用を会社が負担する求人は二種免許養成制度ありの求人、未経験から始める人向けは未経験歓迎の求人、職種全体はタクシードライバー求人から探せます。個人タクシーの許可は法人の運転者とは別の基準があるため、個人タクシーのなり方と条件をご覧ください。
出典・一次情報
本記事の制度は、次の公表資料に基づいています(いずれも2026年10月14日閲覧)。
- 道路運送法(昭和26年法律第183号)第25条 e-Gov法令検索/旅客自動車運送事業用自動車の運転者の要件に関する政令(昭和31年政令第256号) 同
- 旅客自動車運送事業運輸規則(昭和31年運輸省令第44号)第36条 e-Gov法令検索
- 道路交通法(昭和35年法律第105号)第88条・第90条・第96条・第103条 e-Gov法令検索
- タクシー業務適正化特別措置法(昭和45年法律第75号)第3条・第7条・第9条・第10条 e-Gov法令検索/同法施行規則(昭和45年運輸省令第66号)第4条・第9条 同
- 国土交通省「旅客自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」(平成13年国土交通省告示第1676号) mlit.go.jp(PDF)
- 警察庁「受験資格特例教習について」 npa.go.jp
- 公益財団法人東京タクシーセンター「登録手続きについて」 tokyo-tc.or.jp
- 自動車安全運転センター「事業紹介」 jsdc.or.jp/「申請方法」 同
この記事で扱っていないこと
各タクシー会社が違反歴・事故歴を採用でどう評価するかは、法令に定めがなく、各社の判断です。本記事は法令上の要件だけを整理したもので、特定の人が採用されるかどうかを示すものではありません。



