広島のタクシー運転手の年収|結論
この記事の結論
広島県のタクシー運転者の年間推計額は399万4,100円で、県内のバス・トラックの運転者より低い水準です(令和7年賃金構造基本統計調査から本記事が計算)。同じ統計の県内のバス運転者は483万5,600円、営業用大型トラックは540万2,900円、営業用中小型トラックは427万9,800円です。
全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)の第4表の年間推計額を本記事で並べ替えると、全国行を除く47都道府県の13位です。全国のタクシー運転者(450万8,200円)より51万4,100円低くなっています。
年収は令和5年334万9,000円、令和6年349万6,000円、令和7年399万4,100円と2年続けて上がっていますが、推計労働者数は約2,760人、約3,810人、約3,070人と少なく、標本の入れ替わりで数字が大きく動きやすい県です。
運賃は2025年に県内の2つの地区で改定され、広島市域地区は12月5日から改定率10.27%、それ以外の広島地区は11月27日から12.09%です。
この記事では、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の都道府県別の職種表(令和5〜7年)、中国運輸局の運賃改定の公表資料、国土交通省の準特定地域の速報値、県内で採用している会社の公式の求人という一次情報だけで、広島県のタクシー運転者の収入を整理します。47都道府県の一覧はタクシー運転手の年収 都道府県別で扱っているので、ここでは広島の中身に絞ります。
県内の運転の仕事と比べる|タクシーは4職種で最も低い
令和7年賃金構造基本統計調査「都道府県、職種(特掲)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」(都道府県別第3表)の広島県の欄から、自動車運転の職種を並べました。年間推計額は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」、1時間あたりは年間推計額を月間実労働時間(所定内と超過の合計)の12倍で割った本記事の計算値です。
| 職種(広島県) | 平均年齢 | 勤続年数 | 月間実労働時間 | きまって支給する現金給与額(月) | 年間賞与 | 年間推計額 | 1時間あたり |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| タクシー運転者 | 62.3歳 | 10.6年 | 189時間 | 288,400円 | 533,300円 | 3,994,100円 | 約1,761円 |
| バス運転者 | 52.3歳 | 10.7年 | 185時間 | 330,900円 | 864,800円 | 4,835,600円 | 約2,178円 |
| 営業用大型貨物自動車運転者 | 50.4歳 | 11.9年 | 207時間 | 417,500円 | 392,900円 | 5,402,900円 | 約2,175円 |
| 営業用貨物自動車運転者(大型車を除く) | 50.8歳 | 12.7年 | 197時間 | 323,400円 | 399,000円 | 4,279,800円 | 約1,810円 |
広島県では、タクシーの年間推計額は中小型トラックより28万5,700円、バスより84万1,500円、大型トラックより140万8,800円低い結果です。1時間あたりでも約1,761円と4職種で最も低く、平均年齢は62.3歳と最も高くなっています。全国ではタクシー・バス・中小型トラックがほぼ横並びで大型トラックが最も高いという構図ですが(タクシー・バス・トラックの年収比較)、広島ではタクシーがその横並びから一段下にあります。
全タク連の第4表では、広島県のタクシー運転者の月間労働時間は189時間、全産業労働者は175時間です。全産業労働者の年間推計額513万3,300円との差は113万9,200円で、全国平均の差94万7,400円より大きくなっています。
給与の中身|所定内22.3万円、超過分6.5万円、賞与53.3万円
広島県のタクシー運転者の所定内給与額は22万3,000円、時間外・深夜手当などの超過労働給与額(きまって支給する額との差)は6万5,400円、年間賞与は53万3,300円で年収の約13.4%です。全国のタクシー運転者(賞与19万7,800円、年収の約4.4%)より賞与の比重がかなり大きい数字ですが、前年の令和6年は15万1,600円(約4.3%)で、1年で3倍以上に変わっています。賞与の多い事業所が標本に入ったかどうかで動く値と見て、毎月の給与と分けて確かめるのが無難です。歩合給の仕組みはタクシーの歩合給の計算と足切り、賞与と退職金の確認方法はタクシーの賞与と退職金で解説しています。
3年間の推移|335万円、350万円、399万円。ただし標本は小さい
令和5年・6年・7年の同じ表から、広島県のタクシー運転者の数字を並べます。推計労働者数は表の「労働者数(十人単位)」を10倍した値、前年比は各年の年間推計額から本記事が計算した値です。
| 調査年 | 年間推計額 | 前年比 | きまって支給する現金給与額(月) | 年間賞与 | 平均年齢 | 勤続年数 | 月間実労働時間 | 推計労働者数 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 令和5年 | 3,349,000円 | - | 246,800円 | 387,400円 | 66.0歳 | 8.4年 | 176時間 | 約2,760人 |
| 令和6年 | 3,496,000円 | +14万7,000円(+4.4%) | 278,700円 | 151,600円 | 59.1歳 | 8.7年 | 172時間 | 約3,810人 |
| 令和7年 | 3,994,100円 | +49万8,100円(+14.2%) | 288,400円 | 533,300円 | 62.3歳 | 10.6年 | 189時間 | 約3,070人 |
数字の上では2年続けて上がり、令和7年は前年より14.2%増えています(同じ期間の全国のタクシー運転者は8.7%増)。ただし、平均年齢が66.0歳、59.1歳、62.3歳と年ごとに数歳動き、賞与も38万円台、15万円台、53万円台と大きく上下しています。令和7年は月間実労働時間も前年より17時間長くなっています。
全タク連は第4表の注1で、全国のあらゆる産業・規模・職種を対象とする調査の性格上、タクシー運転者に係る調査対象事業所数は限定されていると想定され、小規模都道府県では調査対象事業所が非常に少数となった結果、各都道府県の実情が正確に反映されていない可能性があることに留意が必要だと書いています。広島県の推計労働者数は約3,000人規模で、東京都(約4万6,000人)や大阪府(約2万人)に比べて小さく、1年ごとの増減は標本の入れ替わりの影響を強く受けます。3年を通した広島のタクシー運転者の年収は、おおむね330万〜400万円の範囲と読むのが慎重です。
なお、全タク連の資料の第4表にある「対前年増減」の列は、年収の増減ではなく「全産業との格差」の前年からの増減です(広島県は格差が令和6年の153万2,400円から113万9,200円に縮小し、-39万3,200円)。年収の前年比は上の表のように各年の統計を直接比べて計算しています。
2025年の運賃改定|広島市域地区10.27%、広島地区12.09%
広島県のタクシー運賃は、広島市を中心とする「広島市域地区(旧広島県A地区)」と、それ以外の県内全域の「広島地区(旧広島県B地区)」に分かれています。中国運輸局は2025年10月28日に広島地区、11月6日に広島市域地区の新しい運賃を公示しました。普通車の上限運賃(基本となる新運賃)は次のとおりです。
| 項目(普通車・上限運賃) | 広島市域地区 | 広島地区 |
|---|---|---|
| 主な適用地域 | 広島市(旧湯来町を除く)、廿日市市の一部、府中町・海田町・熊野町・坂町 | 広島市域地区を除く県内全域(福山市・呉市・尾道市・東広島市など) |
| 新運賃の適用 | 2025年12月5日から | 2025年11月27日から |
| 初乗り | 1.5km 750円から1.45km 800円に | 1.5km 750円から1.42km 800円に |
| 加算運賃 | 264mごと80円から300mごと100円に | 289mごと90円から288mごと100円に |
| 運賃改定率 | 10.27% | 12.09% |
| 前回の改定 | 2023年6月26日(14.32%) | 2023年6月26日(14.04%) |
| 原価計算の対象と人件費の割合(令和5年度実績) | 11者、運送原価の65.38% | 15者、運送原価の59.86% |
どちらの地区も、初乗距離を短くして初乗運賃を下げた「初乗短縮運賃」(広島市域地区は1,150m 700円、広島地区は1,132m 700円)を事業者が選ぶこともできます。両地区とも前回の2023年6月26日の改定から約2年半での再改定です。
中国運輸局は、改定要請の理由に経営の健全化と労働環境の改善があげられていることから、事業者団体に対し、運賃改定後に運転者の労働条件の改善措置を講ずること、改善についての考え方を利用者に表明すること、然るべき時期に改善状況の実績を自主的に公表することを指導するとしています。公表の際には賃金水準だけでなく、実質的な労働者負担の軽減や手当の創設なども併せて公表するよう求めています。
公表された収支表では、広島地区の平年度(令和7年度)査定の人件費は令和5年度実績の105.00%、広島市域地区は100.00%(同額)で見積もられています。運賃の上昇分がどのように乗務員に配分されるかは各社の賃金規定で決まり、統計上の効果は改定後の調査で確かめる必要があります。運賃と収入の関係はタクシーの運賃改定と収入で整理しています。
1日1車あたりの営業収入|広島交通圏は3万5,390円
国土交通省が2024年7月に公表した準特定地域の速報値から、広島県内の地域の日車営収(1日1車あたりの営業収入)を抜き出しました。いずれも2025年の運賃改定より前の数字です。
| 地域 | 平成13年度 | 令和5年度 |
|---|---|---|
| 広島交通圏 | 33,287円 | 35,390円 |
| 東広島市 | 24,985円 | 26,361円 |
| 尾道市 | 19,631円 | 23,421円 |
| 呉市A | 23,100円 | 23,290円 |
| 福山交通圏 | 19,728円 | 21,471円 |
広島交通圏の3万5,390円は、県内のほかの地域より約9,000〜1万4,000円多い水準です。同じ資料の大阪市域交通圏は3万8,775円、特別区・武三交通圏(東京)は6万1,443円でした。日車営収は1台の車あたりの数字で、乗務員1人の1回の勤務の売上とは一致しませんが、同じ県内でも営業区域によって売上の土台が大きく違うことがわかります。
広島で採用している会社の公表条件|第一交通グループの例
広島県内に営業所があり、公式の求人に給与と勤務の条件を載せている会社の例として、第一交通産業グループの求人サイト「WAY」に掲載された県内各社の求人を並べます(2026年10月閲覧)。会社の比較や順位付けではなく、統計の平均と会社の公表条件の違いを知るための参考です。
| 項目 | 隔日勤務の求人(府中・阿品・平和・つるみ) | 夜勤・日勤の求人(上安など) |
|---|---|---|
| 会社・営業所 | 広島第一交通(府中営業所・阿品営業所)、平和第一交通(佐伯区)、つるみ第一交通(南区) | 広島第一交通 上安営業所(安佐南区)、はと第一交通(東区) |
| 給与の形 | 基本給+固定残業代+業績歩合給 | 基本給+固定残業代+業績歩合給 |
| 保証給 | 最大6か月間、月給20万円の保証給制度 | 保証給制度あり(金額の記載なし) |
| 勤務 | 7:00〜翌2:00、月12回程度、時間外は月平均28時間程度、年間休日203日(府中営業所) | 夜勤 18:00〜3:00(上安)・17:00〜3:00(はと)、日勤 7:00〜17:00(上安) |
| 二種免許 | 入社後に取得する場合、費用は全額会社負担。教習所に通う期間から研修期間まで日給支給 | |
| その他の記載 | 無事故手当・精勤手当・家族手当、定年65歳 | 上安営業所の夜勤求人に賞与年2回・退職金制度(勤続2年以上)の記載 |
求人には「月給25万円以上も可能」という表現もありますが、これは会社が示す目安であり、勤務形態・出勤日数・営業所によって変わります。保証給の期間と額、保証が終わった後の歩合の計算方法は、営業所ごとに面接で確認してください。給与保証の読み方はタクシーの給与保証の仕組み、隔日勤務の拘束時間のルールはタクシーの隔日勤務とはで解説しています。
広島県内の求人は広島県のタクシー求人、第一交通グループの会社情報は第一交通産業のページから確認できます。
広島でタクシーの求人を比べるときの確認項目
- 営業区域:広島交通圏と福山交通圏では、1日1車あたりの営業収入に約1万4,000円の差があります(令和5年度速報値)。
- 運賃地区と改定後の賃金規定:広島市域地区(12月5日〜)か広島地区(11月27日〜)か。2025年の改定の後に歩合率や保証額が変わったかどうか。
- 保証の期間と額:月給制の保証か、保証が終わった後の固定部分がいくらか。
- 賞与の算定方法:統計上の広島県の賞与は年によって15万〜53万円台と大きく動いており、会社ごとの制度で確かめる必要があります。
- 勤務形態:隔日勤務か、夜勤・日勤の専属か。違いはタクシーの夜勤と日勤の違いを参照してください。
未経験から始める場合の流れは未経験からタクシードライバーになるには、二種免許の取得費用を会社が負担する制度は二種免許養成制度ありの求人で探せます。
出典・一次情報
本記事の数字は、次の公表資料に基づいています(いずれも2026年10月閲覧)。年間推計額・1時間あたり・前年比・差額・割合は、公表値から本記事が計算したものです。
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和5年・6年・7年)一般労働者 都道府県別第3表(都道府県、職種(特掲)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額) e-Stat(令和7年)・e-Stat(令和6年)・e-Stat(令和5年)
- 一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」(令和8年5月、2026年10月6日付の【最新版】)第4表・注1 taxi-japan.or.jp(PDF)
- 中国運輸局「広島市域地区のタクシー運賃改定について」(2025年11月6日、別紙1 運賃表・別紙2 収支実績及び推定収支) wwwtb.mlit.go.jp(PDF)
- 中国運輸局「広島地区及び岡山地区のタクシー運賃改定について」(2025年10月28日、別紙1 運賃表・別紙2 収支実績及び推定収支) wwwtb.mlit.go.jp(PDF)
- 中国運輸局「広島県内におけるタクシー運賃改定要請のお知らせ」(2025年3月28日) wwwtb.mlit.go.jp(PDF)
- 国土交通省「タクシー事業の準特定地域における輸送実績(速報値)の公表について」(2024年7月31日、準特定地域における令和5年度速報値) mlit.go.jp
- 第一交通産業グループ タクシードライバー求人サイト「WAY」広島県の求人(広島第一交通 府中営業所・上安営業所・阿品営業所、平和第一交通、つるみ第一交通、はと第一交通) recruit.way-taxi.net・広島県の求人一覧
数字の範囲について
賃金構造基本統計調査の広島県の数字は県全体の値で、市単位の年収は公表されていません。対象は企業規模10人以上の企業で働く一般労働者で、個人タクシーは含みません。額は税・社会保険料を引く前の額面です。広島県はタクシー運転者の標本が小さく、年ごとの値は大きく動きます。会社の公表条件は閲覧日時点のもので、営業所や勤務形態によって異なる場合があります。



