埼玉のタクシー運転手の年収|結論
この記事の結論
埼玉県のタクシー運転者の年間推計額は413万400円で、全国(450万8,200円)より37万7,800円低い水準です(令和7年賃金構造基本統計調査から本記事が計算)。同じ統計の県内のバス運転者は461万6,200円、営業用大型トラックは504万2,700円、営業用中小型トラックは499万9,700円です。ただし月間実労働時間が177時間と短いため、1時間あたりではタクシー(約1,945円)がバスや大型トラックを上回ります。
全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)の第4表の年間推計額を本記事で並べ替えると47都道府県の10位です。
年収は令和5年388万8,400円、令和6年481万1,300円、令和7年413万400円と大きく上下していますが、推計労働者数も約5,170人、約1,610人、約6,100人と大きく変わっており、調査対象の入れ替わりの影響が大きい県です。
売上の側では、県内の法人タクシーの実働1日1車あたり運送収入が令和6年度4万2,445円(関東運輸局調)で、2026年3月16日には埼玉南部地区で改定率10.25%の運賃改定が実施されました。
埼玉でタクシーの仕事を考えるときは、統計の年収が年ごとに大きく動く理由を知ったうえで、「県内の他の運転の仕事と比べてどうか」「さいたま市などの県南と県北で売上は違うのか」「運賃改定で何が変わったか」を見ていくのが確実です。
この記事では、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の都道府県別の職種表(令和5〜7年)、関東運輸局の運賃改定の公示と輸送実績、国土交通省の準特定地域の速報値、埼玉運輸支局の労働条件の改善状況の公表、県内で採用している会社の公式募集要項という一次情報だけで整理します。都道府県別の一覧はタクシー運転手の年収(都道府県別)にまとめています。
県内の運転の仕事と比べる|年収は低め、時間あたりは中位
令和7年賃金構造基本統計調査「都道府県、職種(特掲)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」(都道府県別第3表)の埼玉県の欄から、自動車運転の職種を並べました。年間推計額は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」、1時間あたりは年間推計額を月間実労働時間の12倍で割った本記事の計算値です。
| 職種(埼玉県) | 平均年齢 | 勤続年数 | 月間実労働時間 | きまって支給する現金給与額(月) | 年間賞与 | 年間推計額 | 1時間あたり |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| タクシー運転者 | 60.7歳 | 11.1年 | 177時間 | 338,200円 | 72,000円 | 4,130,400円 | 約1,945円 |
| バス運転者 | 59.7歳 | 14.3年 | 210時間 | 344,100円 | 487,000円 | 4,616,200円 | 約1,832円 |
| 営業用大型貨物自動車運転者 | 50.5歳 | 12.5年 | 220時間 | 378,400円 | 501,900円 | 5,042,700円 | 約1,910円 |
| 営業用貨物自動車運転者(大型車を除く) | 49.9歳 | 12.3年 | 204時間 | 373,300円 | 520,100円 | 4,999,700円 | 約2,042円 |
埼玉県では、タクシーの年間推計額はバスより48万5,800円、大型トラックより91万2,300円低い一方、月の労働時間はバスより33時間、大型トラックより43時間短くなっています。きまって支給する月の給与はバスとの差が5,900円しかなく、年収の差の大部分は賞与(タクシー7万2,000円、バス48万7,000円)の違いです。全国の比較はタクシー・バス・トラックの年収比較にまとめています。
全タク連の第4表では、埼玉県の全産業労働者の年間推計額は513万5,700円で、タクシー運転者との差は100万5,300円です。月間労働時間はタクシー177時間、全産業175時間で、ほぼ同じです。
給与の中身|所定内31.6万円、超過分2.3万円、賞与7.2万円
同じ表で、埼玉県のタクシー運転者の所定内給与額は31万5,500円、時間外・深夜手当などの超過労働給与額(きまって支給する額との差)は2万2,700円です。年間賞与7万2,000円は年収の約1.7%で、全国(約4.4%)より少なく、東京都(約1.7%)と同程度です。年収のほぼすべてを毎月の給与で受け取る形で、売上に応じた歩合給の仕組みはタクシーの歩合給の計算と足切りで解説しています。
3年間の推移|388万円、481万円、413万円と大きく動く理由
令和5年・6年・7年の同じ表から、埼玉県のタクシー運転者の数字を並べます。推計労働者数は表の「労働者数(十人単位)」を10倍した値、前年比は各年の年間推計額から本記事が計算した値です。
| 調査年 | 年間推計額 | 前年比 | きまって支給する現金給与額(月) | 年間賞与 | 平均年齢 | 勤続年数 | 月間実労働時間 | 推計労働者数 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 令和5年 | 3,888,400円 | - | 318,200円 | 70,000円 | 63.1歳 | 14.5年 | 170時間 | 約5,170人 |
| 令和6年 | 4,811,300円 | +23.7% | 385,300円 | 187,700円 | 66.7歳 | 15.0年 | 192時間 | 約1,610人 |
| 令和7年 | 4,130,400円 | -14.2% | 338,200円 | 72,000円 | 60.7歳 | 11.1年 | 177時間 | 約6,100人 |
令和6年は前年より92万2,900円増え、令和7年は68万900円減りました。しかし令和6年の推計労働者数は約1,610人と、前後の年の3分の1以下です。この統計は毎年6月分の給与を企業規模10人以上の事業所から標本で調べたもので、タクシーの事業所が少ししか標本に入らない年は、数社の賃金水準で県全体の数字が大きく変わります。
全タク連も第4表の注1で、全国のあらゆる産業を対象とする調査の性格上、タクシー運転者に係る調査対象事業所数は限られ、小規模な都道府県では実情が正確に反映されていない可能性があると注意しています。埼玉県の年収は、単年の増減よりも3年の水準(約389万〜481万円、単純平均で約427万7,000円)で見るのが適切です。
なお、全タク連の資料の第4表にある「対前年増減」の列は、年収の増減ではなく「全産業との格差」の前年からの増減です(埼玉は格差が令和6年の28万3,800円から100万5,300円に広がり、+72万1,500円)。
売上の側から見る|県内の1日1車あたり運送収入は4万2,445円
タクシー運転者の給与の多くは歩合給なので、会社の売上(運送収入)の動きが統計の年収より安定した手がかりになります。関東運輸局「一般乗用旅客自動車運送事業の都県別、年度別実績推移(法人)」の埼玉県の数字です。
| 年度 | 実働1日1車あたり運送収入 | (参考)特別区・武三交通圏(東京) |
|---|---|---|
| 令和元年度 | 35,951円 | 51,181円 |
| 令和4年度 | 38,334円 | 55,486円 |
| 令和5年度 | 40,919円 | 61,415円 |
| 令和6年度 | 42,445円 | 61,476円 |
(法人タクシー。1台の車を複数の乗務員が交代で使うため、乗務員1人の1乗務の売上とは一致しません)
令和6年度の埼玉県の法人タクシーは5,334両で、1日1車あたりの輸送回数は22.9回、実車率は43.0%です。運送収入は令和元年度より約18%増え、毎年少しずつ伸びています。統計の年収が年ごとに大きく上下しているのに対し、売上の側は一方向に動いている点が対照的です。
交通圏ごとの日車営収|県南西部が最も高い(令和5年度速報値)
国土交通省が2024年7月に公表した準特定地域の速報値では、県内の交通圏の令和5年度の日車営収(1日1車あたりの営業収入)は次のとおりです。
| 交通圏 | 主な市町 | 平成13年度 | 令和5年度 |
|---|---|---|---|
| 県南中央交通圏 | さいたま市、川口市、上尾市、戸田市など | 33,634円 | 41,352円 |
| 県南東部交通圏 | 春日部市、草加市、越谷市、三郷市など | 33,215円 | 40,812円 |
| 県南西部交通圏 | 川越市、所沢市、朝霞市、新座市など | 38,006円 | 43,514円 |
| 県北交通圏 | 熊谷市、本庄市、深谷市、行田市など | 25,606円 | 31,000円 |
(交通圏の範囲は関東運輸局の運賃適用地域の資料による)
県南の3交通圏は4万円台で、県北交通圏とは約1万〜1万2,500円の差があります。どの交通圏も平成13年度の水準を上回っています。
2026年3月の運賃改定|埼玉南部10.25%、埼玉北部10.77%
関東運輸局は2026年2月13日、埼玉南部地区と埼玉北部地区の新しい運賃を公示し、3月16日に実施されました。普通車の上限運賃の変更点は次のとおりです。
| 項目(普通車・上限運賃) | 埼玉南部 改定前 | 埼玉南部 改定後 | 埼玉北部 改定前 | 埼玉北部 改定後 |
|---|---|---|---|---|
| 初乗り | 1.121km 500円 | 1.027km 500円 | 1.031km 500円 | 0.941km 500円 |
| 加算運賃 | 236mごとに100円 | 213mごとに100円 | 259mごとに100円 | 233mごとに100円 |
| 時間距離併用制 | 85秒ごとに100円 | 1分20秒ごとに100円 | 95秒ごとに100円 | 1分25秒ごとに100円 |
| 改定率(所要増収率) | 10.25% | 10.77% | ||
埼玉南部地区は県南中央・県南東部・県南西部の3交通圏、埼玉北部地区は県北・秩父の2交通圏です。前回の改定はどちらも2023年11月20日の実施でした。関東運輸局は改定の目的を「物価高騰に対応するとともに、タクシー運転者の労働環境の改善・人材確保を図ること」と説明しています。公示の算定根拠では、原価計算の対象事業者の令和6年度実績で、運送原価に占める運転者人件費の割合が埼玉南部(22社)で62.3%、埼玉北部(10社)で50.2%でした。要請時点の地区全体の法人タクシーは、埼玉南部4,885両、埼玉北部417両です。
前回(2023年11月)の改定後、賃金はどうなったか
埼玉運輸支局は2025年7月18日、前回の運賃改定の後の労働条件の改善状況の調査結果を公表しています。埼玉南部地区(旧埼玉県A地区)で運賃を改定した147社のうち、一般運転者1人の1時間あたり賃金の支給率(令和5年12月〜令和6年5月を前年同期と比べた値)が下がった事業者は5社でした。このうち1社は事業休止で調査の対象外とし、残る4社は営業収入の減少によるやむを得ない事由と確認されたとしています。
また2025年2月21日の公表では、埼玉県乗用自動車協会に加入していない事業者のうち対象の7社すべてで賃金支給率が上がり、うち3社は110%以上でした。運賃が上がった分がどう給与に回るかは各社の賃金規定で決まります。運賃改定と収入の関係はタクシーの運賃改定と収入で整理しています。
県内で採用している会社の公表条件
埼玉県内に営業所があり、公式の募集要項に給与の数字を載せている会社の例です(2026年10月閲覧)。会社の比較や順位付けではなく、統計の平均と会社の公表値の違いを知るための参考として並べます。
| 項目 | 埼玉交通 | 三和交通(志木営業所) |
|---|---|---|
| 勤務地 | 浦和営業所(さいたま市南区)、大宮営業所(さいたま市北区)。さいたま市を中心に県南地域を担当 | 志木営業所(朝霞市)。主な営業エリアは志木市・朝霞市北部・新座市東部・富士見市南部。2026年秋に開設 |
| 給与の形 | 月給191,600円以上(基本給)+歩合給。会社は平均を19万〜40万円程度と記載 | 6か月間 月給35万円以上の給与保障(未経験者に適用・規定あり)。その後は月給24万192円+歩合給 |
| 公表している収入 | 公表なし(月50万円以上の乗務員もいるとの記載) | 全社員の平均年収533万円、未経験者1年目の平均年収425万円(2026年3月時点・三和交通グループ全体) |
| 勤務 | 隔日勤務(月12勤務)8時〜翌1時(休憩180分)、日勤(月18勤務)7時〜18時(休憩90分) | 隔日勤務 月平均12乗務程度(実働17時間・休憩3時間以上) |
| その他 | 年功給(年1回)、退職金制度あり、二種免許の取得費用は全額会社負担(研修10日間は10万円支給) | 賞与年2回、二種免許の取得費用は全額会社負担 |
三和交通の平均年収は神奈川・東京の営業所を含むグループ全体の数字で、埼玉県だけの値ではありません。公表されている収入は会社が示す平均や例であり、勤務形態・出勤日数・営業所によって変わります。
埼玉でタクシーの求人を比べるときの確認項目
- 営業区域:県南の3交通圏と県北交通圏では、1日1車あたりの売上に約1万〜1万2,500円の差があります(令和5年度速報値)。
- 運賃改定後の賃金規定:2026年3月の改定の後、歩合率や保障額が変わったかどうか。
- 保障の期間と額:月給制の保障か、保障が終わった後の固定部分がいくらか。読み方はタクシーの給与保障の仕組みで解説しています。
- 賞与の有無と算定方法:統計上の埼玉県のタクシー運転者の賞与は年7万2,000円で、会社によって制度の差が大きい項目です。
- 勤務形態:隔日勤務か日勤か。ルールはタクシーの隔日勤務とはを参照してください。
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出典・一次情報
本記事の数字は、次の公表資料に基づいています(いずれも2026年10月閲覧)。年間推計額・前年比・平均・1時間あたり・差額・割合は、公表値から本記事が計算したものです。
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和5年・6年・7年)一般労働者 都道府県別第3表(都道府県、職種(特掲)、性別) e-Stat(令和7年)
- 一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」(令和8年5月、2026年10月6日付の【最新版】)第4表・注1 taxi-japan.or.jp(PDF)
- 関東運輸局プレスリリース「令和8年3月16日より東京都多摩地区、神奈川県京浜地区及び相模・鎌倉地区、埼玉県、千葉県、群馬県のタクシー運賃が変わります。」(2026年2月13日、別紙 運賃表・別添 運賃適用地域・所要増収率の算定根拠) wwwtb.mlit.go.jp(PDF)
- 関東運輸局 公示(2025年9月18日、埼玉南部地区・埼玉北部地区の運賃改定要請事案と現行運賃) wwwtb.mlit.go.jp(PDF)
- 関東運輸局「一般乗用旅客自動車運送事業の都県別、年度別実績推移(法人)」 wwwtb.mlit.go.jp(PDF)
- 国土交通省「タクシー事業の準特定地域における輸送実績(速報値)の公表について」(2024年7月31日、準特定地域における令和5年度速報値) mlit.go.jp
- 関東運輸局埼玉運輸支局「タクシー運賃改定実施による労働条件の改善状況の調査結果について(埼玉南部地区(旧埼玉県A地区))」(2025年7月18日) wwwtb.mlit.go.jp(PDF)/「埼玉南部地区(旧埼玉県A地区)における運賃改定実施による労働条件の改善状況」(2025年2月21日) 同(PDF)
- 株式会社埼玉交通 タクシードライバー募集 saitama-koutu.com
- 三和交通 志木営業所 タクシードライバー募集要項 driver-recruit.sanwakoutsu.co.jp
数字の範囲について
賃金構造基本統計調査の埼玉県の数字は県全体の値で、市や交通圏ごとの年収は公表されていません。対象は企業規模10人以上の企業で働く一般労働者で、個人タクシーは含みません。額は税・社会保険料を引く前の額面です。関東運輸局と国土交通省の運送収入は法人タクシーの数字です。会社の公表条件は閲覧日時点のもので、営業所や勤務形態によって異なる場合があります。



