タクシーの隔日勤務|結論

この記事の結論

隔日勤務は「2労働日分を1回の勤務にまとめ、翌日を明け休にする」働き方で、厚生労働省は「始業及び終業の時刻が同一の日に属さない業務」と定義しています。
2024年4月1日適用の改善基準告示では、隔日勤務の拘束時間は1か月262時間以内(労使協定で年6か月まで270時間)、2暦日22時間以内かつ2回平均21時間以内、休息期間は継続24時間を基本に22時間を下回らないと定められています。
大手の公式募集要項では月11〜13乗務が標準で、大和自動車交通の例(7時45分から翌1時、休憩3時間込み)で計算すると12乗務の拘束時間は207時間です。
日勤(1か月288時間・1日13時間以内)より1回が長い代わりに出勤回数が約半分になり、明け休と休日を合わせて月18〜19日を自分の時間にできると大和自動車交通は説明しています。

タクシーの求人票で最もよく目にする勤務形態が「隔日勤務」です。朝に出庫して深夜まで、または翌朝まで乗務し、その日の勤務明けは休み(明け休)になります。1回の勤務が長いため「体がもつのか」「本当に法律の範囲内なのか」が気になるところです。

この記事では、厚生労働省の「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)とそのパンフレット、全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)の統計、タクシー会社の公式採用ページという一次情報だけを使い、隔日勤務のルールの読み方と、1か月の勤務の組み立て方を整理します。確認できない「実際の手取り」や口コミは載せていません。

隔日勤務とは|定義と大手4社の公表している勤務時間

厚生労働省のパンフレット「タクシー・ハイヤー運転者の労働時間等の改善基準のポイント」は、隔日勤務を「始業及び終業の時刻が同一の日に属さない業務」と定義し、「2労働日の勤務を一勤務にまとめて行うもの」「深夜時間帯における公共交通機関としての役割を果たすタクシー業において、都市部を中心に広く採用されている勤務形態」と説明しています。

1回の勤務を「乗務」、勤務が終わった日を「明け(明け休)」と呼び、乗務と明けを繰り返す合間に「休日」が入ります。大和自動車交通の採用Q&Aでは「乗務と明け休を2〜3回繰り返したあと、休日を1日取る」のが隔日勤務のスタイルで、乗務・明け休は月に12回ずつ、休日は月に6〜7回と案内しています。

東京の大手4社が公式採用ページで公表している隔日勤務の条件は次のとおりです(2026年10月閲覧)。

会社月の乗務回数1乗務の時間(公表どおり)休憩
日本交通月間11〜13回1乗務15.5〜18時間(週40時間制)別途3時間
国際自動車(kmタクシー)月11乗務(最大13勤務)実働15時間30分3時間
大和自動車交通月12〜13回基本7時45分〜翌1時00分(ほかに出勤時間の違う5種類の勤務体系)3時間(上記時間に含む)
日の丸交通月11乗務(12〜13乗務は要相談)1乗務実働16時間。出庫は6時〜8時・10時・12時・14時の4パターン別途3時間

会社によって「実働」「拘束」「休憩を含むかどうか」の書き方が違う点に注意してください。例えば大和自動車交通は採用Q&Aで「1乗務あたり17時間15分(休憩3時間を含む)」と拘束時間で書いており、国際自動車は「実働15時間30分(休憩3時間)」と労働時間と休憩を分けて書いています。改善基準告示の上限は「拘束時間(労働時間+休憩時間)」で決まるので、比べるときは休憩を足した時間にそろえる必要があります。

「拘束時間」と「休息期間」の違い

厚生労働省のポータルサイトでは、拘束時間は「使用者に拘束されている時間(労働時間+休憩時間)」で、出社(始業)から退社(終業)までの時間、休息期間は「使用者の拘束を受けない期間」で、業務終了時刻から次の始業時刻までの時間と説明されています。休憩時間や仮眠時間は拘束時間に含まれ、休息期間には含まれません。隔日勤務のルールは、この2つの言葉で書かれています。

改善基準告示の隔日勤務ルール|262時間・22時間・24時間の読み方

改善基準告示は2022年12月に改正され、2024年4月1日から適用されています。厚生労働省のポータルサイトに掲載された改正前後の比較から、隔日勤務と日勤の上限を1枚の表にまとめます。

項目隔日勤務(2024年4月1日以降)隔日勤務(2024年3月31日まで)日勤(2024年4月1日以降)
1か月の拘束時間262時間以内(地域的事情等がある場合、労使協定で270時間まで・年6か月まで)262時間以内288時間以内(改正前は299時間)
1回の拘束時間2暦日22時間以内、かつ2回の隔日勤務の平均で1回21時間以内2暦日21時間以内1日13時間以内(上限15時間、14時間超は週3回までが目安)
休息期間継続24時間を基本とし、22時間を下回らない継続20時間以上継続11時間を基本とし、9時間を下回らない
休日休息期間+24時間(継続46時間を下回らない)-休息期間+24時間(継続33時間を下回らない)

改正で隔日勤務の1回あたりの拘束時間は「21時間」から「22時間・2回平均21時間」になり、休息期間は「20時間」から「24時間基本・22時間下限」に延びました。1回の勤務を少し長く組める余地ができた一方で、勤務と勤務の間の休みは確実に長くなった、というのが改正の中身です。なお、ハイヤーの運転者にはこの表は適用されず、時間外労働を1か月45時間・1年360時間(臨時的な場合も1年960時間)までとするなどの別の基準があります。

1か月262時間|270時間への延長は「年6か月まで」

パンフレットでは、隔日勤務者の1か月の拘束時間は原則262時間以内で、「地域的事情その他の特別な事情」がある場合に労使協定を結べば、1年のうち6か月までは270時間まで延長できるとされています。特別な事情の例として「地方都市における顧客需要の状況、大都市部における顧客需要の一時的増加等」が挙げられています。求人票の月間乗務回数が多い会社では、この延長を使う月があるかどうかを確認しておくと、繁忙期の働き方を想像しやすくなります。

2暦日22時間・2回平均21時間|違反になるのは「前後どちらの平均も21時間超」のとき

1回の隔日勤務の拘束時間は22時間以内であることに加え、2回の隔日勤務を平均して1回21時間以内でなければなりません。パンフレットの計算方法では、ある勤務(A時間)について、前の勤務(B時間)との平均と、次の勤務(C時間)との平均の「いずれもが21時間を超えた場合に初めて違反」と判断されます。

例えば、前の勤務が20時間、問題の勤務が22時間、次の勤務が22時間なら、前との平均は21時間ちょうどで21時間を超えていないため違反ではありません。前が21時間30分、問題の勤務が22時間、次が21時間なら、平均は21時間45分と21時間30分でどちらも21時間を超えるので違反です。22時間の勤務を続けて組むことはできない、と覚えておけば十分です。

休息期間24時間基本・22時間下限と、休日46時間

隔日勤務が終わってから次の始業までは、継続24時間以上を与えるよう努めることを基本とし、22時間を下回ってはなりません。さらに休日は「休息期間に24時間を加えた連続した時間」とされ、パンフレットでは隔日勤務の場合は継続46時間(22時間+24時間)を下回らないようにすると明記されています。明け休はあくまで休息期間で、休日とは別に数える点がポイントです。

また、日勤と隔日勤務を頻繁に入れ替えることは「労働者の生理的機能への影響に鑑み認められません」とされ、併用する場合は一定期間ごとに交替させる勤務割にするよう求められています。

地方で見かける「車庫待ち等」の特例

車庫などで待機して顧客の需要に応じる働き方は「車庫待ち等」と呼ばれ、(1)事業場が人口30万人以上の都市にないこと、(2)勤務時間のほとんどで流し営業をしていないこと、(3)夜間に4時間以上の仮眠時間が確保されること、(4)原則として事業場内で休憩が確保されること、の要件を満たすと別の上限が使えます。隔日勤務の車庫待ち等の運転者は、1か月262時間(労使協定で270時間まで)を基本に、夜間4時間以上の仮眠を与えるなどの条件のもとで2暦日の拘束時間を24時間まで延ばせます。大都市の流し営業中心の会社には原則として当てはまらない特例です。

タクシー運転手の求人をチェック

求人一覧を見る

1か月の勤務例|公表されている勤務時間で拘束時間を計算

会社の公表値を使って、1か月の拘束時間が262時間の上限に対してどの程度になるかを計算してみます。大和自動車交通は採用Q&Aで1乗務の拘束を17時間15分(7時45分〜翌1時00分、休憩3時間込み)、国際自動車は実働15時間30分+休憩3時間(拘束18時間30分)、日の丸交通は実働16時間+別途休憩3時間(拘束19時間)と公表しています。

1乗務の拘束時間月11乗務月12乗務月13乗務上限262時間までの残り(13乗務時)
17時間15分(大和自動車交通の基本の例)189時間45分207時間224時間15分37時間45分
18時間30分(国際自動車の例を拘束に換算)203時間30分222時間240時間30分21時間30分
19時間(日の丸交通の例を拘束に換算)209時間228時間247時間15時間

いずれも上限の262時間を下回ります。ただしこれは基本の時間どおりに帰庫した場合の計算で、実際の終業が遅れれば拘束時間は延びます。1回の拘束が長い会社ほど、13乗務で上限に近づく構造です。2暦日の上限22時間に対して17時間15分なら4時間45分、19時間なら3時間の余裕があります。

乗務・明け・休日の並び方(大和自動車交通の説明に沿った例)

大和自動車交通の説明では、勤務が終わった1時00分から翌日の7時45分までが明け休です。7時45分始業・翌1時00分終業の場合、終業から次の始業(明けの翌日7時45分)までは30時間45分あり、休息期間の基本である24時間を上回ります。乗務と明けを2〜3回繰り返して休日を1日入れると、例えば1週間は次のようになります。

日1日目2日目3日目4日目5日目6日目7日目
区分乗務(7時45分始業)明け(1時00分終業)乗務明け乗務明け休日

このパターンを4週続けると乗務12回・明け12回・休日4回になり、残りの日に休日を足すと大和自動車交通が示す「乗務・明け休が月12回ずつ、休日が月6〜7回」に近い形になります。同社は「明け休を合わせると、月に18〜19日分を自分の時間に充てることが可能」と説明しています。なお、6日目の明け(1時00分終業)から休日をはさんで8日目の始業までは54時間45分で、休日に必要な継続46時間も満たします。

日勤・夜日勤との比較|回数・時間・収入の出方

タクシー会社の多くは、隔日勤務のほかに日勤(昼日勤)や夜日勤を用意しています。公表されている条件で比べると次のとおりです。

項目隔日勤務日勤(昼・夜)
改善基準告示の1か月上限拘束262時間拘束288時間
1回の上限2暦日22時間(2回平均21時間)1日13時間(上限15時間)
休息期間24時間基本・22時間下限11時間基本・9時間下限
月の出勤回数の例12回(大和自動車交通)、11回・最大13回(国際自動車)24回乗務(大和自動車交通の昼間・夜間勤務)
1回の時間の例拘束17時間15分(大和)、実働15時間30分+休憩3時間(国際)実働7時間45分+休憩1時間30分(国際自動車の日勤)
給与保証の例(未経験者)月30万円(国際自動車)、年収400万円相当(大和・特別武三交通圏)月23万円(国際自動車)、年収300万円相当(大和・昼日勤)

保証額が勤務形態で分かれていることからも分かるとおり、会社は隔日勤務のほうが売上を上げやすい前提で制度を組んでいます。全タク連は年齢別賃金の解説で、高齢層の賃金がやや下がる背景として「売上が高い隔日勤務や深夜勤務から日勤への移行等」の影響を挙げています。給与保証の仕組みはタクシーの給与保証の仕組みで詳しく解説しています。

朝の時間帯をカバーする勤務シフトへの変更

全タク連の「TAXI TODAY in Japan 2026」によると、大都市部などでは「深夜中心に組んでいた勤務シフトを、お客様のニーズの変化に対応するため、朝の時間帯もカバーする勤務シフト(16時出庫翌10時帰庫等)への変更」が進められています。隔日勤務といっても始業時刻は会社や出番によってさまざまで、大和自動車交通も基本の勤務のほかに5種類の勤務体系があるとしています。生活リズムに合う出番があるかは、面接で具体的に確認する価値があります。

統計で見るタクシー運転者の労働時間

全タク連が厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」を集計した資料では、タクシー運転者の月間労働時間は192時間(所定内169時間・所定外23時間)で、全産業の173時間より19時間長くなっています。都道府県別では北海道223時間、山口224時間、三重216時間が長く、大分132時間、石川143時間が短いなど、地域差が大きいのが特徴です。ここでいう労働時間は休憩を含まないため、改善基準告示の拘束時間(休憩込み)とは数字が一致しません。

年収は全国平均で450万8,200円、東京で570万3,500円です(同資料)。地域別の数字はタクシー運転手の年収(都道府県別47表)に、主要都市の働き方の違いは都市別のタクシーの働き方にまとめています。

隔日勤務の求人を見るときの確認項目

改善基準告示は上限を定めたもので、実際の勤務はその範囲で会社ごとに組まれます。求人票や面接で次の点を確認しておくと、入社後の働き方とのずれを減らせます。

  1. 拘束時間と休憩:始業・終業の時刻と休憩時間。「実働」表記なら休憩を足して拘束時間に直す。
  2. 月の乗務回数:11回・12回・13回から選べるか。270時間への延長月があるか。
  3. 出番の種類:朝出庫・昼出庫・夕方出庫など、選べる始業時刻。
  4. 日勤への切り替え:隔日勤務と日勤の併用は一定期間ごとの交替が原則のため、切り替えの単位と手続き。
  5. 賃金と保証:隔日勤務と日勤で保証額や歩合率が違うか。
  6. 仮眠・休憩の設備:仮眠室やシャワーの有無(大和自動車交通は仮眠室・個室シャワールームを、日本交通は食堂・仮眠室・大浴場を福利厚生に記載)。

隔日勤務の求人は隔日勤務の求人、日勤を希望する場合は日勤のみの求人、夜の時間帯を中心に働きたい場合は夜勤ありの求人で絞り込めます。法人タクシー全体は法人タクシーの求人、職種別はタクシードライバー求人から探せます。

出典・一次情報

本記事の制度と数字は、次の公表資料に基づいています(いずれも2026年10月13日閲覧)。

勤務条件の変更について

各社の勤務時間・乗務回数・保証額は閲覧日時点の公表内容です。営業所や出番によって条件が異なる場合があるため、応募前に最新の募集要項と面接で確認してください。上の1か月の拘束時間は、公表された基本の時間をもとにした計算例です。