外国人のタクシー運転手と在留資格|結論
この記事の結論
外国人がタクシー運転手として働く道は、主に「就労制限のない在留資格(永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者)」と「特定技能1号(自動車運送業分野・タクシー)」の2つです。
特定技能でタクシー運転手になるには、出入国在留管理庁と国土交通省の運用方針・運用要領により、自動車運送業分野特定技能1号評価試験(タクシー)の合格、日本の第二種運転免許、日本語能力試験N3以上(B1相当)、新任運転者研修の修了が必要です。2026年1月23日の閣議決定で、日本語サポーターが同乗する場合はA2.2相当(N4など)でよいとする見直しが決まりました。
二種免許は日本で取る必要があり、外国の免許からの切替(外免切替)で得られるのは第一種免許です。そのための準備期間として在留資格「特定活動」で最長1年(更新不可)の在留が認められます。
自動車運送業分野(トラック・バス・タクシーの合計)の特定技能1号の在留者は703人(2026年7月末・速報値)で、受入れ見込数22,100人に対して3.2%です。
外国籍の人や、外国人ドライバーの採用を考える人から多い疑問が「どの在留資格ならタクシーの運転ができるのか」です。この記事では、出入国在留管理庁(入管庁)・国土交通省・厚生労働省・警視庁などの公表資料だけを使い、在留資格ごとの扱いと、特定技能で乗務を始めるまでの手順を整理します。
在留資格の許可は個々の事情を審査して決まるもので、この記事は一般的な制度の説明です。個別の可否は、最寄りの地方出入国在留管理官署や受入れ予定の会社に確認してください。
在留資格で分かれる働き方|就労制限のない4資格と特定技能
厚生労働省は、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の4つを「就労活動に制限がない在留資格」としています。入管法別表第二の「身分または地位」に基づく在留資格で、これらの人は日本人と同じように二種免許を取ってタクシー会社に応募できます。
| 在留資格 | タクシー運転の仕事との関係 | 根拠・出典 |
|---|---|---|
| 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者 | 就労活動に制限なし。二種免許を取れば応募できる | 厚生労働省「外国人の方を雇い入れる際には、就労が認められるかどうかを確認してください」 |
| 特定技能1号(自動車運送業分野) | 業務区分「事業用自動車(タクシー)の運転、運転に付随する業務全般」。運行業務(安全な旅客の輸送等)と接遇業務(乗客対応等)が対象 | 入管庁・国交省ほか「自動車運送業分野の運用方針・運用要領」 |
| 特定活動(特定自動車運送業準備) | 特定技能1号になる準備として、免許取得の手続き(教習所への通所を含む)・新任運転者研修の受講・車両の清掃などの関連業務が認められる。乗務そのものではない | 入管庁「特定活動(特定自動車運送業準備)」 |
| 留学、家族滞在 | 資格外活動許可で原則週28時間まで就労できるが、運用要領は、日本の免許を取得したあと資格外活動許可を得て新任運転者研修を修了した人が、特定活動を経ずに特定技能1号へ移行できる道を示している | 厚生労働省、入管庁「運用要領」 |
上の表以外の就労資格(例えば「技術・人文知識・国際業務」)でタクシーの運転業務に就けるかは、それぞれの在留資格で認められた活動の範囲によります。本記事で確認した公表資料のうち、タクシーの運転を業務として明記している就労資格は特定技能1号(自動車運送業分野)だけでした。迷う場合は入管庁に確認してください。
特定技能「自動車運送業」でタクシー運転手になる要件
自動車運送業分野は、2024年3月29日の閣議決定で特定技能の対象分野に加わりました。「自動車運送業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」(運用方針)と運用要領が定める、タクシーの業務区分の要件は次のとおりです。
| 項目 | タクシー運送業の要件 |
|---|---|
| 技能水準 | 自動車運送業分野特定技能1号評価試験(タクシー)の合格と、第二種運転免許(各都道府県公安委員会が行う第二種運転免許試験による) |
| 日本語能力 | 日本語能力試験N3以上、または日本語教育の参照枠のB1相当以上(2026年1月の見直し内容は次の節) |
| 研修 | 新任運転者研修の修了(業界団体が定めた効果測定の基準に達する必要あり) |
| 雇用形態 | 直接雇用に限る |
| 受入れ会社の条件 | 道路運送法の自動車運送事業を経営していること、国交省の「自動車運送業分野特定技能協議会」の構成員になること、日本海事協会の運転者職場環境良好度認証(働きやすい職場認証制度)を受けていること、新任運転者研修を実施すること など |
新任運転者研修は、運用要領で「旅客自動車運送事業運輸規則第38条・第39条に規定する指導監督と特別な指導を受け、適性診断を受けること」と定義されています。日本人の新人ドライバーが受ける法定の指導と同じ枠組みで、中身はタクシーの新人研修の内容と適性診断(初任診断)で解説しています。
日本語要件の見直し|日本語サポーター同乗ならA2.2相当
関東運輸局の説明資料(2026年3月6日)によると、「乗合バス・タクシー運転者の一部について、日本語能力要件の変更」が2026年1月23日に閣議決定されました。同資料と国交省の協議会資料による見直しの内容は次のとおりです。
| 場面 | 見直し前(同資料の「現行」) | 見直し後 |
|---|---|---|
| 特定活動での入国時 | B1以上(N3以上) | 乗合バス・タクシーはA2.2(N4)以上、貸切バスはB1(N3)以上 |
| 特定技能1号 | B1以上(N3以上) | 原則B1(N3)以上。乗合バス・タクシーに日本語サポーターを乗務させる場合はA2.2(N4)以上 |
B1に届いていない人を受け入れる会社は、本人の同意のもとで「日本語学習プラン」(特定技能1号の取得から1年以内の試験合格を見据えた内容)を作るとされています。日本語サポーターには、会社の運転士を引退した人などが想定されています。資料では見直しの適用開始日を確認できなかったため、実際の申請時期の要件は入管庁の最新の運用要領で確認してください。
受入れ見込数と在留者数
運用方針(2024年3月)は、5年後にタクシー運送業で6万7,000人程度の人手不足が生じると推計し、自動車運送業分野全体の受入れ見込数を2万4,500人としていました。2026年1月23日の閣議決定で、この見込数は2万2,100人(2029年3月末まで)に見直されています。
| 時点 | 自動車運送業分野の特定技能1号在留者数(トラック・バス・タクシーの合計) |
|---|---|
| 2025年12月末 | 151人 |
| 2026年6月末 | 558人 |
| 2026年7月末(速報値) | 703人(受入れ見込数に対する充足率3.2%) |
入管庁の公表は分野単位で、タクシー運転手だけの在留者数は公表されていません。
タクシー運転手の求人をチェック
求人一覧を見る来日から乗務開始までの流れ|特定活動は最長1年・更新不可
タクシーの特定技能では日本の二種免許と新任運転者研修が前提になるため、それらを済ませるための在留資格「特定活動(特定自動車運送業準備)」が設けられています。入管庁の案内では、在留期間はタクシー運転者とバス運転者が1年、トラック運転者が6か月で、更新はできません。この期間は特定技能1号の通算在留期間(上限5年)には含まれません。
- 評価試験(タクシー)と日本語試験に合格:海外または日本で受験。
- 採用・雇用契約:受入れ会社と直接雇用の契約を結ぶ。
- 在留資格「特定活動」で入国:運転免許と新任運転者研修以外の要件は、特定技能1号と同じ基準で審査される。
- 外免切替で第一種免許、続けて二種免許を取得:国交省・関東運輸局の資料の工程図には、外免切替から二種免許の取得までに「約6か月」の目安が書かれている。
- 新任運転者研修:座学(法令・接遇・地理・安全など)と実車研修(構内走行・路上走行)。外国人ドライバー向けの日本語研修も行われる。
- 在留資格「特定技能1号」へ変更し乗務開始:免許と研修が終わったら、特定活動の期間が残っていても速やかに変更を申請する。
すでに留学や家族滞在で日本にいる人は、日本の免許を取り、資格外活動許可を得て新任運転者研修を修了すれば、特定活動を経由せずに特定技能1号へ移行できると運用要領は説明しています。
評価試験(タクシー)|受験資格・受験料・合格状況
自動車運送業分野特定技能1号評価試験は、一般財団法人日本海事協会が実施しています。国交省の協議会(2026年3月9日)に同協会が提出した実施報告によると、受験資格は満17歳以上の外国人(インドネシアでの試験は満18歳以上)で、試験当日に有効な日本または海外の運転免許(普通自動車以上)を持っていることです。
| 項目 | 内容(2026年3月の実施報告) |
|---|---|
| 受験料 | 国内5,000円(税抜)、海外37USドル |
| 試験方法 | CBT方式(本人が場所と日時を予約し試験センターで受験)と、出張試験方式(企業や送出機関などが会場を用意。海外は1回50名分以上の申込みが必要) |
| CBT実施国 | 日本、インド、インドネシア、ウズベキスタン、カンボジア、キルギス、スリランカ、タイ、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、フィリピン、マレーシア、ミャンマー、モンゴル、ラオスの16か国 |
| タクシー区分の結果(2026年1月31日時点で合格発表済みの分) | 受験者507名、合格者372名、合格率73.4% |
同じ時点の区分別では、トラックが受験者5,134名・合格率71.6%、バスが476名・84.0%で、タクシーの受験者は全体(6,117名)の1割弱です。試験問題の言語や出題範囲の詳細は、日本海事協会の試験ポータル(sswt-portal.classnk.or.jp)で確認してください。
二種免許|外免切替は第一種のみ、学科試験は20言語
運用要領は、トラックの運転免許については外免切替を含む第一種免許としている一方、タクシーとバスは「各都道府県公安委員会が行う第二種運転免許試験」としています。外免切替の案内でも、熊本県警察は「切替の種類:第一種免許」と明記しています。つまり、母国でタクシー運転手だった人も、日本では二種免許の試験を受け直す必要があります。
外免切替の主な条件は、住所地の都道府県に住民票登録があること、有効な外国免許を持っていること、外国免許の取得後にその国に通算3か月以上滞在していたことです(熊本県警察、運用要領の参考資料)。
二種免許の受験資格は、道路交通法第96条第5項により原則21歳以上で、普通免許などを受けていた期間が通算3年以上(特例教習の修了者は19歳以上・1年以上)です。外国で運転していた期間をこの「期間」にどう扱うかは本記事で確認した公表資料では分からなかったため、受験前に住所地の運転免許試験場で確認してください。受験資格の全体は二種免許の受験資格にまとめています。
学科試験は外国語でも受けられます。警視庁は、第一種・第二種・仮免許の学科試験と外免切替の知識確認問題を20言語に対応させています(2026年5月11日更新)。
| 警視庁で第二種の学科試験を受けられる言語 | 受験日・試験場(警視庁の案内) |
|---|---|
| 英語、中国語、ベトナム語、ネパール語、ミャンマー語 | 府中・鮫洲で平日 |
| スペイン語、ペルシャ語、韓国語、ポルトガル語、ロシア語、タイ語、タガログ語、インドネシア語、クメール語、モンゴル語、ウクライナ語、シンハラ語、ウルドゥー語、アラビア語、ヒンディー語 | 府中は毎週火曜、鮫洲は毎週水曜 |
学科試験の出題範囲と配点は二種免許の学科試験、技能試験の課題は二種免許の技能試験で解説しています。
受入れのルールと求人の確認項目|免許費用・違約金・応募前のチェック
運用要領は、運転免許の取得費用について「所属機関が負担することが望ましい」とし、本人が負担する場合は採用時に本人が十分に理解できる言語で説明し、事前に了承を得るよう求めています。
また特定技能制度では、保証金の徴収や、契約を守らなかったときの違約金を定める契約が禁止されています。運用要領は、基準に触れるおそれがある例として、一定期間勤めることを条件に免許取得費用の返済を免除する契約や、返済途中で退職したら貸付金の残りを一括返済させる契約を挙げています。一方、会社が免許取得費用を賃金に含めて補うことは基準に触れないとしています。日本人向けの養成制度でよく見る「一定期間内に辞めたら費用返還」という仕組みは、特定技能の外国人にはそのまま使えない点に注意が必要です。日本人向けの養成制度の仕組みは二種免許の養成制度で整理しています。
求人を見るときの確認項目
外国籍の人がタクシー会社の求人に応募するときは、次の点を確認しておくと手続きのずれを防げます。
- 自分の在留資格で応募できるか:就労制限のない4資格か、特定技能での受入れを予定しているか。
- 会社が特定技能の受入れ条件を満たしているか:自動車運送業分野特定技能協議会の構成員か、働きやすい職場認証を受けているか。
- 二種免許の取得方法と費用負担:教習所の手配、費用を誰が払うか、その説明が理解できる言語で行われるか。
- 日本語の支援:日本語研修や、日本語サポーターの同乗の有無。
- 勤務形態と給与の仕組み:隔日勤務か日勤か、歩合給と給与保証の有無。
タクシーの求人はタクシードライバー求人から、二種免許の取得支援がある会社は二種免許の養成制度ありの求人から探せます。訪日外国人のお客様に対応する仕事に関心がある場合はインバウンド対応の求人や観光タクシー・インバウンド対応ドライバーも参考にしてください。
出典・一次情報
本記事の制度と数字は、次の公表資料に基づいています(いずれも2026年10月閲覧)。
- 出入国在留管理庁「自動車運送業分野」(2025年7月15日現在)、「自動車運送業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」、「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-自動車運送業分野の基準について-」(令和7年7月15日一部改正) 分野ページ/運用方針(PDF)/運用要領(PDF)
- 出入国在留管理庁「自動車運送業分野の『特定技能1号』になるための準備活動を希望する場合(『特定活動』(特定自動車運送業準備))」 moj.go.jp
- 出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数(令和8年6月末)のポイント」(令和8年9月)・「特定技能1号の受入れ見込数及び在留者数について(令和8年7月末時点・速報値)」 6月末(PDF)/7月末(PDF)
- 出入国在留管理庁「在留資格一覧表」 moj.go.jp/厚生労働省「外国人の方を雇い入れる際には、就労が認められるかどうかを確認してください」 mhlw.go.jp
- 国土交通省「第2回自動車運送業分野特定技能協議会」資料1「自動車運送業分野の現状」・資料2「特定技能1号評価試験 実施報告」(日本海事協会、2026年3月) 資料1(PDF)/資料2(PDF)/「特定技能制度における自動車運送業分野の制度概要」 mlit.go.jp(PDF)
- 関東運輸局「特定技能制度について 自動車運転業分野(バス・タクシー)」(令和8年3月6日) wwwtb.mlit.go.jp(PDF)
- 道路交通法 第96条(e-Gov法令検索) laws.e-gov.go.jp
- 警視庁「外国語により受験できる学科試験について」(2026年5月11日更新) keishicho.metro.tokyo.lg.jp/熊本県警察「外国免許からの切替え」(2026年10月1日更新) pref.kumamoto.jp
- 一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「TAXI TODAY in Japan 2026」 driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp(PDF)
制度の変更について
特定技能の要件は閣議決定や運用要領の改正で変わります。2026年1月の日本語要件の見直しのように、資料によって反映時期が異なる場合があります。申請や応募の前に、入管庁と国土交通省の最新の公表、受入れ予定の会社の説明で確認してください。全タク連は「TAXI TODAY in Japan 2026」で、外国人在留資格特定技能1号制度の活用をドライバー確保の取り組みの一つに挙げています。




