介護タクシーの年収|結論
この記事の結論
介護タクシー運転者だけの年収統計は公表されておらず、雇われて働く場合の給与は会社の賃金の決め方(時給・月給・成果給・手当)で大きく変わります。
公式採用ページで確認できた例では、つばめタクシーグループのケアアテンダントが月給31万7,000円〜57万2,000円+成果給(売上の42%程度)、京都のキャビックが月給19万740円〜(基本給+各種手当+歩合給)に介護手当を3か月ごとに支給、大和自動車交通の福祉ハイヤー乗務員(パート)が時給1,500円です。
介護保険の通院等乗降介助は令和6年度改定で1回97単位(改定前99単位)、片道ごとに算定され、運賃とは別に事業所へ入ります。ただし運転している時間そのものは算定の対象外で、介護報酬がどれだけ運転者の給与に反映されるかは会社の賃金規程しだいです。
「介護タクシー 年収」で調べると、求人サイトの平均額や開業した人の体験談が多く出てきます。しかし、会社に雇われて働く場合の収入は、どの会社のどんな給与制度で働くかでほぼ決まり、平均額だけを見ても自分の収入は見えてきません。
この記事では、雇われて働く立場に絞り、会社の公式採用ページで公表されている給与例と、介護保険の通院等乗降介助の報酬がどこに入るのかという仕組みを、厚生労働省の原文と全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)の資料で整理します。仕事内容や必要な資格は介護タクシーの求人と働き方、自分で開業する場合は介護タクシーの開業に必要な資格と許可で解説しています。開業した場合の収入はこの記事では推計しません。
介護タクシー運転者の年収統計は公表なし|参考になる2つの統計
厚生労働省の賃金構造基本統計調査の「役職及び職種解説」では、介護タクシー運転者は「タクシー運転者」(職種番号1612)に含まれる職種の例として挙げられています。つまり国の賃金統計では、介護タクシーの運転者は一般のタクシー運転者と一緒に集計されており、介護タクシー運転者だけの年収は公表されていません。
参考になるのは、タクシー運転者全体の統計と、介護保険の訪問介護事業所で働く介護職員の統計です。どちらも介護タクシーの仕事に限った数字ではなく、集計の対象も定義も違う別物である点に注意してください。
| 統計(対象) | 主な数字 | 年齢・時間 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 全タク連「令和7年賃金構造基本統計調査によるタクシー運転者の現況」(タクシー運転者・介護タクシー運転者を含む) | 年間推計額450万8,200円(月間給与35万9,200円×12+年間賞与19万7,800円) | 平均56.8歳、月間労働時間192時間(所定内169時間・所定外23時間) | 一般のタクシー運転者がほとんどを占める職種全体の平均 |
| 厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査」(訪問介護事業所の介護職員・月給で常勤の者) | 平均給与額34万9,740円(令和6年9月) | 平均49.2歳、勤続8.8年、実労働164.1時間 | 介護職員等処遇改善加算を取得している事業所が対象。運転業務をしない訪問介護員を含む |
| 同上(訪問介護事業所の介護職員・時給で非常勤の者) | 平均給与額11万7,560円(令和6年9月) | 平均59.9歳、実労働65.1時間 | 短時間勤務の人が中心の月額 |
処遇状況等調査の「平均給与額」は、基本給(月額)+手当+一時金(4〜9月の支給額の6分の1)で計算した月額で、年収ではありません。全タク連の年間推計額は「月間給与×12+年間賞与」で、計算方法が違うため両者をそのまま比べることはできません。都道府県別のタクシー運転者の年収はタクシー運転手の年収(都道府県別)にまとめています。
公式採用ページで公表されている給与例
介護タクシー・福祉輸送の仕事について、会社の公式採用ページ(会社が運営する採用サイトを含む)で給与を確認できたものを並べます(2026年10月閲覧)。順位は付けておらず、記載どおりに引用しています。
| 会社・職種(勤務地) | 雇用形態・勤務 | 給与(公表どおり) | 給与の仕組みに関する記載 |
|---|---|---|---|
| つばめタクシーグループ ケアアテンダント(愛知県名古屋市緑区) | 正社員。変形労働時間制(週40時間)。例:昼7:00〜18:00、夜20:00〜翌7:00、月20〜24日勤務 | 月給31万7,000円〜57万2,000円+成果給。研修期間(試用期間6か月のうち35日間)は月給20万9,300円〜 | 売上に応じて基本給に加え成果給(売上の42%程度)。賞与年3回。皆勤・回数・家族・資格・役職などの手当 |
| キャビック タクシー乗務員(介護ドライバーを含む。京都市右京区) | 正社員。2車3人制は所定8時間30分、1車2人制は7時間20分 | 2車3人制:月給19万740円〜75万円、1車2人制:月給19万2,536円〜75万円 | 内訳は基本給(最低賃金×所定労働時間)+各種手当+歩合給+時間外手当。介護対応の実績は介護手当として3か月ごとに支給。賞与年3回。福利厚生に処遇改善手当(対象・条件は規程による) |
| 大和自動車交通 福祉ハイヤー乗務員(東京都千代田区・日比谷営業所) | パートタイム。7時〜17時(実働8時間・休憩2時間、残業なし) | 時給1,500円(研修期間中は1,226円) | 交通費1日1,000円まで。業務は特別支援学校への児童・生徒の送迎(1BOX車)、福祉バス添乗員 |
| 静岡ひかりタクシー 昼勤務中心の介護タクシー運転手(静岡市葵区) | 正社員。7時始業・18時半終業、2日勤務して1日休み | 平均月給20万6,000円、平均年収255万円(いずれも平成30年度実績) | 昇給あり、賞与年3回。採用ページの数字は平成30年度のもので、現在の水準は公表なし |
同じ「介護タクシー」の仕事でも、時給で働くパート、最低賃金を基本給にして歩合給と手当を足す正社員、高めの月給に成果給を足す正社員と、給与の組み立て方がまったく違います。キャビックは「介護専属ではありません。通常は一般タクシーとして営業し、介護の予約が入った際に対応します」と説明しており、つばめタクシーグループもケアアテンダントの予約がない時間は一般のタクシー業務を行うとしています。タクシー会社で働く介護タクシー乗務員の収入は、介護の仕事と一般のタクシー営業を合わせた売上で決まる部分が大きいということです。
東京の大手は一般乗務員の募集要項が中心
日本交通と国際自動車の公式募集要項は一般のタクシー乗務員の条件で、介護専任の給与は別に示されていません。参考までに、日本交通は「給与:218,240円+歩合給」「入社3ヶ月40万、その後9ヶ月35万保証」、国際自動車は「月給:21万8240円〜+歩合給+諸手当」「研修終了後6ヶ月間、30万円(日勤の場合は23万円)の月給補償制度」と記載しています。日本交通グループの羽田交通は、入社後のステップアップ先として高齢のお客様などを担当する「サポートタクシー」を紹介していますが、その給与は別に公表されていません。給与保証の仕組みはタクシーの給与保証の仕組みで解説しています。
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求人一覧を見る給与の決まり方|固定給型・歩合型・手当型の3つ
公表されている例を給与の決まり方で分けると、次の3つの型になります。実際には、1つの会社が複数の型を組み合わせています。
| 型 | 公表例 | 収入が変わる要因 |
|---|---|---|
| 時給・固定給型 | 大和自動車交通の福祉ハイヤー乗務員(時給1,500円) | 勤務時間と日数。売上による変動は小さい |
| 月給+成果給(歩合)型 | つばめタクシーグループ(成果給は売上の42%程度)、キャビック(基本給+歩合給) | 介護の予約と一般のタクシー営業を合わせた売上、勤務日数、時間帯 |
| 手当の上乗せ型 | キャビック(介護手当を3か月ごと、処遇改善手当)、つばめタクシーグループ(資格手当) | 介護対応の実績、介護資格の有無、会社の規程 |
歩合給の計算方法はタクシーの歩合給の計算方法で、運賃の仕組みはタクシー運賃の仕組みで解説しています。介護タクシーの場合、歩合の対象になる「売上」に介護保険の報酬が含まれるかどうかは会社の規程によって違い、公表されている募集要項では明記されていないことがほとんどです。面接で確認すべき大事な点です。
介護保険の通院等乗降介助|1回97単位と算定の要件
介護タクシーの収入の仕組みを理解するうえで欠かせないのが、介護保険の「通院等乗降介助」です。厚生労働省は通院等乗降介助を、「要介護者である利用者に対して、通院等のため、指定訪問介護事業所の訪問介護員等が、自らの運転する車両への乗車又は降車の介助を行うとともに、併せて、乗車前若しくは降車後の屋内外における移動等の介助又は通院先若しくは外出先での受診等の手続、移動等の介助を行うサービス」と定義しています。
| 項目 | 内容(厚生労働省の資料どおり) |
|---|---|
| 単位数 | 1回につき97単位(令和6年度改定前は99単位)。令和8年6月改定後の算定構造でも97単位 |
| 算定の単位 | 片道につき算定。乗車と降車を分けて算定することはできない |
| 対象者 | 要介護者(居宅サービス計画に位置付けられていることが必要) |
| 運賃との関係 | 移送に係る経費(運賃)は介護保険の対象ではない |
| 1単位の単価(訪問介護) | 地域区分により10円(その他)〜11.40円(1級地) |
| 利用者の負担 | 介護報酬の1割、2割または3割(運賃は別に利用者が支払う) |
97単位を円に直すと、1単位10円の地域で970円、1級地(11.40円)で約1,106円が片道1回分の基本の報酬です(加算は含まない)。自宅から病院への往復なら2回分になります。
算定の要件|運転している時間は対象外
厚生労働省の留意事項通知(平成12年老企第36号)は、通院等乗降介助の算定について次のように定めています。
- 運転時間は対象外:「移送行為そのものすなわち運転時間中は当該所定単位数の算定対象ではなく、移送に係る経費(運賃)は、引き続き、評価しない」。道路運送法などに抵触しないよう留意することも求めています。
- 具体的な介助が必要:車への乗降の介助に加えて、乗車前・降車後の屋内外の移動等の介助か、通院先での受診等の手続き・移動等の介助を行う場合に算定対象になります。「乗降時に車両内から見守るのみでは算定対象とならない」と明記されています。
- 一連のサービスとして1回:居室内での声かけ・説明や通院先での院内の移動介助は通院等乗降介助に含まれ、別に身体介護として算定できません。複数の訪問介護員等が交代しても1回の算定です。
- ケアプランへの位置付け:乗降が必要な理由、乗降時の介助を要すると判断した旨などを居宅サービス計画に明記する必要があります。
- 身体介護中心型との区分:要介護4・5の利用者に、乗降の前後に連続して20〜30分程度以上の手間のかかる身体介護を行う場合は、所要時間に応じた身体介護中心型を算定し、通院等乗降介助は算定しません。
また令和8年6月の介護給付費分科会資料では、目的地が複数ある場合でも居宅が始点または終点となる場合には、病院から病院への移送などの目的地間の乗降介助も、同一の事業所が行うことを条件に算定できると説明されています。
事業所に入るお金の構造|運賃と介護報酬は別々に入る
厚生労働省の資料の図では、自宅から病院までの移動は「輸送サービス」(運賃)、乗車・降車の介助や屋内外の移動介助は「介護保険」(97単位)と、1回の送迎の中で2つのお金が分かれて描かれています。運賃を受け取る輸送には道路運送法の許可が必要で、介護報酬を受け取るには指定訪問介護事業所であることが必要です。介護保険タクシーを運営する事業所には、次のお金が入る構造です。
- 運賃:利用者が支払う。介護保険の対象外。
- 通院等乗降介助の介護報酬:片道1回97単位。1〜3割を利用者が負担し、残りは介護保険から支払われる。
- 加算:訪問介護事業所が要件を満たして届け出た場合の特定事業所加算や介護職員等処遇改善加算など。
ただし、こうして事業所に入るお金が、そのまま運転者個人の収入になるわけではありません。介護報酬の扱いは会社ごとに違い、介護手当として支給する会社(キャビック)や、売上全体に対する成果給で支給する会社(つばめタクシーグループ)など、給与への反映方法は賃金規程で決まります。
介護職員等処遇改善加算|訪問介護は加算率が高い
介護職員等処遇改善加算は、令和6年度改定で3つの加算を一本化して作られた加算で、「介護職員等処遇改善加算を除く加減算後の総報酬単位数」に加算率を掛けて算定します。訪問介護の加算率は令和6年度改定時に14.5%〜24.5%、令和8年6月からの拡充後は加算Ⅰイ27.0%・Ⅰロ28.7%・Ⅱイ24.9%・Ⅱロ26.6%・Ⅲ20.7%・Ⅳ17.0%です。令和6年度改定では一本化後の加算について「事業所内での柔軟な職種間配分を認める」とされ、令和8年度の拡充では対象が介護職員から介護従事者に広げられました。
通院等乗降介助の単位も総報酬単位数に含まれるため、加算を取得している訪問介護事業所では、乗降介助の報酬にも加算が上乗せされます。ただし、加算をどの職員にどう配分するかは事業所が決めるため、介護タクシーの運転者がどれだけ受け取るかは勤め先しだいです。求人票に「処遇改善手当」と書かれていれば、対象や条件を確認しておくとよいでしょう。
統計で見る通院等乗降介助の規模
令和8年6月の介護給付費分科会資料によると、令和7年3月サービス提供分で通院等乗降介助は月30万3,400回算定され、算定した事業所は2,688でした。単純に割ると1事業所あたり月約113回で、97単位で計算すると1事業所あたり月およそ1万1,000単位(1単位10〜11.40円なら約11万〜12万5,000円、加算を除く)になります。これは事業所全体の数字を割った目安で、運転者1人あたりの収入を示すものではありません。介護報酬は運賃とは別の収入源ですが、介護タクシー運転者の給与の大部分を占めるとまでは言えない規模だということは押さえておきましょう。
介護タクシーの求人で収入を確かめるときの確認点
公表されている給与の幅が広い分、面接で確認しておきたい点がいくつかあります。
- 給与の型:時給・固定給か、最低賃金を基本給にした歩合給か、月給+成果給か。
- 歩合・成果給の対象:介護保険の報酬や介護の予約分の運賃が「売上」に含まれるか。
- 介護関係の手当:介護手当・資格手当・処遇改善手当の有無と、支給の頻度や条件。
- 介護と一般営業の割合:介護専属か、予約がない時間は一般のタクシー営業をするのか。
- 研修期間と保証:研修期間中の給与、入社後の給与保証の有無と期間。
- 資格取得の支援:二種免許と介護職員初任者研修の費用を誰が負担するか。
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出典・一次情報
本記事の制度と数字は、次の公表資料と会社の公式採用ページに基づいています(いずれも2026年10月14日閲覧)。
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第259回(令和8年6月29日)資料1「訪問介護」 mhlw.go.jp(PDF)
- 厚生労働省 同分科会 第239回(令和6年1月22日)参考資料1「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」 mhlw.go.jp(PDF)/参考資料2-2「介護報酬の算定構造(R6.6.1)」 同(PDF)
- 厚生労働省「介護報酬の算定構造(令和8年6月改定箇所)」 mhlw.go.jp(PDF)/「介護職員等処遇改善加算の拡充」(令和8年度報酬改定) 同(PDF)
- 厚生労働省 同分科会 第262回(令和8年8月5日)資料3「地域区分」 mhlw.go.jp(PDF)
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準…の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成12年3月1日老企第36号、平成27年改正時の新旧対照) mhlw.go.jp(PDF)
- 厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」(調査時期 令和6年10月)第73表・第75表 mhlw.go.jp(PDF)
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査 役職及び職種解説」 e-stat.go.jp(PDF)
- 一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」(令和8年5月、2026年10月6日付【最新版】) taxi-japan.or.jp(PDF)
- つばめタクシーグループ採用サイト「<緑区>ケアアテンダント」 tsubame-recruit.com
- キャビック採用サイト「介護ドライバー」 recruit.cabik.co.jp/「募集要項 タクシー乗務員(正社員)」 同
- 大和自動車交通「福祉ハイヤー乗務員 パートタイム採用募集要項」 daiwaj.com
- 静岡ひかりタクシー採用情報サイト「昼勤務中心の介護タクシー運転手」 hikaritaxi-recruit.com
- 日本交通 募集要項 nihon-kotsu-recruit.jp/国際自動車 募集要項 km-recruit.jp/羽田交通 採用情報 haneda-kotsu.co.jp
条件の変更について
給与・勤務条件は閲覧日時点の各社の公表内容で、募集は終了・変更されることがあります。介護報酬の単位数・加算率は改定で変わるため、最新の告示・通知を確認してください。1事業所あたりの回数や報酬額は、公表された合計値を編集部が単純に割った目安です。




