タクシーの副業|結論

この記事の結論

タクシーの副業ができるかは、まず本業とタクシー会社それぞれの就業規則で決まり、両方に雇われて働く場合は労働基準法第38条により労働時間が通算されます。
厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)第70条は「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」としたうえで、労務提供上の支障・企業秘密の漏洩・信頼関係の破壊・競業の4つの場合には禁止や制限ができると定めています。その解説は、改善基準告示に基づく会社の義務が果たせないおそれがある場合も「労務提供上の支障」に含めています。
他社で働いた時間を改善基準告示の拘束時間に含めるかを直接定めた記載は、厚生労働省の通達・Q&Aに見当たりませんでしたが、運輸規則は睡眠不足などで安全に運転できないおそれのある乗務員の乗務を禁じています。
公表例では、日の丸交通が乗務員に「会社が定める規定の範囲内であれば、運転業務以外の副業は可能」としています。

この記事では、厚生労働省のモデル就業規則と「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定)、労働基準法、改善基準告示の通達、国土交通省の運輸規則、タクシー会社の公式採用ページだけで、副業としてタクシーで働く・副業をしながら乗務するときのルールを整理します。短時間勤務の時給や日数はタクシーの定時制・パート乗務員で、ライドシェアの仕組みはライドシェアドライバーの求人と仕組みで詳しく扱っています。

「タクシーの副業」は2通り|乗務を副業にするか、乗務員が副業をするか

タクシーと副業の組み合わせは、大きく次の2つに分かれます。どちらでも本業側・副業側の両方のルールを確認する点は同じですが、届け出る先や注意点が変わります。

項目A:本業があり、タクシー乗務を副業にするB:タクシー乗務員が、別の仕事を副業にする
主な働き方の例定時制・パート乗務員として本業の休日に乗務する、日本版ライドシェアのドライバーになる明けや公休に別の会社でアルバイトをする、個人で仕事を請け負う
最初に確認する規則本業の就業規則(副業の可否・届出)と、タクシー会社の採用条件タクシー会社の就業規則(副業の可否・範囲・届出)
免許タクシーは普通第二種免許が必要。ライドシェアは第一種免許で可(初心運転者期間を除く)副業の内容による
労働時間の通算両方で雇用される場合は通算(労働基準法第38条)副業先でも雇用される場合は通算。個人で請け負う場合は通算されない
特に注意する点本業の疲れを残したまま乗務しない(点呼で睡眠不足の有無を確認される)明けや休息期間を副業に使い、乗務前の休養が削られないようにする

国家公務員は、報酬を得て他の事業に従事するには許可が必要です(国家公務員法第104条)。この記事は民間企業で働く人を前提にしています。

就業規則で決まること|モデル就業規則第70条と副業・兼業ガイドライン

副業ができるかどうかを最初に決めるのは、法律ではなく勤め先の就業規則や労働契約です。副業・兼業の促進に関するガイドラインは、労働者は「まず、自身が勤めている企業の副業・兼業に関するルール(労働契約、就業規則等)を確認し、そのルールに照らして、業務内容や就業時間等が適切な副業・兼業を選択する必要がある」としています。

モデル就業規則の規定|原則は認め、4つの場合に禁止・制限

厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)第70条は、次のように定めています。

  • 第1項:労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
  • 第2項:会社は、労働者からの届出に基づき、(1)労務提供上の支障がある場合、(2)企業秘密が漏洩する場合、(3)会社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合、(4)競業により企業の利益を害する場合には、これを禁止または制限することができる。

ガイドラインは、裁判例を踏まえ企業に「原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である」とし、副業の相談や自己申告を理由に不利益な取扱いをすることはできないとしています。ただしモデル就業規則はあくまで「モデル」で、実際には禁止・許可制・届出制の会社もあります。

タクシーで特に問題になる「労務提供上の支障」

モデル就業規則の解説は、第1号の「労務提供上の支障がある場合」に、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(平成元年労働省告示第7号)等の法令等に基づく使用者の義務が果たせないおそれがある場合」が含まれると説明しています。

さらに解説は、隔日勤務のタクシー運転手が非番日に会社に無断で輸出車の移送や船積みのアルバイトをした事例で、「タクシー乗務の性質上、乗務前の休養が要請されること等の事情を考えると、本件アルバイトは就業規則により禁止された兼業に該当すると解するのが相当である」とした裁判例(都タクシー事件、広島地裁決定昭和59年12月18日)を、留意点として紹介しています。一方で、運送会社の運転手が年に1、2回アルバイトをしたことを理由とする解雇を無効とした裁判例(十和田運輸事件、東京地判平成13年6月5日)も載っており、頻度や乗務への影響といった実態で判断されることが分かります。

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労働時間の通算|労働基準法第38条とガイドラインの考え方

労働基準法第38条第1項は「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定めています。ガイドラインによると、これには会社が異なる場合も含まれます(昭和23年基発第769号)。本業の会社とタクシー会社の両方に雇われれば、2社の労働時間を合わせて1日8時間・週40時間の法定労働時間(同法第32条)を超えるかを判断します。

項目ガイドラインの考え方
通算されるもの法定労働時間(労働基準法第32条)。一般の業務では、時間外労働と休日労働の合計で単月100時間未満・複数月平均80時間以内の要件も通算される。ガイドラインは、時間外労働の上限規制が適用除外・猶予される業務でも、法定労働時間は通算されるとしている
通算されないもの雇用されない働き方(フリーランス、独立、起業など)の時間。休憩・休日・年次有給休暇は、それぞれの会社ごとに適用される
開始前(所定労働時間)2社の所定労働時間を合計し、法定労働時間を超える部分は「時間的に後から労働契約を締結した使用者」の時間外労働になる
開始後(所定外労働時間)残業などの所定外労働時間を、行われた順に通算する
割増賃金通算して法定労働時間を超えた部分のうち、自社で働かせた時間について、各社が時間外の割増賃金を支払う
管理モデル(簡便な方法)先に契約した会社の法定外労働時間と後から契約した会社の労働時間の合計が単月100時間未満・複数月平均80時間以内になるよう各社が上限を決め、その範囲内なら相手先の実労働時間を毎回把握しなくてよい

なお、タクシーの運転の業務(一般乗用旅客自動車運送事業の業務)については、労働基準法第140条により、特別条項で延長できる時間外労働は年960時間以内とされ、単月100時間未満・複数月平均80時間以内の規定(第36条第6項第2号・第3号)は適用されません。タクシー乗務を含む副業で各社がどう上限を決めるかは、会社に確認してください。

例えば、平日に週40時間働く会社員が土曜日に乗務すると、後から契約したタクシー会社での時間は通算で法定労働時間を超える部分になり、ガイドラインに沿えばタクシー会社の時間外労働(36協定の範囲内・割増賃金の支払いが必要)として扱われます。こうした働き方を受け入れるかは会社が判断します。

他社での労働時間は「労働者からの申告等」で把握するとされているため、副業先の勤務日や時間を正確に伝えることが通算の前提です。

改善基準告示の拘束時間に他社の時間は含まれるか|確認できた範囲

タクシー乗務員には、拘束時間や休息期間の上限を定めた改善基準告示(日勤は1か月288時間、隔日勤務は1か月262時間など。詳しくはタクシーの2024年問題)も適用されます。

編集部が、改善基準告示の改正後全文、施行通達(令和4年12月23日 基発1223第3号)、「改善基準告示(令和6年4月1日適用)に関するQ&A」(令和7年3月11日追補版)、厚生労働省のパンフレット、副業・兼業ガイドラインとそのQ&Aを確認した範囲では、他の事業場で働いた時間を改善基準告示の拘束時間に含めるかどうかを直接定めた記載は見つかりませんでした(2026年10月確認)。ここは「公表なし」として、断定は避けます。

一方で、次の点は原文で確認できます。

  • パンフレットとQ&Aは、休息期間を「勤務と次の勤務との間にあって、休息期間の直前の拘束時間における疲労の回復を図るとともに、睡眠時間を含む労働者の生活時間として、その処分が労働者の全く自由な判断に委ねられる時間」と定義しています。休息期間は隔日勤務で継続24時間、日勤で継続11時間が基本です。
  • 国土交通省の運輸規則は、睡眠不足などで安全に運行できないおそれのある乗務員を乗務させることを禁じています(後述)。

拘束時間の計算に含まれるかどうかにかかわらず、明けや休息期間に別の仕事を入れれば、そのぶん乗務前の睡眠と回復の時間が減ります。隔日勤務の明けの位置づけはタクシーの隔日勤務で解説しています。

副業の扱いを公式に公表している会社の例

ガイドラインは、企業が副業・兼業を認めているかどうかや、条件付きで認める場合の条件を「自社のホームページ等において公表することが望ましい」としています。タクシー会社の公式採用ページで副業についての記載を確認できたものを並べます(2026年10月閲覧)。

会社・区分公式ページの記載読み取れること
日の丸交通(東京)正社員タクシードライバーよくある質問に「会社が定める規定の範囲内であれば、運転業務以外の副業は可能です」「タクシードライバーとしての勤務に支障が出ない範囲での副業を認めています」。募集要項に「副業OK(会社規定の範囲内)」乗務員の副業(パターンB)は、運転業務以外で、会社規定の範囲内が条件
日の丸交通 夢追人採用「自分の夢を追いかけながら働きたい」人向けの採用。隔日勤務は月8乗務上限(1乗務実働16時間)、昼日勤・夜日勤は月16乗務上限(同7時間45分)、公休は月14〜15日副業の可否ではなく、乗務回数の上限で別の活動との両立をしやすくした制度
日の丸交通 ライドシェアドライバー「無職または個人事業主や業務委託契約など、他の企業と雇用契約を結ばれていない方のみ、週20時間未満までであれば働くことができます」会社員が本業を続けながら応募する形は対象外
日本交通 ライドシェアドライバー東京ハイヤー・タクシー協会のガイドラインに従い、週40時間以上の労働契約がある人は採用不可。会社経営者・役員、個人事業主は週20時間まで。パート・アルバイトは週20時間まで、かつ他の仕事と合算して40時間まで副業として働くことは「可能ですが、条件がございます」とし、面接で就業状況を確認

公表していない会社が副業を認めていないとは限らないため、応募時に就業規則の該当条文を確認してください。短時間勤務の時給や日数を公表している会社は定時制・パート乗務員の記事で比較しています。

日本版ライドシェアの副業的な働き方

日本版ライドシェア(自家用車活用事業)は、タクシー会社が運行管理を行い、一般のドライバーが自家用車で有償運送をする制度です。国土交通省の通達(令和6年3月29日 国自安第181号ほか)は、許可の基準として、タクシー会社に「輸送の安全上支障のないよう、自家用車ドライバーの他業での勤務時間を把握すること」を求めています。運行できる地域や時間帯、報酬の仕組みはライドシェアドライバーの求人と仕組みを参照してください。

乗務の前提と安全のルール|二種免許・運転者登録・点呼・睡眠不足

副業であってもタクシーに乗務する以上、本業の乗務員と同じ法令が適用されます。主なものを条文で確認します。

ルール根拠内容
第二種免許道路交通法第86条旅客自動車を旅客自動車運送事業に係る旅客を運送する目的で運転しようとする者は、第二種免許を受けなければならない(普通自動車は普通第二種免許)
運転者登録タクシー業務適正化特別措置法第3条タクシー事業者は、国土交通大臣が指定する単位地域の原簿に登録を受けている者(登録運転者)以外を運転者として乗務させてはならない
過労防止旅客自動車運送事業運輸規則第21条第1項事業者は、過労の防止を十分考慮して、国土交通大臣が告示で定める基準に従って運転者の勤務時間と乗務時間を定め、守らせなければならない
酒気帯び・健康状態同規則第21条第4項・第5項酒気を帯びた乗務員を運行の業務に従事させてはならない。疾病、疲労、睡眠不足その他の理由で安全に運行できないおそれがある乗務員を従事させてはならない
点呼とアルコール検知器同規則第24条乗務前に酒気帯びの有無と、疾病・疲労・睡眠不足などで安全に運転できないおそれの有無を確認。乗務後も酒気帯びを確認。営業所に備えたアルコール検知器を使い、目視等とあわせて確認する
運転者の申出義務同規則第50条運転者は点呼を受けること、酒気を帯びているときや、疾病・疲労・睡眠不足などで安全に運転できないおそれがあるときは、その旨を事業者に申し出ること

副業で特に関係するのは睡眠不足の扱いです。本業明けにそのまま乗務する、タクシーの明けに夜まで別の仕事をする、といった組み方では、点呼で「安全に運転できないおそれ」があると判断され乗務できないことがあり得ます。点呼の流れはタクシーの点呼とアルコールチェック、健康診断や睡眠の管理はタクシー乗務員の健康管理で解説しています。

二種免許の費用と取り方は二種免許の費用と取り方、会社の養成制度は二種免許の養成制度があるタクシー会社で解説しています。短時間の副業で養成制度の対象になるかは会社に確認してください。

副業を始める前の確認項目|届出・時間・税金

ガイドラインとモデル就業規則が会社側の確認事項に挙げる項目は、働く側の準備リストになります。

  1. 両方の就業規則:副業が禁止・許可制・届出制のどれか。タクシー会社側で副業の範囲(日の丸交通の「運転業務以外」のような限定)があるか。
  2. 届け出る内容:副業先の事業内容・業務内容、契約期間、所定労働日と始業終業時刻、残業の見込み(モデル就業規則第70条の解説が挙げる確認事項)。
  3. 労働時間の上限:通算で法定労働時間を超えるか。各社の上限をどう決めるか。
  4. 休息の確保:明け・休息期間・乗務前夜に副業を入れていないか。点呼で睡眠不足を申告せずに済む組み方か。
  5. 雇用か請負か:副業が雇用でなければ労働時間は通算されません。ただしガイドラインは、その場合も会社が申告などで就業時間を把握し、長時間にならないよう配慮することが望ましいとしています。

税金|2か所から給与を受け取る場合

国税庁のタックスアンサー(No.1900)によると、給与を2か所以上から受けていて、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得・退職所得以外の各種の所得金額との合計額が20万円を超える人は、確定申告が必要です(給与の収入金額の合計額から所得控除の一部を差し引いた金額が150万円以下で、各種の所得金額の合計が20万円以下の人は不要、などの例外があります)。タクシー会社と本業の両方から給与を受け取る場合は、この基準で申告の要否を確認してください。

副業向きの求人の探し方

本業の休日に乗務したい人は、日勤のみの求人、ライドシェアドライバー求人、業態「ライドシェア」の求人から探せます。副業の扱いを公表している会社は日の丸交通、日本交通のページにまとめています。本業としてタクシーに転職する場合はタクシードライバー求人から探せます。

出典・一次情報

本記事の制度と記載は、次の公表資料と公式ページに基づいています(いずれも2026年10月閲覧)。

  • 厚生労働省「モデル就業規則」(令和7年12月版)第70条(副業・兼業)と解説 mhlw.go.jp(PDF)
  • 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(平成30年1月策定、令和2年9月・令和4年7月改定) mhlw.go.jp(PDF)/同ガイドライン Q&A(令和4年7月改定版) 同(PDF)/厚生労働省「副業・兼業」ページ mhlw.go.jp
  • 厚生労働省「改善基準告示(令和6年4月1日適用)に関するQ&A」(令和5年3月、令和7年3月11日追補) mhlw.go.jp(PDF)/施行通達 基発1223第3号(令和4年12月23日) 同(PDF)/「タクシー・ハイヤー運転者の労働時間等の改善基準のポイント」パンフレット 同(PDF)/改善基準告示 改正後全文 同(PDF)
  • 労働基準法 第32条・第38条・第140条 e-Gov法令検索/国家公務員法 第104条 同/道路交通法 第86条 同/タクシー業務適正化特別措置法 第3条 同/旅客自動車運送事業運輸規則 第21条・第24条・第50条 同
  • 国土交通省 物流・自動車局長通達「法人タクシー事業者による交通サービスを補完するための地域の自家用車・一般ドライバーを活用した有償運送の許可に関する取扱いについて」(令和6年3月29日) mlit.go.jp(PDF)
  • 国税庁 タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」(令和8年4月1日現在法令等) nta.go.jp
  • タクシー会社の公式採用ページ:日の丸交通 採用情報(よくある質問・募集要項)・夢追人採用・ライドシェアドライバー募集/日本交通 ライドシェアドライバー募集

この記事の位置づけ

本記事は公表資料に基づく一般的な情報で、個別の副業が認められるかどうかを判断するものではありません。副業の可否は各社の就業規則と個別の事情で決まります。会社の条件は閲覧日時点の公式ページの記載で、変更されることがあります。判断に迷う場合は、勤務先の人事担当や労働基準監督署の相談窓口に確認してください。