自動運転の遠隔監視オペレーター|結論
この記事の結論
レベル4の自動運転で遠隔監視をする人は、法令では道路交通法の「特定自動運行主任者」と、旅客自動車運送事業運輸規則の「特定自動運行保安員」にあたります。
特定自動運行主任者は国家資格ではありません。許可を受けた事業者が教育を行い、視力・聴力などの要件を満たす人の中から指定します。業務を他の事業者に委託し、その従業員を指定することもできます。
特定自動運行保安員は、タクシー運転者と同じく運行の前後に点呼を受ける対象で、運行管理者の管理の下で働きます。
実際の運行では、国土交通省の手引き第3版に人員配置が載っている7地域のうち、車内無人と書かれているのは福井県永平寺町と北海道上士幌町の2つで、ほかは主任者が車に乗る形などで運行しています。
「自動運転になったら、運転手の代わりに遠隔監視の仕事が生まれる」と言われます。では、その遠隔監視の仕事は法律でどう決められていて、どんな人が、どこで、何をしているのでしょうか。
この記事では、警察庁の「特定自動運行許可に係る申請書等の記載要領」(令和8年3月)、道路交通法と旅客自動車運送事業運輸規則(e-Gov法令検索)、国土交通省の「自動運転移動サービス社会実装・事業化の手引き」第3版(2026年9月)など一次情報だけを使って整理します(2026年10月17日時点)。自動運転の計画の全体像はタクシーの自動運転で仕事はなくなる?で解説しています。
「遠隔監視オペレーター」は法令のどの役割か
「遠隔監視オペレーター」は法令上の言葉ではありません。レベル4(特定自動運行)で人が担う仕事は、道路交通法と運輸規則で次のように分かれています。
| 法令上の役割 | 根拠 | どこで何をするか |
|---|---|---|
| 特定自動運行主任者 | 道路交通法 第75条の19〜第75条の23 | 遠隔監視の場所(または車内)で、遠隔監視装置の作動状態を監視する。正常に作動していなければ直ちに自動運行を終わらせる。事故のときは消防への通報、現場措置業務実施者を現場に向かわせる措置、警察官への報告 |
| 現場措置業務実施者 | 道路交通法 第75条の19第3項・第75条の23 | 事故の現場に向かい、道路での危険を防ぐ措置をとる。主任者が車に乗る運行では指定は不要 |
| 特定自動運行保安員 | 運輸規則 第15条の2 | お客様を運ぶ自動運転車の運行の安全を確保する。車に乗るか、営業所などから遠隔監視装置を使って業務をする |
手引き第3版は、これらの役割は「兼務可能」としています。実際、福井県永平寺町では「特定自動運行主任者(特定自動運行保安員と兼務)」、茨城県日立市でも「特定自動運行主任者(特定自動運行保安員を兼務)」と書かれており、1人が両方の役割を持つ運行が行われています。
特定自動運行主任者になるには|国家資格ではなく事業者の教育と指定
道路交通法第75条の19は、レベル4の許可を受けた事業者(特定自動運行実施者)に、主任者などへの教育を行うことと、要件を備える人の中から主任者を指定することを義務づけています。国が試験をして免許を出す仕組みではありません。
主任者の要件
警察庁の記載要領(令和8年3月)は、公安委員会が審査で見る主任者の要件として次の3つを挙げています。
- 「両眼の視力又は両耳の聴力を喪失した者でないこと」
- 特定自動運行計画に従って運行するための設備を適切に使えること
- 主任者の措置を円滑かつ確実に行ううえで支障がないこと(例として「特定自動運行終了後の特定自動運行用自動車を運転することが予定されている場合には、当該特定自動運行用自動車の種類及び目的に応じた運転免許を保有していること等」)
教育の中身と指定の方法
教育する事項は、業務に必要な法令、特定自動運行計画の内容、自動運行装置の仕様(主任者のみ)、監視や事故対応などの手順と設備の使い方などです。審査では「教育事項について十分な知識経験がある者が教育を行うこととしているか」「十分な時間及び頻度が確保されているか」が見られます。
指定は書面の交付や腕章の貸与などで行い、記録を残します。記載要領は指定の方法の例として、主任者になり得る人の集団をあらかじめ指定して「当番表を作成の上、輪番制」で従事させる方法と、主任者の業務を「他の事業者に委託し、当該事業者の従業員を…指定する方法」を挙げています。つまり主任者は、運行する会社の社員だけでなく、委託先の会社の従業員が務めることもあります。
遠隔監視で見ているもの|遠隔監視装置の要件と主任者の義務
遠隔監視の仕事の中身は、警察庁の記載要領が定める遠隔監視装置の要件から具体的にわかります。
- 車の周囲の全方向の道路・交通の状況と車内の状況の鮮明な映像・明瞭な音声、車の位置情報を、常時かつ即時に受信できること
- 映像と位置情報を見るディスプレイなど、音声を聞くスピーカーやイヤホンなどがあること
- 車内にいる人・車外にいる人と、無線などで通話できること
- 映像・音声・位置情報の受信や通話ができなくなったら、直ちに主任者に知らせること
主任者は、自動運行中はこの装置の作動状態を監視し続けなければならず、正常に作動していないと認めたら直ちに自動運行を終わらせる措置をとります(道路交通法第75条の21)。警察官の指示や緊急自動車の接近があったときの対応、事故のときの通報・報告も主任者の義務です。車内の人と話す、異常があれば止める、事故のときは通報する、という仕事を、離れた場所から映像と通話で行うのが遠隔監視です。
タクシー運転手の求人をチェック
求人一覧を見る特定自動運行保安員は点呼を受ける|運転者と同じ管理の中で働く
お客様を運ぶ事業(バス・タクシーなど)で自動運転車を使う場合、運輸規則は保安員を運転者に近い立場で扱っています。
| 運輸規則の条文 | 保安員に関する定め |
|---|---|
| 第15条の2 | 事業計画の遂行に十分な数の保安員を常時選任。酒気を帯びて業務に就かせない。疾病・疲労・睡眠不足などで安全に業務ができないおそれがあれば申し出る。業務を終えたら交替する保安員に車・道路・運行の状況を伝える |
| 第24条(点呼) | 点呼の対象は「運転者又は特定自動運行保安員(以下「運転者等」という。)」。保安員には、運行に必要な自動運行装置の設定の状況を確認する |
| 第37条・第38条 | 保安員でなくなったときは乗務員等台帳に年月日と理由を記載。保安員に対して安全のための指導監督を行う |
| 第48条(運行管理者の業務) | 保安員を車に乗務させ、または遠隔から業務を行わせる |
保安員も、今のタクシー乗務員と同じように点呼を受け、運行管理者の指示の下で業務に就くということです。実例として、手引き第3版に載っている茨城県日立市の運行では、道路運送法上の手続きとして「事業遂行に十分な数の特定自動運行保安員を選任し、必要な訓練を実施したうえで配置」と記録されています。
今の点呼の仕組みはタクシーの点呼とアルコールチェックのルール、点呼を行う運行管理者の資格は運行管理者(旅客)の資格の取り方で解説しています。
実際のレベル4の運行|車内に人が乗っている所が多い
国土交通省の資料(令和8年6月8日)によると、運転者を要しないレベル4のバス等は全国11箇所で実装されています(特定自動運行の許可件数は、長野県塩尻市の2回目を含めて12件)。手引き第3版に人員配置が書かれている地域を並べます。なお、各地の公安委員会の公示では、このうち上士幌町・大田区(羽田)・松山市・気仙沼市(JR気仙沼線BRT)の4件の許可が、その後「特定自動運行を行わないこととしたため」返納され失効しています(2026年10月18日確認)。
| 地域 | 人員配置(手引き第3版の記載) |
|---|---|
| 福井県永平寺町 | 車内無人、特定自動運行主任者(保安員と兼務)と現場措置業務実施者の2名体制 |
| 北海道上士幌町 | 車内無人、主任者と現場措置業務実施者兼務の1名体制 |
| 東京都大田区 | 車内に主任者を1名配置 |
| 愛媛県松山市 | 車内に主任者を1名配置 |
| 長野県塩尻市 | 車内に主任者を1名配置 |
| 茨城県日立市 | 主任者(保安員を兼務)1名体制 |
| 千葉県柏市 | 主任者(保安員を兼務)が車に乗車 |
手引きは、主任者と保安員を兼ねた乗務員が車に乗る形を「乗務員乗車型」と呼んでいます。柏市の運行について経済産業省は「運転席には、乗務員が乗車します」と発表しました(2026年1月13日)。日立市の運行事業者の茨城交通は、車内に関係者が乗らない「車内無人での路線バス営業運行を2026年度中に実施することを目指します」としています(2025年1月24日)。
「レベル4=車内が無人」とは限らず、いまは車内の乗務員が主任者・保安員を務める運行が多い、というのが公表資料から読み取れる実態です。
1人で何台を見るのか|「1対N」と配車センターの参入
遠隔監視の仕事の量を左右するのが、1人が何台を受け持つかです。永平寺町の運行について手引き第3版は「1人の遠隔監視者が3台を運行可能な」レベル4の自動運行装置の認可を日本で初めて取得したと説明しています。手引きの費用の試算(2030年ごろを想定した一例)も、遠隔監視型では「1人当り3台の監視」「監視拠点では3人で9台の監視」を前提にしています。
国もこの方向を重点にしています。金子国土交通大臣は2026年3月6日の衆議院国土交通委員会で「一人で複数車両を監視するなど先進的な取組への重点的な支援」を進めると述べました。国土交通省の資料(令和8年6月8日)は、自動運転の普及で想定される変化として「自動運転事業に対応した既存の運行管理者等の業務内容の変容(遠隔監視、配車管理業など)」を挙げています。
タクシーの配車センターが遠隔監視を始めた例
徳島の電脳交通は2026年1月8日、配車業務を行うコミュニケーションセンターの中に「自動運転 遠隔監視センター」を新設したと発表しました。同社は全国40都道府県・約150社のタクシー事業者の配車業務を受託し、センターには約120名のコミュニケーターがいます。遠隔での運行支援の役割として、車両監視、トラブル時に遠隔から車両を止めるなどの車両制御、シートベルトの着脱案内などのユーザーサポートを挙げています。
同社は、この取り組みを自動運転領域への参画の「第一弾」と位置づけ、「現在主流となっているLv2相当の自動運転支援にとどまらず、将来的に拡がっていくLv4運行を見据えた遠隔支援にも対応できるよう」段階的に広げるとしています。配車や点呼の仕事の経験が、遠隔監視の仕事につながり始めている例です。
タクシーの仕事から見た遠隔監視
ここまでの公表資料から、遠隔監視の仕事とタクシーの仕事の関係は次のように整理できます。
- 運行管理の仕組みはそのまま残る:保安員は点呼を受け、運行管理者が乗務や遠隔業務を割り当てます。タクシー会社の運行管理の仕事は、自動運転でも役割が変わりながら続きます。
- 資格よりも会社の教育と指定:主任者は国家資格ではなく、許可を受けた会社が教育して指定します。どの会社が自動運転の運行を担うかが入口になります。東京では日本交通が「現場における運行管理や営業所運営」を担うと発表しています(2026年9月15日)。
- 車内に乗る形も多い:いまのレベル4は乗務員乗車型が多く、車に乗ってお客様の安全を守る仕事は残っています。
運行管理者の待遇は運行管理者の年収(タクシー)、求人は運行管理者の求人から探せます。自動運転の車に乗る側の仕事は自動運転のセーフティドライバーとはで解説しています。
出典・一次情報
本記事の記述は、次の公表資料・法令・公式発表に基づいています(いずれも2026年10月17日閲覧)。
- 警察庁「特定自動運行に係る許可制度の創設について」 npa.go.jp(PDF)
- 警察庁交通局「特定自動運行許可に係る申請書等の記載要領」(令和8年3月) npa.go.jp(PDF)
- 道路交通法 第75条の19〜第75条の23(e-Gov法令検索) laws.e-gov.go.jp
- 旅客自動車運送事業運輸規則 第15条の2・第24条・第37条・第38条・第48条(e-Gov法令検索) laws.e-gov.go.jp
- 国土交通省「自動運転移動サービス社会実装・事業化の手引き」第3版(2026年9月) mlit.go.jp(PDF)
- 国土交通省「自動運転の普及に伴う社会変容への対応について」参考資料(令和8年6月8日、第3回 国土交通省自動運転社会実現本部) mlit.go.jp(PDF)
- 衆議院 国土交通委員会(2026年3月6日)金子国土交通大臣の発言 国会会議録検索システム
- 経済産業省「一般道における中型バスでのレベル4自動運転による運行を開始します」(2026年1月13日) meti.go.jp
- 茨城交通「国内最長距離&国内初の中型バスでのレベル4自動運転の営業運行」(2025年1月24日) ibako.co.jp
- 電脳交通「未来の地域交通を担う『自動運転 遠隔監視センター』を新設」(2026年1月8日) PR TIMES(同社発表)
- GO・Waymo・日本交通「自動運転タクシー商用化の実現に向けて合意」(2026年9月15日) 日本交通 ニュースリリース
制度と運行状況の変更について
実装箇所の数や各地の人員配置は、閲覧日時点の国土交通省資料・手引きに基づきます。運行の形は地域・時期によって変わります。最新の情報は国土交通省・警察庁と各運行事業者の発表で確認してください。



