タクシー不足の現状|結論

この記事の結論

タクシー運転者数(運転者証の交付数)は平成28年度の306,847人から令和4年度の231,938人まで約7.5万人減り、令和6年度は241,810人と約1万人回復しました(国土交通省)。コロナ前の令和元年度(282,168人)にはまだ届いていません。
人手不足を受けて、2024年に地理試験の廃止(2月)、初任研修の期間要件の撤廃(3月)、日本版ライドシェアの開始(4月)が行われ、ライドシェアは令和7年8月時点で141地域・登録ドライバー9,518人まで広がりました。
一方で運転者1人あたりの稼ぎの環境は変わっています。1日1両あたりの営業収入(日車営収)は令和6年度に38,003円とコロナ前より約21%増、令和2年度以降99の運賃ブロックで運賃が改定され、全国ハイヤー・タクシー連合会は令和7年の賃金増加の背景に「運賃の引上げやアプリ利用率の増加等を背景とした売上の増加」を挙げています。

「タクシーがつかまらない」という声が増えたのはコロナ禍のあとです。運転者が離職し、需要が戻っても供給が追いつかない状態が、大都市や観光地で目立つようになりました。

この記事では、国土交通省の資料(交通政策審議会の中間とりまとめ、物流・自動車局旅客課の説明資料、通達・事務連絡)と全国ハイヤー・タクシー連合会の公表資料から、運転者数・需要・制度改正・ライドシェア・配車アプリの数字を整理し、これからタクシー業界で働く人にとって何を意味するのかをまとめます。

タクシー運転者数の推移|令和4年度を底に回復途上

国土交通省 物流・自動車局旅客課の資料「タクシーを巡る諸情勢について」(令和7年9月12日)は、運転者証の交付数をもとにタクシー運転者数の推移を示しています。

年度タクシー運転者数前年度との差
平成28年度306,847人−
平成29年度299,039人−7,808人
平成30年度291,516人−7,523人
令和元年度282,168人−9,348人
令和2年度259,378人−22,790人
令和3年度241,727人−17,651人
令和4年度231,938人−9,789人
令和5年度234,653人+2,715人
令和6年度241,810人+7,157人

同資料は「運転者数は令和4年度末を底値とし、約1万人増加」「コロナ禍以降、運転者数は増加しつつも回復途上ではあるが、シフトの見直しや効率的な配車により実車率が高水準に改善され、需要の回復に的確に対応している」と説明しています。交通政策審議会自動車部会の中間とりまとめ(令和6年5月15日)も、令和元年度〜令和4年度の間に運転者数が約5万人(タクシー運転者の約17%)減少し、地域・時期・時間帯によっては乗り切れない乗客やターミナル駅のタクシー待ち列が発生した、と課題を整理しています。

全国ハイヤー・タクシー連合会が国土交通省の審議会に提出した資料「タクシー業界の課題と次期観光立国基本計画への要望」では、令和7年6月末のドライバー数(法人の運転者証交付数)が、コロナ禍発生直後の令和2年3月末と比べて約86%まで回復したとしています。

需要と売上|輸送人員は半減、1両あたりの収入は過去より高い

同じ国土交通省資料のタクシー事業の基礎情報(令和6年度)は次のとおりです。

指標令和6年度比較
タクシー車両数192,592台(法人167,426台、個人25,166台)事業者数30,984(法人5,818、個人25,166)
輸送人員9億3,961万人ピークの平成18年度19億4,110万人から約52%減
運送収入1兆3,259億円ピークの平成13年度1兆9,338億円から約31%減
延べ実働車両数3,489万両ピークの平成15年度6,502万両から約48%減
日車営収(1日1両あたりの営業収入)38,003円令和元年度より約21%増、対前年度同月比+1,042円

市場全体は長期的に縮んでいますが、走っている車1台あたりの売上はむしろ高くなっています。運転者が減った分だけ1台あたりの仕事が増え、運賃改定も重なった結果です。歩合給が中心のタクシー運転者にとって、日車営収の上昇は収入に直結する変化です。

国の対策|地理試験廃止・二種免許の見直し・運賃改定

中間とりまとめと国土交通省資料から、運転者を増やすために行われた主な施策を時系列で並べます。

時期施策内容(公表資料の記載)
令和2年以降運賃改定令和2年度以降に改定したブロックは99(令和7年9月11日時点)。東京23区・武蔵野市・三鷹市は2026年4月20日にも改定
令和4年5月二種免許の受験資格の見直し受験資格特例教習の修了で19歳以上・免許経歴1年以上から受験可能に
2024年2月地理試験の廃止東京・神奈川・大阪などの大都市部で、合格率が5割程度だった地理試験をタクシー業務適正化特別措置法に基づく省令改正で廃止
2024年3月初任研修の期間要件の撤廃10日間の期間要件を撤廃し、必要な科目の実施で足りることに
2024年3月特定技能への追加自動車運送業分野(バス・タクシー・トラック)を特定技能の対象に追加する閣議決定(令和6年3月29日)
2024年4月日本版ライドシェア開始タクシー事業者の管理のもとで一般ドライバーが自家用車で有償運送
令和6年度補正予算人材確保の支援タクシー事業者等が行う二種免許取得費用の負担や採用広報への補助(補助率最大1/2)

中間とりまとめは、運賃改定への迅速な対応の結果、コロナ禍後に日車営収が回復し、運転者の給与水準も「平成10年以降最高水準」になったこと、二種免許の受験資格の見直しと取得費用の支援もあって「タクシー運転者の減少傾向は令和5年に底を打ち、運転者数は令和5年3月末から令和6年4月末までの約1年間で約3,400人増加した」ことを記しています。二種免許の取り方と費用は二種免許の費用と取り方で解説しています。

外国人ドライバー(特定技能)の受け入れ条件

国土交通省資料によると、特定技能の自動車運送業分野でタクシー運転者として働くには、第二種運転免許、タクシーの技能評価試験、日本語能力試験N3が求められ、受け入れ事業者には「働きやすい職場認証制度」の認証取得などが要件になっています。日本で運転免許を取るための期間は在留資格「特定活動」(タクシー運転者は1年・更新不可)で在留が認められます。資料には、バス・タクシーの日本語要件を見直す案(特定技能1号でN4+日本語サポーターなど)も示されています。

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ライドシェアの広がり|141地域・登録ドライバー9,518人

日本版ライドシェア(自家用車活用事業)は、国土交通省の通達(令和6年3月29日)に基づき、タクシーが不足する地域・時期・時間帯に限って、タクシー事業者の管理のもとで一般ドライバーが自家用車で有償運送を行う制度です。国土交通省資料の実績(令和7年8月17日時点)は次のとおりです。

項目実績
導入地域(許可済)141地域
許可事業者数1,009者(令和6年4月は128者)
登録ドライバー数9,518人
稼働台数177,225台
運行回数958,898回
マッチング率導入前の2023年と比べ、平均約84%の時間帯で改善

2026年2月26日の国土交通省の事務連絡では、配車アプリが普及している12交通圏(札幌、仙台、埼玉県南中央、千葉、特別区・武三、京浜、名古屋、京都市域、大阪市域、神戸市域、広島、福岡)は配車アプリのデータで不足する曜日・時間帯を設定し、それ以外の地域はタクシー事業者の申し出により金曜・土曜の16時台から翌5時台などで運行を認める扱いが定められました。資料には、バス・鉄道事業者がタクシー事業の許可を取ってライドシェアに参入するトライアルも紹介されています。

規模で見ると、ライドシェアの登録ドライバー9,518人はタクシー運転者241,810人の4%程度です。不足時間帯を補う仕組みで、タクシー運転者の代わりになる規模ではありません。働き方と報酬の仕組みはライドシェアドライバーの求人と仕組みで詳しく解説しています。

配車アプリの普及と賃金の変化

国土交通省資料(全国ハイヤー・タクシー連合会調べ)は、配車アプリとキャッシュレスの普及を次のように示しています。

指標以前令和6年
配車アプリの導入事業者数令和2年 1,589者1,888者
配車アプリの配車可能車両数令和2年 90,844両98,642両
キャッシュレス決済の普及率(車両数ベース)平成30年 75.2%、令和2年 89.4%92.4%
ユニバーサルデザインタクシー(JPN TAXI など)令和元年 21,736台令和5年 39,708台

全国ハイヤー・タクシー連合会の「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」(2026年10月6日訂正版)によると、タクシー運転者の年間賃金推計額は4,508,200円で前年比8.7%増でした。同資料は、調査期間中の最低賃金引上げ率5.1%などに加えて、「令和4年以降の運賃の引上げやアプリ利用率の増加等を背景とした売上の増加に伴う賃金額の増加があったことが想定される」としています。タクシー運転者の平均年齢も56.8歳と前年から3.4歳下がりました。都道府県別の年収はタクシー運転手の年収(都道府県別)にまとめています。

採用ページでも配車アプリは前面に出ています。日の丸交通は「主要タクシー配車アプリ(Uber、GO、DiDi)、シェア乗りタクシーアプリNearMe、自社無線の5つを使える」と説明し、日本交通は無線配車が月間平均60万回以上と公表しています。「GO タクシー 求人」のようにアプリ名で仕事を探す人もいますが、アプリは配車の窓口で、ドライバーとして雇用するのは各タクシー会社です。どのアプリに対応しているかを会社選びの比較項目にしてください。

求職者にとっての意味|採用市場で起きていること

ここまでの公表データから、これからタクシー業界で働く人にとって確認できることを4つにまとめます。

  1. 入口のハードルは下がった:地理試験の廃止、19歳・免許1年からの二種免許受験(特例教習)、教習時限の短縮に加え、大手各社が二種免許の費用を負担しています。
  2. 未経験者向けの保証が手厚い:東京の大手5社はいずれも未経験者の給与保証を公式募集要項に明記しています(期間は5〜12か月)。詳細は大手タクシー会社の採用条件の比較で並べています。
  3. 1台あたりの売上環境は良い:日車営収はコロナ前より約21%高く、運賃改定も進んでいます。ただし歩合給中心で個人差が大きい点は変わりません。
  4. ライドシェアは補完の位置づけ:登録ドライバーはタクシー運転者の4%程度で、運行できる時間帯も限られます。本業として稼ぐならタクシー、短時間の副業ならライドシェア、と性質が違います。

人手不足は求職者に有利に働く一方で、会社ごとの条件差も大きくなっています。会社の選び方はタクシー会社の選び方で、公的な評価・認証と募集要項のチェック項目を整理しています。

タクシードライバーの求人はタクシードライバー求人、ライドシェアはライドシェアドライバー求人にまとめています。未経験から始める人は未経験歓迎の求人、二種免許の養成制度ありの求人、給与保証ありの求人、地域から探す人は地域別の求人が入口です。応募の準備は無料登録から進められます。

出典・一次情報

本記事の数字と記述は、次の公表資料に基づいています(いずれも2026年10月13日閲覧)。

  • 国土交通省 物流・自動車局旅客課「タクシーを巡る諸情勢について」(令和7年9月12日、全国ハイヤー・タクシー連合会 労務委員会説明資料):タクシー事業の基礎情報、運転者数・輸送人員の推移、運賃改定の状況、配車アプリ・キャッシュレス、日本版ライドシェアの実績、特定技能 taxi-japan.or.jp(PDF)
  • 国土交通省 交通政策審議会陸上交通分科会自動車部会「中間とりまとめ」(令和6年5月15日) mlit.go.jp(PDF)
  • 全国ハイヤー・タクシー連合会「タクシー業界の課題と次期観光立国基本計画への要望」(国土交通省 審議会資料14) mlit.go.jp(PDF)
  • 全国ハイヤー・タクシー連合会「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」(2026年10月6日訂正版) taxi-japan.or.jp(PDF)
  • 国土交通省 物流・自動車局長通達「法人タクシー事業者による交通サービスを補完するための地域の自家用車・一般ドライバーを活用した有償運送の許可に関する取扱いについて」(令和6年3月29日) mlit.go.jp(PDF)/事務連絡「自家用車活用事業における曜日・時間帯及び不足車両数の設定等について」(令和8年2月26日) mlit.go.jp(PDF)
  • 東京タクシーセンター掲載「タクシー運賃の改定について(東京都23区・武蔵野市・三鷹市)」 tokyo-tc.or.jp(PDF)
  • 日の丸交通 採用情報/日本交通 タクシー乗務員採用

数字の読み方

運転者数は運転者証の交付数による国土交通省の集計で、年度の区切りは資料の表記に従っています。ライドシェアの実績は令和7年8月17日時点で、その後も変わっています。