自動運転とタクシー会社に残る仕事|結論
この記事の結論
国土交通省は2026年6月8日の資料で、自動運転の普及により運行管理者等の業務が「遠隔監視、配車管理業など」に変わると整理しています。
同じ資料は「福祉や介護などの場面での有人運送は高付加価値化」とも書いています。一方で「1:Nの運行管理による人件費の削減」も挙げており、人の数がいまと同じになるとは書いていません。
法律の面では、自動運転車で旅客を運ぶ会社にも特定自動運行保安員の選任、保安員への点呼、運行管理者による管理が義務づけられています(旅客自動車運送事業運輸規則)。Uberは「ロボタクシーの運行は旅客運送サービスの認可を受けたタクシー事業者が行う必要があります」と説明しています。
実際の計画でも、日本交通は「現場における運行管理や営業所運営」を、日の丸交通は運行管理・デポでのオペレーション・メンテナンス・点検・清掃・充電などを担うと発表されています。
「自動運転になったらタクシー会社はいらなくなるのでは」と考える人もいるかもしれません。この記事では、国土交通省の資料、e-Gov法令検索の条文、警察庁の資料、各社の公式発表という一次情報だけを使い、自動運転が広がってもタクシー会社に残ると公表されている仕事を整理します。仕事の量がどれだけ変わるかの予測は公表されていないため、断定はしません。
自動運転と運転手の仕事の全体像はタクシーの自動運転で仕事はなくなる?で解説しています。
国交省の資料に書かれていること|「仕事内容の変化」と「人件費の削減」
2026年6月8日の第3回 国土交通省自動運転社会実現本部に出された「資料1」と「参考資料」には、自動運転の普及で想定される社会の変化が並んでいます。タクシーの仕事に関わる部分を原文のまま表にします。
| 項目 | 原文 | 資料 |
|---|---|---|
| 新しい仕事 | 「遠隔監視や配車管理業などの新しい自動運転関連産業の創出」 | 参考資料(自動車・交通産業の構造転換) |
| 運行管理の仕事の変化 | 「自動運転事業に対応した既存の運行管理者等の業務内容の変容(遠隔監視、配車管理業など)」 | 参考資料(運転手の労働力供給の転移・仕事内容の変化) |
| 有人運送の価値 | 「自動運転車両の普及が進む中でも、福祉や介護などの場面での有人運送は高付加価値化」 | 参考資料(同上) |
| 人件費 | 「1:Nの運行管理による人件費の削減や運賃の低廉化等により、公共交通事業の収益構造が大幅に改善」 | 参考資料(快適で移動しやすい地域の実現) |
| 運転者不足 | 「バス、タクシー、公共ライドシェアへの自動運転化により、運転者不足の解消と十分な輸送力の供給が可能となり」 | 参考資料(同上) |
| 交通の役割分担 | 「幹線はバス・定期路線、支線はタクシー・オンデマンドが主流に」 | 資料1(今後の主な課題・方向性) |
| 今後の課題 | 「公共交通事業者と自動車メーカー等の役割分担(バス・タクシー事業者が主体となった自動運転旅客サービスのあり方など)」 | 資料1(同上) |
国の資料は、仕事内容が変わる面(遠隔監視・配車管理)、人の運転が価値を持つ面(福祉・介護)、人件費が減る面(1:Nの運行管理)を同時に書いています。どの面がどれだけの規模で起きるかの数字は示されていません。ここで言う「1:N」は、1人が複数の車両を管理・監視する形のことです。
法律上タクシー会社に残る仕事|保安員・点呼・運行管理者
自動運転車で旅客を運ぶ場合も、旅客自動車運送事業運輸規則(e-Gov法令検索で現行条文を確認)の義務はタクシー会社などの事業者にかかります。自動運転に関係する条文を並べます。
| 条文 | 定められていること(要点) |
|---|---|
| 第15条の2 第1項 | 事業計画の遂行に「十分な数の特定自動運行保安員」を常時選任しておかなければならない |
| 第15条の2 第2項 | 保安員を車に乗務させるか、緊急時に旅客が保安員に連絡できる装置と車を止める装置を備えたうえで、営業所などに保安員を配置し、遠隔監視装置などを使って遠隔から安全確保の業務を行わせる |
| 第15条の2 第8項 | 保安員に、酒気を帯びた状態のときや、疾病・疲労・睡眠不足などで安全に業務ができないおそれがあるときに申し出ることなどを守らせる |
| 第24条 | 点呼の対象は「運転者又は特定自動運行保安員(以下「運転者等」という。)」。保安員には自動運行装置の設定の状況の確認を行う |
| 第48条 | 運行管理者の業務に「特定自動運行保安員を乗務させ、又は遠隔からその業務を行わせること」を含む。保安員への点呼も運行管理者の業務 |
運転する人がいなくなっても、保安員を選び、点呼をして、運行管理者が管理する、という営業所の仕事の骨組みは条文に残っています。いまのタクシーの点呼の仕組みはタクシーの点呼とアルコールチェック、運行管理者になる方法は運行管理者(旅客)の資格、運行管理者の給与は運行管理者の年収で解説しています。
道路交通法の特定自動運行主任者・現場措置業務実施者
道路交通法の側では、レベル4の許可を受けた者に、遠隔監視を行う特定自動運行主任者の配置(主任者が乗車している場合を除く)と、主任者などへの教育が求められています(警察庁「特定自動運行に係る許可制度の創設について」)。事故のときなどに現場へ向かうのが現場措置業務実施者です。
警察庁の「特定自動運行許可に係る申請書等の記載要領」(令和8年3月)は、主任者の要件として「両眼の視力又は両耳の聴力を喪失した者でないこと」などを挙げ、教育は許可を受けた事業者が行うものとしています。指定の方法の例として「当番表を作成の上、輪番制」や、業務を他の事業者に委託してその従業員を指定する方法も書かれています。主任者になるための国の講習や資格試験は、記載要領には定められていません。主任者・保安員の要件、遠隔監視装置で見ているもの、1人で何台を受け持つかは遠隔監視オペレーターと特定自動運行主任者・保安員で詳しく解説しています。
国土交通省の手引き第3版(2026年9月)は、乗務員乗車型について「特定自動運行主任者と特定自動運行保安員を兼ねた乗務員が乗車する場合も存在」と説明し、「特定自動(レベル4)運行中は二種免許は不要であるが、運行形態によっては二種免許を保有した者が乗車することもある」としています(二種免許との関係は自動運転タクシーに二種免許はいるのかで整理しています)。各地の配置の実例はレベル4の自動運転はどこで走っている?にまとめています。
タクシー運転手の求人をチェック
求人一覧を見る各社の発表に見るタクシー会社の分担
自動運転タクシーの計画では、アプリの会社、自動運転技術の会社、タクシー会社が役割を分けています。タクシー会社と周辺の会社が担うと公表されている仕事を表にします。
| 会社(計画) | 担う仕事(公表内容) | 出典の日付 |
|---|---|---|
| 日本交通(GO・Waymoとの東京の計画) | 「現場における運行管理や営業所運営」。試験の段階ではWaymo車両の運転と維持管理、現在は乗務員が同乗した自動走行試験 | 2025年4月14日、2026年9月15日 |
| 日の丸交通(Uber・Wayve・日産との東京の試験運行) | 運行主体として「車両の運行管理、車両基地(デポ)でのオペレーション、車両のメンテナンス、点検、清掃、充電、および車両の稼働状況の管理」。初期段階は乗務員がセーフティドライバーとして同乗 | 2026年8月13日 |
| 未来都・堺相互タクシー(堺市のコンソーシアム) | 「タクシー事業(運行主体)」 | 2026年8月5日 |
| KDDIスマートモビリティ(同上) | 「自動運転タクシーの走行・運行・遠隔監視の支援」 | 2026年8月5日 |
| 国際自動車(日産の横浜の実証 第2期) | 「交通事業者視点での運行・運用体制構築の支援」 | 2026年9月14日 |
| プレミア・エイド(同上) | 「監視システムを使用した乗客サポート業務」 | 2026年9月14日 |
どの計画でも、運行の主体や現場の管理はタクシー会社が担う形になっています。東京の計画の詳しい時系列は東京・大阪のロボタクシー計画まとめで表にしています。
配車センターが遠隔監視を始めた例|電脳交通(徳島)
国土交通省の資料が挙げる「配車管理業」から自動運転に入った例もあります。タクシーの配車業務を受託する電脳交通(徳島市)は、2026年1月8日にコミュニケーションセンター内に「自動運転 遠隔監視センター」を設けたと発表しました。「有人タクシーの配車オペレーションやノウハウを活かし、自動運転タクシーに特化した遠隔監視および運行支援を行います」としています。
同社は遠隔での運行支援の中身を、車両監視(安全に走っている状態を継続して把握し、異常を早く察知する)、車両制御(トラブルのときに遠隔から車両を止めるなど)、ユーザーサポート(シートベルトの着脱案内やトラブル時の案内)の3つに分けて説明しています。センターには約120名のコミュニケーターがいて、全国40都道府県・約150社のタクシー事業者の配車業務を受託しているとしています。第一弾として、徳島県・NEC・電脳交通による自動運転タクシーの実証運行(2025年度 国土交通省事業の採択案件)に参画する予定としています。配車の仕組みはタクシー配車アプリの仕組みで解説しています。
自動運転の会社が東京・大阪で出している現場の求人
タクシー会社の外でも、自動運転の車両を現場で動かすための仕事が公式に募集されています。2026年10月17日に各社の採用ページで掲載を確認したものです。
| 会社・職種 | 仕事内容(要点) | 給与 | 勤務地 |
|---|---|---|---|
| Waymo「Japan Vehicle Recovery, Safety, & Logistics」 | 路上での車両回収(牽引・ロードサービス)の運用の仕組みづくり、回収パートナーの管理、警察・消防などとの連携手順の標準化、デポとの連携 | 公表なし | 東京 |
| Wayve「Fleet Serving & Maintenance Technician」 | 自動運転車両の定期整備、故障の診断と修理、ドライバーや監視システムからの報告への対応。24時間体制を支えるシフト勤務 | 公表なし | 東京 |
| newmo「Field Integration Engineer(実車運用/大阪)」 | 開発車両のフリート管理、セーフティドライバーとの出走前後の打ち合わせと日々の報告の確認、車載機器の操作 | 年収500万〜700万円 | 大阪市城東区 |
いずれも自動運転の会社自身の募集で、多くは車両の管理・整備・安全対応の経験が求められる専門職です。Waymoの車両回収の職は、大規模な商用車フリートの運用などの経験7年以上を条件にしています。タクシー会社の営業所で行う運行管理・車両管理の経験と重なる部分がある仕事です。車に乗って試験走行やデータ収集をするテストドライバーの公式求人はテストドライバー・自動運転開発ドライバーの求人にまとめています。
有人運送の価値|国交省が挙げる福祉・介護の場面
国土交通省の参考資料は「自動運転車両の普及が進む中でも、福祉や介護などの場面での有人運送は高付加価値化」と書いています。車いすの乗り降りの手伝い、通院の付き添い、体の不自由な人への声かけなどは、車が自動で走るだけでは済まない仕事です。
タクシー業界にはすでに、介護タクシーや福祉タクシーのように、乗り降りの介助などを伴う運送があります。仕事の中身と必要な資格は次の記事で解説しています。
観光地で道案内や観光の説明をする観光タクシーも、人が乗ることで成り立つ仕事の一つです(観光タクシー・インバウンド対応の仕事)。介護タクシーの求人は介護タクシードライバー求人から探せます。
いまタクシー乗務員として働くことと自動運転
公表資料から確かめられるのは、次の3点です。
- 運行の主体はタクシー会社:ロボタクシーでも、旅客運送の認可を受けたタクシー事業者が運行し、保安員の選任・点呼・運行管理の義務を負います。
- 試験の段階で乗っているのはタクシー会社の乗務員:東京では日本交通の乗務員がWaymo車両に同乗し、日の丸交通の乗務員もセーフティドライバーとして同乗する計画です(仕事の中身は自動運転のセーフティドライバーとは)。
- 人が乗る運送の価値が挙げられている:国土交通省は福祉・介護の場面の有人運送を「高付加価値化」としています。
一方で、国の資料は「人件費の削減」も挙げており、どの仕事がどれだけ残るかの数字は公表されていません。いま確実に比べられるのは、各社の現在の募集条件(給与の形・給与保証・勤務形態・研修)です。運行管理の仕事に進む道もあり、運行管理者の求人から探せます。
乗務員の求人はタクシードライバー求人、二種免許の取得を会社が支える養成制度のある求人から探せます。自動運転の計画に参加している会社の条件は日本交通、日の丸交通、国際自動車の会社ページにまとめています。国・業界・各社の発言を原文で読みたい人は自動運転とタクシー運転手の仕事について、国・業界・各社は何と言っているかをご覧ください。
出典・一次情報
本記事の記述は、次の公表資料・法令・公式発表に基づいています(いずれも2026年10月17日閲覧)。
- 国土交通省「資料1 自動運転の普及に伴う社会変容と今後の課題・方向性について」(令和8年6月8日) mlit.go.jp(PDF)/「参考資料 自動運転の普及に伴う社会変容への対応について」 mlit.go.jp(PDF)/第3回 国土交通省自動運転社会実現本部 mlit.go.jp
- 旅客自動車運送事業運輸規則(昭和31年運輸省令第44号)第15条の2・第24条・第48条(e-Gov法令検索) laws.e-gov.go.jp
- 警察庁「特定自動運行に係る許可制度の創設について」 npa.go.jp(PDF)/「特定自動運行許可に係る申請書等の記載要領」(令和8年3月) npa.go.jp(PDF)
- 国土交通省「自動運転移動サービス社会実装・事業化の手引き」第3版(2026年9月) mlit.go.jp(PDF)
- GO・Waymo・日本交通「今週より東京都心7区でWaymo車両の走行を開始」(2025年4月14日) 日本交通/「自動運転タクシー商用化の実現に向けて合意」(2026年9月15日) 日本交通
- Uber「Uber、ロボタクシー試験運行の運行パートナーとして、日の丸交通と合意」(2026年8月13日) Uber ニュースルーム
- newmo「堺市自動運転タクシー実装コンソーシアム」設立(2026年8月5日) PR TIMES
- 日産自動車「2026年度の横浜市における自動運転モビリティサービス実証実験の詳細を発表」(2026年9月14日) 日産ニュースルーム
- 電脳交通「自動運転 遠隔監視センター」設立(2026年1月8日) PR TIMES
- Waymo 採用ページ「Japan Vehicle Recovery, Safety, & Logistics」 careers.withwaymo.com/Wayve 採用ページ「Fleet Serving & Maintenance Technician」 jobs.ashbyhq.com/newmo 採用ページ「Field Integration Engineer(実車運用 / 大阪)」 herp.careers
求人と計画の変更について
求人の内容は閲覧日時点の各社の採用ページの記載で、募集は終了・変更されることがあります。自動運転の計画も、許認可や安全性の確認の状況によって変わることがあります。



